サステナビリティ
統合レポート2022

マテリアリティ 2

安心安全で豊かな
社会の実現

提供価値(3) 地域共創の実現

地域社会が抱える課題に向き合い、通信とテクノロジーを通じて、住民の声に寄り添った地域共創を実現する

取締役執行役員副社長
パーソナル事業本部長
雨宮 俊武

都市部と地方の格差の解消にデジタルのチカラが期待されている

人口減少、少子高齢化に伴う地域の担い手不足、地域サービスの質や住民生活を支えるコミュニティ機能の低下、情報格差や経済格差の拡大など、地域を取り巻くさまざまな課題が深刻化しています。こうした課題の解決に向けて、政府がデジタル技術の活用により地域の活性化を目指す「デジタル田園都市国家構想」を打ち出すなど、近年、デジタル技術を通じたデバイド解消に期待が寄せられています。

地域住民の声に寄り添った地域共創こそ重要

KDDIでは、通信とテクノロジーのチカラで地域共創を支援していきます。そのためには、地域住民の方々の思いを尊重し、最適な貢献が実現できるよう、地域の課題を理解して“ともに”解決に向けて取り組むことが重要だと考えています。当社の役割は、スマートフォンを中心としたデジタル技術を活用し、その地域で暮らす人たちが目指すものを実現するためのサポートをそれぞれの形で行っていくことです。スマホ教室など地域住民への支援はもちろん、企業・自治体へのデジタル活用支援、その地域ならではの魅力の発信と体験の創出から、人と人、地域同士のコミュニケーションの活性化を図るための取り組みも行っています。

全国にネットワークを持つというKDDIの強みを活かし、サステナブルな地域共創の実現を目指す

KDDIには、全国に張り巡らせた通信インフラと、お客さま接点であるauショップなどの店舗を全国に持つという強みがあります。
この強みに、外部とのパートナリングやアライアンスによる多様なアセットを掛け合わせることで、地域課題を解決する新規ビジネスの創出や社会価値の共創を図っています。

たとえば、高知県日高村では、住民のスマートフォン普及率100%の実現を目指す「村まるごとデジタル化事業」を推進し、地方自治体やパートナー企業とともに、スマートフォンを起点とした公的サービスの質向上や地域のコミュニケーション活性化に取り組んでいます。

また、スマートフォン決済サービス「au PAY」をはじめとするさまざまな金融サービスを通じて、地域経済を押し上げ、都市部との格差解消への貢献を図っています。

さらに、2022年4月に開始したエリア定額乗り放題サービス「mobi」では、移動に不安を抱える高齢者や子どもの送迎に苦労する子育て世代の自由な移動を支え、モビリティサービスと通信をかけ合わせることで、地方・都市部の社会課題解決と新たな移動体験を提供しています。

そして、重要なのは、こうした地域共創の取り組みを一過性で終わらせず、持続的に推進していくことです。KDDIは、デジタルデバイド解消など地域課題の解決を次の事業戦略に活かし、利益を再び社会に還元する好循環の創出により、サステナブルな地域共創の実現を目指していきます。


提供価値 (3)

地域共創の実現

[ サステナビリティ中期目標(23.3期-25.3期) ]

地域のデバイド解消支援者数
累計1,500万人
決済・金融取扱高
16.3兆円
  • スマホ教室、店頭サポート、使い方サポート、交通オンデマンド、地域教育支援(講義・セミナーなど)、かんたんTV電話、自治体・中堅・中小組織デバイド解消等

[ 具体的な取り組み ]

  • 地域の事業者とのつながりの強さを活かした地域貢献
  • auショップでのスマホ教室の開催などによるデジタルデバイド解消
  • 地域密着型MaaSによる交通課題の解消
  • 通信とau PAYなどの金融系サービスの双方向シナジーの最大化

[ 強み ]

  • 全国に張り巡らせた通信インフラと、全国のauショップ等の店舗によるお客さま接点
  • 5G /IoT、ビッグデータなどの先進技術
  • ベンチャー企業や地元企業、地方の教育機関などあらゆる分野のパートナーとの協働によるノウハウ

[ リスク ]

  • 労働人口の減少、地域間の経済格差の拡大によるユーザー数の減少や、事業収入の減少

[ 機会 ]

  • 地域ならではの産業、文化、自然、コミュニティを強みとしたビジネスの発展による地域経済の活性化

[ 社会課題 ]

  • 地方のデジタル化対応の遅れやデジタル人材、起業家、地域づくりの担い手不足
  • 都市部と地方の労働生産性や教育、経済、情報格差の拡大
  • 情報通信格差解消のため、都心部と地方との間の通信インフラの増強
  • インフラの整備と災害対策を視野に入れたネットワーク強靭化の推進
  • 人生100年時代における経済基盤の構築
  • 地域による金融格差

