サステナビリティ経営推進本部長メッセージ
「つなぐチカラ」で環境・社会課題解決に貢献していくとともにステークホルダーとのコミュニケーションを積極的に推進する
サステナビリティ経営推進本部長
サステナビリティ経営の推進
社会課題起点での事業機会創出と、ステークホルダーとのコミュニケーションのさらなる推進
サステナビリティ経営の推進にあたり、私たちは、二つの重要な役割を果たしていきたいと考えています。
一点目は、環境・社会課題を起点とした事業機会を創出し、これにより課題解決を目指すという循環を生み出し続けることです。気候変動対策、生態系保全、循環型社会への移行、地域のデバイド解消、サステナブルなインフラ環境の実現など、環境課題や社会課題を、事業を通じて解決していきます。当社は、「つなぐチカラ」を強みとして、DXやIoTなどさまざまなアセットを活用し、パートナーの皆さまとともに社会の持続的成長と企業価値の向上に寄与するサステナビリティ経営のトップカンパニーを目指します。
二点目は、ステークホルダーとのコミュニケーションの推進です。まず、当社の財務・非財務の取り組み状況や考え方をご理解いただくために、徹底した情報開示を推進します。さらに、マルチステークホルダーとの丁寧な対話を通して、当社として取り組むべき課題やご期待いただいていることを正しく受け止め、一層強力なサステナビリティ経営の取り組みにつなげてまいります。
社会課題起点での事業機会創出
「つなぐチカラ」の進化により、事業を通じて社会課題解決に貢献する
世界は、脱炭素社会の実現に向け舵を切りました。KDDIグループにおいても事業活動におけるCO2排出量実質ゼロ実現を目指しています。さらに、社会全体のカーボンニュートラル化につながる取り組みを積極的に推進しています。KDDIグループのauエネルギーホールディングスは、auリニューアブルエナジーを設立し、太陽光発電を中心とした再生可能エネルギー発電事業を開始しました。エネルギーの安定供給を実現する再生可能エネルギー中心の社会への転換に寄与していきます。またKDDIは、法人のお客さま向けに「グリーンモバイル」の提供を開始いたしました。これは、お客さまへ提供する通信サービスにかかる電力を再生可能エネルギーとするものです。
また、KDDIの強みである「つなぐチカラ」は、社会の情報基盤を支え、私たちを取り巻く社会課題解決に貢献し、イネーブラーとしてより良い未来を形づくる鍵になると考えています。あらゆる環境・社会課題の解決に対して、当社の通信を核としたイノベーションが貢献します。
例えば、気候変動などにより海洋環境は大きく変化していますが、漁業においては、水産資源や藻場の減少に伴い、漁獲量の減少が続いています。そこで、漁場環境の保全・回復の観点から、海面下の海の森である藻場の回復が重要と考え、水上ドローンを活用した調査を実施しました。
このほかにも全国各地でIoT技術の活用による漁業・農業の課題解決に積極的に取り組んでいます。漁業・農業の従事者の負担が大きいという課題に対し、当社のアセットを活用することにより、作業効率化やコスト削減、収穫の安定化・品質向上を実現しています。従事者の経験や勘で補ってきた作業品質をデータで可視化し、デジタル空間で再現して解決を提示することで、未経験者や若者の就労機会拡大が期待できます。
通信事業者である私たちKDDIの使命は「つなぐ」ことです。命を、暮らしを、心をつなぐ。そして、その「つなぐチカラ」を進化させて、あらゆるシーンに通信が溶け込むことで、新たな価値が生まれ、社会課題が解決される、そういう時代を目指してまいります。
KDDI Green Partners Fund
当社は地球環境に対して、社会全体のカーボンニュートラルの実現、生物多様性の保全、循環型社会の実現、この3つを目指すことで、社会の持続可能性を高めることに貢献していきます。
その実現に向けた大きな原動力の一つが、企業や組織の枠組みを超えた共創によるイノベーションです。環境課題解決に積極的に取り組んでいるスタートアップ企業とのパートナリングを通じて、KDDIとパートナー企業の技術を融合し、シナジーを生み出すことで、さらに社会へのインパクトを拡大していきます。
KDDIは、SBIインベストメント株式会社と共同で、環境課題に取り組むスタートアップ企業への出資を行う「KDDI Green Partners Fund」を2021年に設立しました。これまで6企業(2023年9月現在)への資金提供をするとともにKDDIの有するさまざまなアセットを活用した事業支援や共同実証などを行ってきました。今後もさらに環境課題解決への貢献を加速するため、優れた技術やサービスを持つスタートアップ企業への投資と支援を実施します。
サステナビリティボンドの発行
サステナビリティ活動の推進を財務面で支える仕組みも必要です。社会課題の解決や地球環境の保全につながる事業に資金使途を限定したサステナビリティファイナンス・フレームワークを策定し、KDDI初のサステナビリティボンドである「KDDIつなぐチカラ債」を発行しました。これは、環境や社会課題の解決に資する事業に調達資金が充当されるSDGs債に該当します。
