サステナビリティ
統合レポート2023

「つなぐチカラ」の進化で
目指す未来

「つなぐチカラ」の進化で目指す未来
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過疎化、デジタル格差、自然災害、少子高齢化に伴う労働力不足など、幅広い社会課題解決の鍵を握るのが「つなぐチカラ」です。
KDDIは、社会の情報基盤を支えるインフラ企業として、「つなぐ」を支える通信基盤を強化するとともに、通信技術と先端テクノロジーとをかけ合わせることで、私たちを取り巻く社会課題を解決していきます。
誰もが思いを実現できる未来社会を描き、社会の持続的な発展に向けて取り組んでいきます。


技術統括本部 技術戦略本部長
大谷 朋広
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「つなぐ」を支える次世代通信基盤 - オールフォトニックネットワーク


デジタルツインとカーボンニュートラルを両立させるオールフォトニックネットワーク

あらゆるものが通信でつながるBeyond 5G時代において、当社は、フィジカル空間(実世界)とサイバー空間(仮想空間)を結び付けて現状分析や将来予測を行う「デジタルツイン」が社会の重要な仕組みになると考えています。都市デザインや個人のライフスタイルなど、さまざまなシーンで大きな変革をもたらすことになるでしょう。
あらゆるものが通信でつながる社会では、膨大なデータ処理が必要となります。実際、近年において、世界のデータ流通量(IPトラフィック)は急激に増大しており、それに伴ってデータを処理するIT関連機器などの電力消費量も増加傾向にあります。そのため、デジタルツインとカーボンニュートラルを両立するには、伝送能力の向上、処理能力の高度化、そして低消費電力化が課題といえます。その課題解決の重要な鍵となる技術がオールフォトニックネットワークです。

IT関連の消費電力予測


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IPトラフィックの増加に比例して消費電力が増大した場合、2016年比で2030年には約36倍、2050年には約4,300倍に

  • 出典:「令和4年版情報通信白書」(総務省)

現在のネットワーク通信では、信号を光から電気、電気から光へ変換していますが、オールフォトニックネットワークは、それらの変換をせず、信号を光のまま伝送することで、超高速・低コスト・低消費電力を実現します。当社は、60年にわたる光海底ケーブルの研究開発の中で、光通信分野における3つの強みを培ってきました。太平洋の横断をも実現する長距離伝送、インターネットの発展に伴い増大するトラフィックにも対応しうる大容量伝送、そして、海底という過酷な環境での運用にも長年耐えうる高い信頼性です。これら3つの強みを活かし、強靭なオールフォトニックネットワークの確立を目指しています。
また、自社における研究開発の推進に加え、オールフォトニックネットワークの伝送方式の標準化やモバイルネットワークへの適用などに向けて、世界中のパートナーとともにオープンイノベーションを推進しています。

KDDIが目指すネットワーク像


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オールフォトニックネットワークの実現は、デジタルツインの社会におけるさまざまな革新の推進剤となり、今後世の中が求める高付加価値かつ実用的なサービスやプラットフォームの出現を加速させるでしょう。
本ページの後半では「つなぐチカラ」の進化によって生まれる、サービスやプラットフォームの具体的な事例として、当社の取り組みを紹介します。


人々の思いに寄り添いながら、ともに未来を形づくっていきたい

KDDIは通信会社の使命として、途切れることのない通信をお客さまに提供することを目指してきましたが、さらなる喜びや驚き、感動を提供するには、通信をより進化させていかなければなりません。そのとき、技術の革新性ばかりに目を向けるのではなく、お客さまに寄り添うことが重要なのだと思っています。さまざまな人たちのやりたいこと、なりたい姿に寄り添い、そこに新しい技術を組み合わせて、スッと選択肢を提示すること。それこそが、当社の目指す姿なのです。
みなが物質的豊かさを求めていた昔とは幸せの定義が変わってきており、今はそれぞれの価値観のもとで、それぞれの思いを実現することが幸せなのではないかと思います。その画一的ではない各々の思いを実現するときに、通信はきっとお役に立てる。事業、通信性能、新しいサービス、あらゆる面でお客さまに寄り添った形でつなぐチカラを進化させてまいります。

