CEOメッセージ・
前中期経営戦略の
振り返り・
新中期経営戦略
CEOメッセージ
当社は発足以来、豊かなコミュニケーション社会の発展に貢献することを企業理念として掲げてまいりました。当社の事業は極めて公共性が高く、お客さまの生活そのものに直結しています。
22.3期を振り返ると、新型コロナウイルス感染症の流行により、あらゆる領域で急速なデジタルシフトが進み、通信の果たす役割もますます重要になっています。
政府においても、デジタル実装を通じた地域活性化を推進する「デジタル田園都市国家構想」が掲げられ、人々の暮らしやビジネスのデジタル化が加速しています。当社は生活者の新たなライフスタイルをサポートし、経済発展と社会課題の解決を両立するレジリエントな未来社会の創造に向けた取り組みを推進します。
このような事業環境の変化に対応しながらありたい未来社会を実現するため、「KDDI VISION
2030:『つなぐチカラ』を進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる。」を新たに掲げ、長期的な視点で社会課題とKDDIグループの経営の重要度を総合的に網羅した6つの新重要課題(マテリアリティ)を策定しました。
これを踏まえ、新中期経営戦略(23.3-25.3期)は、パートナーの皆さまとともに社会の持続的成長と企業価値の向上を目指す「サステナビリティ経営」を根幹とし、「事業戦略」と「経営基盤強化」を推進します。
事業戦略については、既存事業の深化とそれと関連した事業でのシナジーを最大限発揮することによる新たな成長をより明確にするため、「サテライトグロース戦略」と位置付けました。5Gの特性を活かすことにより「つなぐチカラ」を進化させ、あらゆるシーンに通信が「溶け込む」ことで、新たな価値が生まれる時代を目指します。中期を通じ、5Gによる通信事業の進化と通信を核とした注力領域の拡大、さらにそれを支える経営基盤を強化していきます。
ここでは、22.3期および前中期経営戦略を振り返るとともに、今般策定した中期経営戦略についてご説明します。
KDDI 株式会社 代表取締役社長
前中期経営戦略(20.3-22.3期)
の振り返り
前中期経営戦略を終えて
20.3期から22.3期の前中期を通じ、持続的な利益成長と株主還元強化を両立してまいりました。
成長領域であるライフデザイン領域とビジネスセグメントの売上高・営業利益は堅調に拡大し、目標としていた事業規模の水準を概ね達成することができました。また、配当性向は40%超を実現し、EPSはCAGRプラス5%の伸びとなりました。
通信とライフデザインの融合を掲げ、事業戦略を推進した結果、通信業界の競争環境が大きく変化する中、持続的成長を実現できたことは大きな成果となりました。
22.3期 | CAGR 19.3期-22.3期 | (参考)19.3期-22.3期 関連目標 | |
---|---|---|---|
売上高 | 54,467億円 | + 2.3% | コスト削減等 3年累計 1,000億円規模 |
営業利益 | 10,606億円 | + 1.5% | |
ライフデザイン領域 売上高 | 14,220億円 | + 14.6% | 22.3期1.44兆円※ |
ビジネスセグメント 売上高 | 10,426億円 | + 5.6% | 22.3期1兆円 |
配当性向 | 41.7% | ― | 40%超 |
EPS | 300.03円 | +5.0% | 19.3期→25.3期1.5倍 |
- ※中期目標1.5兆円に対し、エネルギー事業における会計処理の変更による影響約600億円を考慮
マルチブランド戦略と5Gの展開
新規通信事業者の参入や競争の促進によって、サービス・料金プランが多様化し通信業界も大きく変化しました。
当社は、そのような環境下において、安心の使い放題「au」、シンプル・お手頃価格の「UQ
mobile」、トッピングで自由に選べる「povo」のマルチブランド戦略を通じて、多様なニーズや生活スタイルに寄り添った料金のご提供に努めた結果、マルチブランドID数は年度を通じて純増となり、モメンタム強化に成功しました。
5Gについては、「ずっと、もっと、つなぐぞ。au」をスローガンに、鉄道や商業施設などをはじめ、お客さまの生活動線に徹底的にこだわって安心・信頼のネットワークを構築しています。また、5G端末累計販売台数は800万台超と順調に増加しており、多くのお客さまに5Gを体験いただけるよう取り組みを推進しております。
