サステナビリティ
統合レポート2022

マテリアリティ 4

ガバナンス強化による
グループ経営基盤強化

提供価値(6)
KDDIグループ全体の経営基盤強化・
(7)人権の尊重

サステナビリティ経営を軸にサテライトグロース戦略の推進とそれを支える経営基盤を強化する

執行役員
コーポレート統括本部 副統括本部長 兼
サステナビリティ経営推進本部長
最勝寺 奈苗

多様化するグループ企業全体のガバナンスを強化

通信を核とした注力領域の事業拡大を図るサテライトグロース戦略を推進するには、さまざまな事業領域を持つグループ会社との連携が不可欠です。2022年3月現在、KDDIのグループ会社は連結子会社159社、関連会社38社。事業やグループ会社の多様化を踏まえ、グループ全体のガバナンス強化による強固な経営基盤の確立がますます重要となっています。また、コンプライアンスに反する事故や不正の発生防止に向けたリスクマネジメント体制の強化に加え、サイバーテロなどからさまざまな情報資産を守る強固な情報セキュリティがより一層求められています。
KDDIは、経営管理本部内に新設したグループ経営基盤サポート部を中心に、グループ会社の課題の把握や、的確なサポートのための議論を行い、グループガバナンス強化を推進しています。

人権尊重も重要な取り組み課題と認識

グローバル社会において非常に重要なアジェンダである人権の尊重も重要課題と捉え、あらゆる事業活動において人権に配慮するとともに、サプライチェーンでの人権侵害を撲滅して社会の持続的成長に貢献していきます。企業に求められる人権尊重の対象範囲は幅広く、通信事業者としてはAIの利活用やメタバースなど、新たなサービスやコンテンツ上における人権への配慮も取り組むべき新たな課題と認識しています。
また、サステナビリティ委員会配下の人権部会の実効性を高め、人権デューデリジェンスのPDCAを継続的に回していきます。さらに、お取引先さまによる「KDDIグループ 持続可能な責任ある調達方針」への同意の促進、高リスクサプライヤーへのヒアリングや訪問調査などのサプライチェーンマネジメントの強化を実施しています。

KDDIフィロソフィの浸透と深化がグループガバナンスを支える

「KDDIグループは、全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、お客さまの期待を超える感動をお届けすることにより、豊かなコミュニケーション社会の発展に貢献します。」という企業理念、そして持続的な成長を遂げるために、私たち一人ひとりが持つべき考え方、価値観、行動規範である「KDDIフィロソフィ」は、KDDIグループのサステナビリティ経営の原点といえます。全従業員が共通の価値観のもと、高い倫理観を持って行動していけるよう、各階層や組織単位でフィロソフィ勉強会等を繰り返し実施し、企業理念・KDDIフィロソフィの理解・浸透および血肉化に努めています。

また、お取引先さまに対しても、KDDIグループのサステナビリティに関する考え方・取り組みについて十分にご理解いただけるよう働きかけるとともに、対応すべき課題については、共に解決を図っています。
こうした取り組みによってKDDIグループ全体の経営基盤強化へとつなげるとともに、事業戦略であるサテライトグロース戦略を支え、事業を通じた社会・環境価値創出に貢献していきます。


提供価値 (6)

KDDIグループ全体の
経営基盤強化

[ サステナビリティ中期目標(23.3期-25.3期) ]

重大事故発生件数※1
(ガバナンスと
情報セキュリティ)
0
先進セキュリティ技術への
取り組み件数※2
15
  • ※1主務官庁への報告・届け出等レピュテーションを著しく棄損する事案
  • ※2KDDI 単体、KDDI 総合研究所によるニュースリリース・トピックス件数

[ 具体的な取り組み ]

  • グループ会社へのコーポレートサポート体制強化
  • シェアードサービス活用によるガバナンス強化
  • リスク統制システムの構築・高度化
  • サイバー攻撃から情報資産を守るセキュリティ強化
  • データガバナンス基盤の強化
  • セキュリティ技術強化の研究開発

[ 強み ]

  • 企業理念、KDDIフィロソフィの理解浸透、KDDI行動指針の遵守による高い倫理観の維持

[ リスク ]

  • 情報漏洩や個人情報流出による社会的信用の失墜

[ 機会 ]

  • サテライトグロース戦略の推進、さらにそれを支える経営基盤

[ 社会課題 ]

サイバーテロ、情報漏洩、コンプライアンス違反や不正の発生

提供価値 (7)

人権の尊重
 

[ サステナビリティ中期目標(23.3期-25.3期) ]

あらゆる事業活動における
人権の尊重
人権侵害の恐れがある
取引先への改善率
(対応不備なら取引停止検討)
改善率100%

[ 具体的な取り組み ]