総額1,000億円となる「KDDIつなぐチカラ債」の具体的な資金使途として、5Gエリアを構築することで、政府が提唱する「デジタル田園都市国家構想」に貢献します。また、今後も携帯電話基地局や通信設備などの省電力化と再生可能エネルギーの利用を推進するさまざまなプロジェクトを実施していきます。
■ 本社債の概要
名称 | KDDI株式会社第30回無担保社債 (社債間限定同順位特約付) (サステナビリティボンド) |
KDDI株式会社第31回無担保社債 (社債間限定同順位特約付) (サステナビリティボンド) |
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発行年限 | 3年 | 5年 |
発行総額 | 総額1,000億円 | |
発行時期 | 2022年10月27日 | |
ストラクチャリング・エージェント | 大和証券株式会社 | |
主幹事証券会社 | 大和証券株式会社、三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社、みずほ証券株式会社、野村證券株式会社 |
社内浸透を通じて、事業化のきっかけを社員に提供
サステナビリティ経営を実践し、社会にポジティブなインパクトを与えていくためには、社員一人ひとりがサステナビリティについての理解を深め、さらに社会課題起点の事業創出をどのように実現するのか自律的に考えることが重要です。
例えば、社内表彰制度「社長賞」の評価においては、サステナビリティの要素が必須とされています。
また、サステナビリティ経営に関するワークショップを開催し、社会課題や環境課題の解決を起点に事業開発を行うシミュレーションの場を社員に提供しています。その他、多種多様な部門の社員が参加できるサステナビリティワークショップの企画や、サステナビリティを専門に語り合う社内コミュニティを発足させるなど、きっかけづくりに努めています。
情報開示とステークホルダーコミュニケーションの積極推進
ステークホルダーとのコミュニケーションと情報開示の推進
当社のサステナビリティにかかる取り組みをステークホルダーに伝えるために、積極的な情報開示に注力しています。そして、自社だけでなくステークホルダーとともに社会課題の解決に貢献していきたいと考えています。有価証券報告書へのサステナビリティ情報開示といった法定開示に加え、ESG全般に係る当社の現状や考え方について、本サステナビリティ統合レポート、サステナビリティニュースを含むWEBの活用、各種メディアへの情報提供などを通じて、積極的に発信しています。
ステークホルダーとの対話にも積極的に取り組んでおり、特に環境と人権をテーマとした専門家の方々とのディスカッションには継続して注力しています。これらの情報開示・コミュニケーションを通じて、当社における課題や社外からの期待に対して、活動改善、機会創出につなげていくとともに、ステークホルダーの皆さまから信頼され、選ばれる企業となるよう努めてまいります。
IR活動を強化し、新たな取り組みにもチャレンジ
投資家とのコミュニケーションの重要性を考慮し、サステナビリティ経営推進本部に、IR部を設置しています。財務・非財務を統合した情報を投資家の皆さまに丁寧にお伝えし、貴重なご意見を頂戴しています。
また、非財務活動と企業価値の関係性を分析し、可視化する活動にもチャレンジしてきました。これにより、財務情報や非財務情報それぞれだけでは読み取ることのできなかった重要な活動についても、理解を進めることができました。事業活動の改善、情報開示などに反映し、投資家とのコミュニケーションの充実化にもつながっています。22.3期は、アビームコンサルティング株式会社が提供する「Digital ESG Data Analytics」を活用し、ESG開示の拡充を主眼とした、非財務データとPBR(株価純資産倍率)の相関分析をトライアルで実施しました。23.3期はさらに深掘りする分析として、アクセンチュア株式会社の「AI Powered Enterprise Value Cockpit」のモデルを活用し、因果関係も含めた定量的な分析を行いました。株主評価や企業規模といった潜在変数による影響を含めることで、因果関係も含めた非財務データと時価総額の関係性を可視化しました。
これまで気候変動に対して実践してきた取り組みが国際的な環境非政府組織(NGO)のCDPにより評価を受け、環境先進企業として最高評価である「気候変動Aリスト」に初めて認定されました。
100%再生可能エネルギーの使用を目指す国際イニシアチブ「RE100」にも加盟しています。また、KDDI版ジョブ型人事制度の導入をはじめとする人財ファースト企業への取り組みが「HR Transformation (HRX) of The Year 2022」の最優秀賞を受賞しました。
今後も、事業を通じた社会課題の解決と徹底した情報開示・コミュニケーションを一層強力に取り組んでまいります。