サステナビリティ
統合レポート2022

マテリアリティ 1

通信を核とした
イノベーションの推進

提供価値(1)未来社会の創造

「つなぐチカラ」で新しいテクノロジーを支え、お客さまの期待を超える感動と、ワクワクする未来体験を創出する

執行役員
経営戦略本部長
兼 事業創造本部長
松田 浩路

「つなぐチカラ」が、人々の生活・体験・行動に革新をもたらす

KDDIが目指すのは、「つなぐチカラ」でお客さまが日常で実感できるイノベーションを推進し、ワクワクする未来社会を創造することです。中期経営戦略ではそれを「LX(ライフトランスフォーメーション)」という言葉で表現しています。LX領域の中で私たちが注力するのは、「メタバース」「宇宙」「ドローン」の3つです。

まずは、お客さまの体験行動に圧倒的な革新をもたらすメタバース。メタバースがもたらすのは、地理的、社会的な制限を超えた新しい体験です。アバターを通じ、現実とは違うパーソナリティを持つことも可能で、次世代のコミュニケーションの入口になっていくと予想されます。またKDDIが提供する都市連動型メタバースは、地域活性化の側面からも期待されています。現実のまちをデジタル化した仮想空間で、ユーザーは自宅にいながらその地域の魅力を体験することが可能です。地域の新たな魅力発信ツールとして、多くの 自治体から関心を寄せていただいています。

そして、スペースX社との協業による宇宙通信では、都市部並みの高速通信があらゆる場所に行き渡ることで、これまで低速で通信が安定しないような山間部や離島でも、快適なauの通信サービスをご体験いただくことが可能となり、さらに地域の社会的価値向上にもつながると考えています。また「宇宙から地球を観る」取り組みがより浸透し、温室効果ガス分布のモニタリングや太陽光発電の適切な設置箇所の検討、あるいは僻地の建設現場における作業員の安全性向上など、多方面で価値を創出していくと考えます。

また、ドローンは、物流・点検・監視・測量など、これまで人手に頼っていた領域の省人化や自動化、危険作業の代替などを実現し、人々の生活やビジネスに革新をもたらすでしょう。陸ではロボティクス、空ではドローンと、モビリティのあるものに通信がつながることで、新しい体験が生まれていきます。
これらはいずれも高速通信なくして成り立ちません。KDDIは「つなぐチカラ」と先端テクノロジーを掛け合わせることで、お客さまの期待を超える感動を提供し、ワクワクする未来社会を築いていきます。

パートナリングによる共創こそ、5G時代のサステナビリティを加速する鍵

KDDIの強みのひとつは、長年にわたりこだわり続けてきた「つなぐ」ための技術や知見であり、もうひとつは業種・業界の垣根を越えたパートナリングです。KDDIはこれまでもパートナー企業との共創によって、サービスの拡充や新規ビジネスの創出、社会課題の解決に取り組んできました。特に5Gがもたらす大きな変革の波を乗り越える上で、パートナー企業との共創は欠かせないと考えます。KDDIが持っていない技術や知見はその領域のプロであるパートナー企業が、そしてKDDIは通信で貢献するというパートナリングを、ごく自然な形で、長年にわたり行ってきています。

KDDIが中期経営戦略で打ち出した「サステナビリティ経営」の根底にあるのは、事業を通じて環境価値・社会価値・経済価値を創出し、それらをパートナリングによって加速させていこうという思いです。その実現に向けて、今後も尽力していきます。KDDIがつくるサステナブルな未来にどうぞご期待ください。

  • Life Transformation:将来を見据え、多様化が進む消費・体験行動に革新を起こす事業モデル

提供価値 (1)

未来社会の創造

[ サステナビリティ中期目標(23.3期-25.3期) ]

自治体さまと連携した
バーチャルシティの提供
サテライトグロース戦略に基づく
事業創造・研究開発プロジェクト数
累計60
5G /Beyond 5G +サテライト
グロース関連領域の保有特許件数
対前年20%増

[ 具体的な取り組み ]

メタバース
バーチャル渋谷・大阪をはじめとする仮想空間上での新たなコミュニケーションやコンテンツを体験いただく都市連動型メタバースの展開
宇宙通信
スペースX社との協業により衛星ブロードバンド「Starlink」を用いて、山間部や島しょエリアにも都心部並みの高速通信サービスを提供
ドローン
モバイル通信を用いたスマートドローンの活用拡大と、目視外飛行の解禁による点検や配送等のユースケース創出および新規領域の開拓