  • KDDIグループ人権方針の遵守
  • あらゆる事業活動における人権の尊重
  • 人権への負の影響の回避・低減
  • 人権侵害への非関与
  • 全役員・従業員への人権啓発の推進
  • 人権デューデリジェンスの継続実施
  • サプライチェーンマネジメントの強化

[ 強み ]

  • KDDIフィロソフィをベースとした経営による、人権を尊重する企業文化

[ リスク ]

  • 人権侵害の放置による企業ブランド価値の毀損、持続可能な社会の発展の妨げ

[ 機会 ]

  • 人権侵害のない社会の実現、事業活動の構築によるKDDIの健全な事業の発展

[ 社会課題 ]

人権侵害の発生
(自社やグループ企業のみならずバリューチェーン全体)


グループ会社へのコーポレートサポート体制強化

KDDIは、2022年4月に経営管理本部内にグループ経営基盤サポート部を新設しました。国内・海外子会社(一部除く)のCFOを、グループ経営基盤サポート部と子会社との兼務所属とすることで、親会社であるKDDI本体のグループ経営基盤サポート部所属とすることで、CFOを通じてグループガバナンス強化の取り組み体制を構築することを目的としています。
また、各社の課題を把握するため、子会社の社長・CFOを定期的に訪問し、ヒアリングを実施しています。把握した課題はKDDI社内で関連部署と連携の上、グループ経営基盤サポート部を事務局とする「グループガバナンス支援会議」にて、課題解決に向けた的確なサポートを行うための議論を実施しています。
CFO自身のスキルアップ・人財育成についても、CFO経験者による講話やCFO同士のディスカッション等、取り組みを推進しています。

シェアードサービス活用によるガバナンス強化

グループ会社のコーポレート業務(会計、給与計算、購買等)を受託するため、KDDIは2022年4月、コーポレート統括本部内にコーポレートシェアード本部を新設しました。グループ会社31社のコーポレート業務を受託し、フルクラウドでシェアードサービスを提供しています。
また、KDDIスマートドローン株式会社、KDDI Digital Divergence Holdings株式会社、KDDIアジャイル開発センター株式会社、auエネルギーホールディングス株式会社、auエネルギー&ライフ株式会社の計5社のサテライトグロース戦略注力領域に対して、各種規程類の検討支援や諸手続きのサポート等の会社設立支援を実施し、設立と併せてコーポレート業務のシェアードサービスも提供開始しました。
事業領域の拡大とともに増加するグループ会社に対し、コーポレート業務をKDDI本体に集約・高度化することにより、一層のグループガバナンス強化を図っていきます。

  • 2022年8月1日時点

リスク統制システムの構築・高度化

KDDIグループでは、従前より重要なリスクへの対策や事件・事故の全社共有など、グループ一体となったリスクマネジメント活動に取り組んでおり、サテライトグロース戦略の推進による事業領域の拡大やグループ会社の多角化を踏まえ、一層のグループガバナンス強化を目的に、グループ共通のリスクマネジメントシステムを再構築しています。
KDDIおよびグループ各社の重要なリスクおよび対策状況や、社内外の事件・事故情報、各組織が整備・運用すべき基本的な内部統制などの、リアルタイムでの一元管理をDX化することで、グループ全体でこれまで以上に効率的・効果的なリスクマネジメントを目指します。DX化により、各組織のリスクや内部統制の状況等が可視化され、事業部門、管理部門、監査部門でのいわゆる「スリーラインモデル」のさらなる実効性向上や、経営層によるタイムリーなリスク対応の指示やリスクの先読みが可能となります。
リスクマネジメントシステムの再構築により、守りとしてのグループガバナンス強化とともに、攻めとしてのリスクテイクを適切に行い、社会の持続的成長への貢献と企業価値の向上を推進していきます。

ガバナンスを支える強固なKDDIグループの情報セキュリティ

KDDIグループは、情報セキュリティの強化を重要課題と捉え、サイバー攻撃から情報資産を守るセキュリティやデータガバナンス基盤の強化、セキュリティ技術強化の研究開発などの取り組みを推進しています。
23.3期はデータマネジメント運用における全社ルールとなる全社データマネジメント基本方針の策定や、個人情報の共同利用先を中心としたグループガバナンスルールの策定により、プライバシーガバナンスとデータマネジメントレベルの向上に取り組んでいます。
また、先進セキュリティ技術への取り組みとしては、KDDIの次世代インフラを支えるべく、暗号や認証の要素技術をはじめとした情報セキュリティ分野全般について、研究開発と国際標準化を推進しています。さらに、IoT機器のように演算性能の低いデバイスでも利用できる、軽量かつ強力な耐量子計算機暗号技術などの「次世代暗号」の開発や、ヒューマンファクタ(人的要素)を考慮したセキュリティ研究において必要となるユーザ参加型実証実験でのプライバシー確保の知見を蓄積しています。今後も、お客さまから信頼され、納得していただけるプライバシー保護の技術実現に向け、引き続き研究開発を推進していきます。