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つなぐチカラの進化 CASE 1
“命をつなぐ” ネットワーク

地球上いつでもどこでも通信を届け、つながらない場所をなくしたい、その思いのもと当社は事業を続けてきました。そして、ただ回線をつなぐだけではなく、「つなぐチカラ」で人々の命をつないでいくことが当社の使命だと考えています。


Starlinkを活用し宇宙から「ずっと、もっと、つなぐぞ。」の実現

KDDIは60年にわたって日本の衛星通信サービスの一角を担ってきました。そして、2021年、次世代の宇宙ビジネスをけん引するスペースX社の衛星通信サービス「Starlink」と提携したことで、通信の可能性がこれまで以上に広がり、あらゆる生活シーンに通信が溶け込む世界の実現に大きく近づいています。
大規模災害が発生した際は、救助を求める緊急電話、安否確認、被害状況の把握や支援活動に対応するために通信が必要不可欠です。災害時に地上の回線が利用できなくなっても、衛星を介したStarlinkを活用することで、通信回線を確保できます。


秩父市中津川地内では、Starlinkを活用してauのモバイル通信環境を確保し、ドローンの遠隔自律飛行による物資の配送を実施しました。本取り組みは、2022年9月に土砂崩落が発生し、物流が寸断された秩父市中津川地内の地域住民への冬季期間の生活支援を目的としており、食品、日用品、医薬品など最大約4kgの物資をドローンで複数回配送し、地域の人々の生活を支援しました。

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日常生活における“命をつなぐ”取り組み

災害時だけでなく、何気ない日常においても、車と自転車の事故など、回避すべき“命”に関わる社会課題は存在します。
KDDIはスマホ位置情報を活用し、自転車・原動機付自転車・自動車が同じ交差点に接近した際にそれぞれの運転手へ通知する機能を開発しました。フィジカル空間から集めた情報を使ってサイバー空間で予測を行い、再びフィジカル空間へフィードバックするデジタルツインの取り組みです。
通信があれば人々に安心を届けることができ、命をつないでいくことができます。これからも、いつでも、どこでもつながる通信環境の提供を目指していきます。


スマホ位置情報で公道での事故を防止

つなぐチカラの進化 CASE 2
ロボットと人が共存する未来社会

日本の生産年齢人口(15~64歳)は1995年をピークに減り続け、2050年には、2021年に比べて約29%も減少すると予測されています。特に地方の人口減少・高齢化の進展は顕著で、労働力不足、地域経済・産業の担い手不足など、さまざまな課題が深刻化すると懸念されています。
労働力不足の解決策の一つとして期待されているのが、ロボットです。ロボットが自由に動き回り、回遊販売や見回り、清掃といったサービスを行うことができるように、KDDIはセキュリティゲートやエレベーター、防犯カメラの映像などのさまざまなデータと、ロボットのプラットフォームを連携させることで、これまで単独では実現できなかったサービスの実現や、利用者の需要に柔軟に対応できる環境の構築を目指しています。また、実際に街中での実証実験などを通じ、ロボットに対する生活者の受容性についても調査を行い、より望まれる形で社会にお届けしていきたいと考えています。


大手エレベーターメーカー5社とロボットプラットフォーム接続試験の実施に合意
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Message

Beyond 5G時代の社会では、冷蔵庫の中の牛乳を切らしてしまったとき、スーパーまで買いに走らなくても、配送ロボットが玄関まで届けてくれる。そもそも切らしてしまうようなことが起こらないかもしれません。
社会におけるあらゆるモノが、自動的につながることで、人の意思が介在せずとも、さまざまな目的が達成される。ロボットは、人に自由な時間を提供する良きパートナーになるでしょう。

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