[ 強み ]

つなぐチカラ

メタバース
先端的な技術を持つスタートアップへの支援やさまざまな企業とのコラボレーション
宇宙通信
50年以上にわたる衛星通信の歴史と実績、技術ノウハウ
ドローン
通信事業のノウハウや知見の活用による上空での携帯電波の利用

[ リスク ]

  • 他社のイノベーション活動による事業機会の喪失

[ 機会 ]

  • 多様なパートナー企業とのコラボレーションによる新規事業の共創

[ 社会課題 ]

現在の社会課題起点ではなく、まだ見ぬもので生活を一変させ、もっと豊かにし、
誰もが思いを実現できる社会をどのように創造できるかを考える


都市連動型メタバースによる地域活性化

KDDIは、2020年5月に渋谷区公認の配信プラットフォームとして「バーチャル渋谷」を開始しました。2022年2月には「バーチャル大阪」と展開を拡大し、新たなエンターテインメントの提供を通じて都市の文化創出活動の維持、拡大機会の創出に取り組んできました。
これまでに、スタートアップを含む多くの企業やアーティスト、ユーザーとの連携により、ライブ、パブリックビューイングなどのバーチャルイベントを開催。延べ約100万人を動員するなど、先端テクノロジーを活用したコンテンツで、自宅にいながら人々が集い、価値ある体験が生まれる場を提供してきました。またイベントにて特別グッズなどを販売し、その販売利益の全てを渋谷区へ還元することで、渋谷の街づくりに貢献しています。
KDDIは今後も、自治体やさまざまな企業、ユーザー、社会全体と連携しながら、国内外における文化・経済の拡大を推進していきます。


都市連動型メタバースがもたらすボーダレスな社会が分断を乗り越え人々をつなぐ


スペースXの衛星通信サービス「Starlink」をau基地局のバックホール回線に利用

KDDIは2021年9月、衛星通信サービス「Starlink」をau基地局のバックホール回線に導入する契約を締結しました。光ファイバーを敷設できず、既存の衛星回線などでつながっている基地局のバックホール回線をStarlinkの衛星通信に置き換え、高速化することでこれまでサービス提供が困難とされていた山間部や離島においても、auの高速通信をお客さまにお届けすることが可能となります。Starlinkを活用し、いつでもつながり続ける安心をお届けするとともに、デジタルデバイド(情報格差)の解消に貢献していきます。

  • バックホール:携帯電話の基地局と基幹通信網(コアネットワーク)を結ぶ中継回線のこと

ドローンの社会インフラ化による快適な暮らしの実現

「有人地帯における補助者なし目視外飛行(レベル4飛行)」の法施行を目前に控え、ドローンの社会インフラ化に対する期待がさらに高まっています。KDDIは、モバイル通信を搭載したスマートドローンや運航管理システムを開発し、先進的な実証実験や導入事例を積み重ね、2022年4月には「KDDIスマートドローン株式会社」を本格始動しました。

KDDIスマートドローンは企業・自治体・スタートアップと連携し、ドローンの活用による社会課題の解決を図っています。買い物が困難な中山間部の住民や高齢者の方々をドローン配送サービスによりサポートするほか、都市部の有人地域における食品や医療品をドローンで輸送する実証実験を開始するなど、ドローンが自律飛行し、人の暮らしや働き方がより快適になる社会の実現を目指しています。


スマートドローンのイノベーション事例

KDDIは、安全なドローンの飛行を管理するため、上空電波申請、飛行許可申請、空域管制、飛行制御などを行うための「運航管理システム」の開発を進めてきました。この運航管理システムは、監視・警備、点検、測量、物流、農業といったさまざまなドローンの利用シーンを支える基盤となるため、特に重点的にイノベーションを推進しています。

運航管理システムに関する特許は89件(ドローン特許169件のうちの53%)(2021年12月時点)を保有しており、今後も、ドローンの社会インフラ化の実現を目指し、イノベーションを推進していきます。

運航管理システムの特許事例

「飛行ルート設定」においては、お客さまがドローンの飛行ルートを通信エリア内に正しく設定できるように、通信エリア内か否かを判定する仕組みを導入しています。
この仕組みは当社特許として登録されています。こうした特許技術が、運航管理システムには多数実装されています。