ちょいのりサービス「mobi」による移動課題解決

KDDIとWILLER株式会社が合弁で設立したCommunity Mobilityが提供する「mobi」は、モビリティサービスと通信を掛け合わせた、徒歩や自転車に代わる半径約2キロの生活圏内で定額で利用する「ちょいのり」サービスです。

昨今、高齢者の運転免許証の自主返納が増加する中、地方では運転手不足による公共交通機関の縮小から、移動に不安を抱える高齢者だけでなく、子どもの送迎に苦労する子育て世代の自由な移動を支えます。さらに、新型コロナウイルス感染症により自宅周辺で過ごす時間が増えたことで近距離移動の需要が高まるなど、交通課題の解消がますます重要になっており、コミュニティの創出や持続可能なまちづくりに貢献していきます。
KDDIは、モビリティサービスと通信を掛け合わせることで、地方・都市の社会課題解決と新たな移動体験を提供し、交通業界のDX化を支援します。



高知県日高村「村まるごとデジタル化事業」による地域活性化 

KDDIは、高知県日高村とともに、スマートフォンを使った公的サービスの質向上や地域のコミュニケーション活性化に取り組む「村まるごとデジタル化事業」を推進しています。
本事業の一環として、住民のスマートフォン普及率100%を目指していきます。スマートフォンの出張販売および利用促進支援や、シニア世代を含めたあらゆる世代がスマートフォンを使いこなし、より便利な生活を送るための支援を実施するなど、スマートフォンの利活用促進を通じて、住民の安全や健康、地域活性化を支えるとともに、誰もがデジタルの恩恵を受けられる社会の実現を目指していきます。


誰でも手軽に使える金融サービスによる金融格差の解消

KDDIの金融持株会社auフィナンシャルホールディングスでは、銀行、証券、クレジットカード、生命保険、損害保険等さまざまな機能を有しており、複雑化、多様化する金融システムにおいて、お客さまの身近な存在として、スマートフォンを起点とし、いつでも、どこでも、誰でも手軽に利用できる、さまざまなニーズに対応した利便性の高い金融サービスを提供しています。

オンラインやオフラインなど日常の消費活動に加え、家計診断やライフプラン診断機能で効率的な資産管理機能の提供を通じ、投資やローン、貯蓄などさまざまなライフステージに応じたお客さまとの長期間にわたる取引を可能とすることで、強固なエンゲージメントの構築に取り組んでいます。

また、ITリテラシーによる利便性に格差が生まれないよう、スマ ートフォンで完結するわかりやすいサービス設計をするとともに、金融リテラシー向上にも貢献しています。


auフィナンシャルホールディングス株式会社

総務省事業と連携したスマホ教室で、高齢者など地域住民のデジタルデバイドを解消

KDDIは2022年5月20日、総務省の「令和4年度 利用者向けデジタル活用支援推進事業」の事業実施団体として22.3期に引き続き採択されました。マイナンバーカードの申請・利用方法や新型コロナワクチン接種証明書の発行方法など、スマートフォンで行える行政手続きに関する講座(スマホ教室)を通じ、高齢者などのデジタル活用における不安の払拭とデジタルデバイド解消に取り組み、誰もがデジタル化の恩恵を受けられる社会の実現を目指します。


地域と社員を“つなぐ”コミュニティ活動

人口減少・高齢化による地域づくりの担い手不足が大きな社会課題となる中、地域と多様に関わることで新たな変化を生み出す「関係人口」と呼ばれる地域外の人材に注目が集まっています。KDDIでは、「社員の関係人口化と地域への貢献」を後押しすべく、社員に対する活動の場の提供を進めています。

2020年7月、「地域を元気にしたい」という思いをもつ有志の社員による地域応援コミュニティとして「地域サポーター」制度を立ち上げました。当初は、業務外の時間を活用して活動を行ってきましたが、23.3期からは、KDDIが目指す姿である「お客さまに一番身近に感じてもらえる会社」の実現にむけ、業務の一環としての活動も開始しています。

具体的な活動としては、地域共創に関する社員向け勉強会や地域サポーター間の交流会の開催、現地訪問での農作物収穫体験や社内スペースを活用した地産品マルシェの開催等、地域とつながり、地域の方々に貢献し得る多様な企画を行ってきました。

地産品のマルシェでは、地域サポーターの活動に参加していない社員にも本取り組みを知ってもらえる良い機会となり、地域サポータ ー活動への共感の輪が着実にひろがっています。
兵庫県、広島県、長野県の3県から始まった活動ですが、2022年には社員の声により福岡県、北海道へも拡大。現在は5つの地域ごとに約100名を超える社員がサポーターとして登録し、延べ640名が活動しています。

長野県飯綱町にて共同オーナーになった、りんごの木の収穫体験を実施

地域サポーターが、地域のまちづくりに取り組む会社の活動について学ぶ様子(長野県飯綱町にて)