サステナビリティ
統合レポート2022

マテリアリティ 2

安心安全で
豊かな社会の実現

提供価値(4)
グローバルでの地域・
経済格差の解消

通信事業を通じて、新興国の社会課題解決と経済発展に貢献していく

執行役員常務
グローバルコンシューマ事業本部長
曽雌 博之

新興国の安全で豊かな社会の実現のために、地域・経済格差を解消していく

先進国と新興国の間のみならず、新興国の中でも格差が存在します。KDDIは、通信サービスという社会インフラや通信周辺サービスの整備・拡充を通じて、新興国における地域・経済格差の解消に貢献できると信じています。モンゴルやミャンマーでの長年の取り組みにより、ウランバートルやヤンゴンといった都市圏における4Gサービスは、東京と遜色のない、アジアトップクラスの高品質な通信環境を実現しています。モンゴル事業の開始は1996年。当時の携帯普及率はわずか0.4%でしたが、現在は138%にまで拡大しています。ミャンマーは2014年より、住友商事と共同出資するKDDI Summit Global Myanmar Co. Ltd.を通じて、通信ライセンスを有しているミャンマー国営郵便・電気通信事業体(Myanma Posts& Telecommunications)に対するサポートを開始し、2013年には13%であった携帯普及率が2021年は126%まで伸長し、全ての国民が携帯電話を利用できる環境になりました。

新興国での現地雇用を創出し、事業立ち上げから現地に根差した取り組みを継続

長期にわたり、現地に根差した事業を展開・発展させてきた経験・実績そのものがKDDIの強みです。多額の設備投資やランニングコストを必要とする事業ですが、現地のお客さまが無理なく利用できる価格設定でサービスを提供し、事業収益を設備投資に回し、さらに質の高いサービスにつなげていく循環をモンゴルとミャンマーで確立してきました。また、現地の方々と現場で一緒に取り組むことで、現地視点で自律的に事業運営できるように注力しています。モンゴルでは1,700名超、ミャンマーでは、1,300名超の従業員のほとんどが現地雇用です。高い能力を持つ現地スタッフとともに、生活に欠かせない通信インフラの維持に努めています。

さらなる取り組みで、経済発展・国民生活の質の向上に貢献していく

携帯電話の普及により、モンゴルやミャンマーの経済発展、国民生活の質の向上に貢献できたと考えていますが、教育格差や水問題など新興国ならではの課題はまだ山積しています。モンゴルでは、13歳以下向けのリーズナブルな通信サービス「Stars」の提供に加えて、国際NGOであるWorld Vision Mongoliaや教育科学省、ユニセフとともに、コロナ禍の学習を支援する「Smart Education」プロジェクトに取り組み、インターネット環境やスマートフォンがないなどを理由に、教育サービスを受けられず学習が遅れる可能性がある子どもたちに平等な教育機会を提供しています。

また、モンゴル政府が掲げるITデジタル分野の産業振興において、若年層の育成面で貢献すべく、KDDIのリサイクルPCをモンゴル国内各地域の公立学校や行政施設に提供する活動を継続しています。
ミャンマーでは、水問題の解決に向けて、生活用水へのアクセスが困難な村に井戸の整備を行う「Clean and Sustainable Water Program」などにも取り組んでまいりました。
これからも、新興国において現地主導でのさまざまな取り組みを通じて、社会・環境への貢献と事業伸長の好循環を創出していきたいと考えています。


提供価値 (4)

グローバルでの地域・経済格差の解消

[ サステナビリティ中期目標(23.3期-25.3期) ]

ミャンマーにおけるグローバル事業の拡大
従業員の安全確保と、新興国の国民の人権を尊重し、国民の生活に不可欠な社会インフラの維持に取り組む
モンゴルにおける通信を活用した教育や次世代の育成
次世代を担う13歳以下向け通信サービス「Stars」
加入者数(累計)18万人

[ 具体的な取り組み ]

  • 誰もが利用できる高品質な通信環境の提供
  • 新興国の経済発展を担う次世代デジタル人材の育成
  • 外部パートナーとの協働による、教育格差などの社会課題の解決

[ 強み ]

  • 現地に根差した通信事業を展開・発展させてきた経験・実績
  • 高い能力を有する現地雇用スタッフ
  • 通信と周辺サービスの拡大による課題解決ノウハウ

[ リスク ]

  • 新興国の社会情勢の不安定化
  • 自立的・持続的な経済発展の実現

[ 機会 ]

  • デジタルサービスのさらなる普及
  • 通信・IT技術(5G、IoT、xR、AI等)の発展

[ 社会課題 ]