3Gサービス終了
22.3期におけるトピックとして、当社は2022年3月末に3Gを停波しました。約20年間にわたり、多くのサービスをご利用いただき、誠にありがとうございました。
厳しい環境下において、大きなトラブルなく終了できたことは次につながる成果です。また、3Gは消費電力が嵩むシステムでもあり、環境への取り組みとしても成果となりました。
2002 | 第3世代携帯電話サービス開始 |
---|---|
2003 | 「CDMA 1X WIN」開始 業界初のパケット定額制導入 |
2005 | ワンセグ対応ケータイ「W33SA」発売 |
2006 | 総合音楽サービス「LISMO」開始 「EZweb」にGoogle検索エンジン導入 |
2011 | KDDI初となる「iPhone」を発売 |
成長領域の取り組み(ライフデザイン領域・ビジネスセグメント)
ライフデザイン領域、ビジネスセグメントともに営業利益2桁成長を実現しました。
■ライフデザイン領域
「通信とライフデザインの融合」をテーマに、ライフデザインサービスの拡充を図ってまいりました。お客さま接点として重要なスマホ決済サービスのau PAY、金融サービスを支えるau PAYカードや住宅ローンに加え、エネルギー事業のauでんきなど、主要サービスが大きく伸長しました。
主要指標 | au PAY会員数 +au PAYカード会員数 3,700万(CAGR13.4%) |
うち、au PAYカード会員数 760万(CAGR20.0%) |
auでんき等契約数 338万(CAGR約20.0%) |
決済・金融取扱高 11.7兆円(19.3期末比2.6倍) |
---|
■ビジネスセグメント
企業のDXがビジネスの在り方やお客さまとの関係性において大きな変化をもたらしている中、当社の強みである通信とIoTを軸に、お客さまのDXを加速していきます。
DXを推進するNEXTコア事業のビジネスセグメント売上高に占める比率は3割を超え、IoT累計回線数についてもトップランナーとして確固たる成長となりました。
主要指標 | NEXTコア事業 ビジネスセグメント売上高に占める比率 22.3期 31.9% |
IoT累計回線数※ 22.3期 2,450万回線 (19.3期末比3.1倍) ※KDDI単体ベース |
---|
新中期経営戦略(23.3-25.3期)
KDDI VISION 2030
当社はありたい未来社会を実現するため、「KDDI VISION
2030:『つなぐチカラ』を進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる。」を新たに掲げました。
環境変化に強いレジリエントな社会基盤の構築に貢献するため、テクノロジーを活用しながらパートナーの皆さまとともに事業を通じて、「命をつなぐ」「暮らしをつなぐ」「心をつなぐ」という想いを込めた「KDDI
Sustainable
Action」をさらに進化させます。
2030年には、あらゆる産業や生活シーンで付加価値を提供できる存在、「社会を支えるプラットフォーマー」を目指します。これまでは、「通信とライフデザインの融合」により、スマートフォンを中心に非通信分野の成長領域を拡大してきました。新中期では、2030年を見据え「5Gを中核に据えた事業変革」を推進していきます。
サステナビリティ経営と中期目標
■中期経営戦略
新重要課題(マテリアリティ)を定め、中期経営戦略を推進
■サステナビリティ経営
長期的な視点で、長期投資家等マルチステークホルダーの関心事項と当社の長期ビジョンおよび企業インパクトを軸に「新重要課題(マテリアリティ)」を策定しました。
これを踏まえ、サステナビリティ経営を根幹に置き、事業戦略とそれを支える経営基盤の強化を推進していきます。
これにより、パートナーの皆さまとともに、社会の持続的成長と企業価値の向上を目指します。社会の成長が次の事業戦略に活かされ、そして再び社会に還元される好循環を目指します。
事業戦略/サテライトグロース戦略
事業戦略では、SA
(スタンドアローン)によって本格化する5Gを核とした注力領域の事業成長を「サテライトグロース戦略」と位置付けました。
センターの5G通信について、スマートフォン通信料金の値下げ影響により減少しているマルチブランド通信ARPU収入を25.3期に22.3期比増にするため、5Gのネットワーク構築および端末の浸透を進めてまいります。