基本的な考え方

KDDIグループは、全ての事業活動が人権尊重を前提に成り立つものと認識しており、従業員や取引先をはじめ、事業活動にかかわる全てのステークホルダーの人権を尊重し、人権侵害を防止、軽減する責任があると考えています。
2022年7月にはKDDIとして国連グローバル・コンパクトに加入しました。トップコミットメントのもと、事業活動における人権尊重に取り組みます。


世界最大のサステナビリティイニシアチブ「国連グローバル・コンパクト」に加入

人権方針

人権尊重の責任を果たすため、さらに取り組みを加速させるべく、KDDIグループは2022年10月に「KDDIグループ人権方針」を改定しました。本方針は、経営会議および取締役会において付議・承認されたものです。
今般の改定では、企業に対して人権尊重の責任を求める動きが近年急速に強まっていることも踏まえ、国際規範への準拠や人権デューデリジェンスの継続的な実施、ステークホルダーとの対話等について明文化しています。
グループ全従業員が本方針に則り、「世界人権宣言」などの国際的な基準を尊重し、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいて人権尊重に取り組みます。
従業員・お客さま・ビジネスパートナーなど全てのステークホルダーの人権の保護に努め、豊かなコミュニケーション社会の発展に貢献します。


KDDIグループ人権方針

体制

KDDIは代表取締役社長が委員長を務めるサステナビリティ委員会(年2回開催)において人権に関する活動方針の策定、推進体制の整備・見直し、目標に対する進捗の確認などを行っています。経営層のトップコミットメントのもと人権尊重に取り組みます。
また、サステナビリティ委員会配下には人権部会(年2回開催)を設置しています。KDDIグループ全体の人権課題を議論し提言する機関として、サステナビリティ経営推進本部長をトップとし、リスクマネジメント本部・総務本部・人事本部・購買本部・関連事業部門で構成されています。「KDDIグループ人権方針」に基づき、人権尊重の推進に関する協議を行い、人権デューデリジェンスの実施、人権課題に対する施策検討などを通じ、グループ全体にわたる人権尊重に関する取り組みを推進していきます。

人権デューデリジェンス

KDDIグループは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に則り、人権デューデリジェンスの取り組みにおいて、グローバル企業に求められる人権課題を明確にし、施策の検討に反映させています。
23.3期は自社の事業活動およびバリューチェーンにおける人権影響評価を実施し、外部専門家の助言のもと、KDDIグループにおける重要な人権課題の特定を行いました。今年度改定された「KDDIグループ人権方針」にも重要な人権課題を明示しています。
今後も人権方針に従い、関係部門と連携を行いながら人権デューデリジェンスの仕組みを通じて、対応施策を検討・実施していきます。

サプライチェーンにおける人権尊重

サステナブル調達アンケートの実施

KDDIは、15.3期から主要なお取引先さま(重要サプライヤー)に対してサステナブル調達アンケート調査を実施しています。
アンケートでは、RBAの行動規範やJEITAの「責任ある企業行動ガイドライン」を参考にしつつ、「KDDI 持続可能な責任ある調達ガイドライン」で規定した人権・労働、安全衛生、環境、公正取引・倫理、品質・安全性、情報セキュリティ、社会貢献の7カテゴリーに加えて、人権・労働、安全衛生や環境を中心にKDDIが必要であると判断した項目を網羅する形式としており、アンケート調査を通じてお取引先さまとサステナブル調達方針などを共有するように図っています。22.3期は、一次お取引先さまのうち、発注金額ベースで上位約90%の主要なお取引先さまに対して実施し、98%の高い回答を得て、サプライチェーン状況の把握と、リスク分析に役立てています。

サプライヤー評価とリスクアセスメント

人権・労働、安全衛生、環境等の観点からリスクを保有するサプライヤーに対して企業訪問による追加調査を行う等、リスク低減に努めていきます。22.3期からはサステナブル調達アンケートにて高リスク管理のための設問を新たに設けており、サプライチェーンにおけるリスクアセスメントを強化しています。設問は紛争鉱物や外国人技能実習生制度を含む人権に関するパート、スコープ1、2、3を踏まえたCO2排出等の環境に関するパートに分かれており、高リスクと判断されたサプライヤーには訪問監査による追加調査や改善提案による支援など是正対応をしていきます。

  • 重要サプライヤーの定義:グループ全体 発注総金額の約90%を占める、取引量が多いサプライヤー、重要部品のサプライヤー、代替不可能なサプライヤー