先進国と新興国間、または新興国内における地域・経済格差


モンゴルにおける事業展開

モンゴルの人口は約300万人、国土は日本の約4倍。この広大な国に通信サービスを提供するべく、1996年に同国の現地法人であるモビコムを立ち上げて通信事業を開始し、以来26年間、同国最大の総合通信事業者として通信・IT業界を牽引してきました。
同国初のモバイル通信サービスを提供開始以降、2009年に3Gサービス、2016年に4G LTEサービスを導入し、4Gの無線基地局は、2016年時点の60局から、2020年は1,000局まで拡大し、モビコムのシェアは国内No.1を堅持しています。また、2018年に同国初となるE-moneyライセンスを取得し、モバイル電子マネー「monpayアプリ」により、決済やローンサービス等を提供しています。
KDDIの人財交流プログラムにおいて、モビコムの社員は、無線通信技術やITセキュリティに関する業務等に従事しており、モンゴルに帰国後、日本で身につけたスキルを活かし、質の高い通信サービスの提供に貢献しています。
今後も、同国の通信インフラの発展に寄与し続けるとともに、モンゴル国民の皆さまの生活基盤の発展・向上を支え続けていきます。

モビコムショップの体験ブース

モンゴルでコロナ禍の学習を支援する「Smart Education」プロジェクト

KDDIの連結子会社であるMobiCom Corporation LLC(モビコム)は、CSR活動の一環として、子どもの支援活動を行う国際NGOであるWorld Vision Mongoliaや教育科学省、ユニセフと連携し、「Smart Education」プロジェクトをモンゴル全国で実施しています。モンゴルでは新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、6割以上の授業がオンラインとなりましたが、18万人の子どもたちがスマートフォン等のデバイスを所有できないことから、オンライン授業を受けられず学習が遅れる可能性がありました。このため、子どもたちに平等な教育機会を提供することを目的に「Smart Education」プロジェクトを開始しました。2021年はモンゴル全国の8~13歳の生徒1,320人にスマートフォンや3GBのデータ利用が可能な通信パッケージを贈呈しました。2022年は、さらに2,000人の子どもたちがプロジェクトに参加しました。

プロジェクトに参加した子どもたち

13歳以下向け通信サービス「Stars」

「Stars」は、13歳以下を対象としたモビコムの通信サービスです。両親が子どものスマートフォンに通信料をチャージできるなど、親子ともに安心で使いやすいサービスを提供しています。
「Smart Education」プロジェクトとの相乗効果により、地域、経済格差による教育機会の不平等の解消に貢献するため、25.3期末には18万人のご加入をいただくことを目標としています。

次世代を担うMPT 職員への研修

KDDIは、これまで、MPT職員を対象に長期研修プログラムを実施し、ミャンマーにおけるお客さま満足度と通信品質のさらなる向上をサポートしてきました。本プログラムでは、KDDI社員が長年の通信事業で培ってきた高度なネットワーク技術、および営業・業務オペレーションに関する知識・ノウハウを研修生に伝えています。
研修生はミャンマーに帰国後、日本で身につけたスキルを活かし、同国の発展に貢献しています。

新興国における水問題への取り組み

W.A.S.H.Project(モビコム)

国際NGO World Vision Mongoliaと協力し、上下水道インフラがない地域の学校への水洗トイレや洗面台の設置などを行い、衛生環境の整備に取り組んでいます。


Clean and Sustainable Water Program(ミャンマー)

清潔な生活用水へのアクセスが困難な水ストレス地域の村で井戸の整備を実施し、村の公衆衛生の向上に寄与しています。

KDDI財団による国際協力事業

KDDI財団では、コロナ禍で変容する社会課題に柔軟に対応し、ICTの利活用を通じて途上国の持続的な発展に寄与することを目的に、海外人財育成、デジタルデバイド解消プロジェクト、教育文化支援活動を実施しています。


海外人財育成

1957年より開発途上国からの研修員を対象とした情報通信に関する技術研修を企画・実施し、これまで144ヵ国、6,000名以上が受講しました。


デジタルデバイド解消プロジェクト

APT(アジア・太平洋電気通信共同体)のプロジェクトを通じて、デジタルデバイドの解消に貢献するため、現地政府機関と連携しながら各プロジェクトを進めています。


途上国教育文化支援

子どもたちの可能性を引き出し、未来を担う人材育成を目的として、カンボジアでは学校建設や英語やパソコン教室などの教育支援および伝統芸能の継承、ミャンマーでは美術や音楽を学ぶプライベートスクールの支援を実施しています。そのほか、ネパールではロボットプログラミングなどのICTを活用した教育支援など、各国でオンラインの活用や支援の現地化を進めています。


ベトナムでの災害用ドローンのフィールドテスト

ネパールでのロボットプログラミング教育