また、前中期で成長を確信した5つの注力領域として[1]
DX、[2]金融、[3]エネルギー、[4]LX、[5]地域共創
(CATV等)を定義し、通信を核としてシナジーを発揮することで、成長を加速します。特にDXでは、通信をIoTという形であらゆるものに溶け込ませ、お客さまが意識することなく5Gを活用できる環境を整備します。
そのために、さまざまな業界毎の個別ニーズに応じたビジネスプラットフォームを提供し、お客さまのビジネス創造をサポートします。新たに生まれた付加価値によって、人々の暮らしがトランスフォームされていく、当社はこうしたDXの好循環を目指しています。
中期期間において、DXのビジネスセグメントは連結営業利益の約2割となり、国内通信に次ぐ第2の事業となることを目指します。金融とエネルギー事業は事業成長を加速させます。LXは未来を見据えた生活体験を変革し、地域共創では地域と連携して社会課題の解決を目指します。これらの事業成長により、注力領域の売上高を連結の50%超まで引き上げます。
■サステナビリティ経営
■注力領域の取り組みサマリー
経営基盤強化の取り組み
サステナビリティ経営を支える経営基盤の強化として、社会的な重要課題であるカーボンニュートラルの実現、人財ファースト企業への変革、人権尊重や、グループガバナンス等への取り組みも推進してまいります。
まず、地球規模で大きな課題となっているカーボンニュートラルについても積極的に取り組みます。KDDI単体で2030年度、グループ全体では2050年度のCO2排出量実質ゼロの実現を目指し、携帯電話基地局・通信設備などでの省電力化や再生可能エネルギーへのシフトを強力に推進していきます。
また、変化の激しい事業環境の中で持続的に成長し続けていくためには、イノベーションの推進、社員や組織の高度な自律性と成長を促す「人財ファースト企業」への変革が不可欠です。イノベーションの推進においては、5GおよびBeyond
5Gの研究開発および設備投資を強化します。また、サテライトグロース戦略に基づく事業創造・研究開発・AI・先進セキュリティ技術への取り組みを加速し、スタートアップとのコラボレーションなどパートナーシップをより深化させていきます。
サテライトグロース戦略と経営基盤強化(非財務):経営基盤強化
中期経営戦略サマリー
「サステナビリティ経営」を根幹とし、サテライトグロース戦略の推進と、それを支える経営基盤の強化により、パートナーの皆さまとともに社会の持続的成長と企業価値の向上を目指していきます。
事業成長について、5G推進によるARPU収入増、注力領域の利益成長1,000億円以上、コスト効率化1,000億円規模を目指します。
財務方針は、5G・注力領域への設備投資と戦略的事業投資を優先、配当性向40%超、機動的な自己株式取得、EPS成長は引続き19.3期対比1.5倍を目指していきます。
不安定な世界情勢をはじめ、事業を取巻く環境が激しく変化する中、事業変革に取り組んでまいります。
サステナビリティ | サテライトグロース戦略の推進と、それを支える経営基盤の強化により、パートナーの皆さまとともに社会の持続的成長と企業価値の向上を目指す | |
---|---|---|
事業成長 | 5G推進によるARPU収入増(22.3期 対 25.3期) | |
注力領域の利益成長 | 1,000億円以上 | |
コスト効率化 | 1,000億円規模 | |
財務方針 | ・5G・注力領域への設備投資と戦略的事業投資を優先 ・配当性向40%超 ・機動的な自己株式取得 |
|
EPS成長 | 引き続き19.3期対比1.5倍を目指す |
2022年7月2日に発生した通信障害について
2022年7月2日から長時間にわたり当社の通信サービスをご利用の全国のお客さまに、多大なご不便とご迷惑をお掛けしました。
社会インフラを支え、安定したサービスを提供しなければならない通信事業者として、今回このような事象を発生させたことを重く受け止めております。
今後、全社を挙げて再発防止を徹底するとともに、5G・Beyond
5G時代において、さらに増加するデータ通信量への対応を行い、お客さまに安心してご利用いただける通信ネットワークを提供してまいります。KDDIはグループ・全社一丸となって豊かなコミュニケーション社会の発展に貢献してまいります。
今後とも、KDDIグループへの変わらぬご支援とご指導を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。