CO2排出量実質ゼロの「サステナブル基地局」を運用開始

前触れもなく強烈な雨が降り出すゲリラ豪雨、年々激しさを増す夏の猛暑。気候変動問題は自然生態系、産業・経済活動など、私たちの生活に大きな影響が懸念されます。
地球温暖化による気候変動を防ぐために、世界中の企業や人々がカーボンニュートラルに取り組んでいるなか、私たちKDDIも、将来世代が生きていく地球を守るために、カーボンニュートラル達成のためのさまざまな取り組みを行っています。

「KDDIにとって、カーボンニュートラルの取り組みは、2つの重要な意味を持っています。ひとつは豊かな地球を未来につなぐため。もう1つは社会インフラである通信をお客さまに提供する使命を果たすためです」サステナビリティ企画部の大庭隆宏は、こう話します。

コーポレート統括本部 サステナビリティ経営推進本部 サステナビリティ企画部 カーボンニュートラル戦略G 大庭隆宏

屋外に設置されている基地局は、豪雨や突風等の自然災害の影響を受けてしまいます。事業のリスクを減らし、安定した通信をお届けするためにも、気候変動対策であるカーボンニュートラルの取り組みは欠かせないのです。

こうした背景からKDDIは、現在年間約100万トン排出しているCO2を、2030年までに実質ゼロにすると宣言しています。

KDDIのCO2排出量の約98%基地局やデータセンター等の通信設備が占めています。そのうちの6割が基地局からのであることから、いかに基地局のCO2排出を実質ゼロにするかが喫緊の課題となっています。

広いエリアをカバーする鉄塔型基地局

さらに、全体CO2排出の残りの4割を占める通信設備においても省エネのための技術開発やクリーンエネルギーへの置き換えを進めることで、事業活動に係るCO2排出実質ゼロを目指します。

2023年5月31日、基地局の電力を太陽光パネルとカーボンフリーの電力供給に切り替えることで、CO2排出量の24時間実質ゼロを実現する、サステナブル基地局の運用を開始しました。

再生可能エネルギーで、クリーンな通信設備に変えていく。KDDIは地球にやさしい技術で、豊かな地球を未来につなぐために挑戦し続けます。

カーボンフリーを実現する「サステナブル基地局」

KDDIのCO2総排出量のほぼ6割を占めている「基地局」。そもそも、なぜ、基地局のCO2排出量はこんなに多いのでしょうか。そこには全国各地で通信サービスをご提供するのに必要な基地局の消費電力が影響しています。

日本の電力の多くが化石燃料に由来していることから、電力消費が大きいとCO2の排出量が増えてしまうのです。

技術統括本部 技術企画本部 カーボンニュートラル推進室 大島 歩

「KDDIは2022年3月で3Gを停波しており、1局あたりの消費電力が大きい3G基地局は既に引退しています。これはCO2の削減に大きく貢献しています」(大島)

4G、5G通信になり、実は1つの基地局あたりの消費電力は大幅に減っているのです。

今の基地局1局あたりの電力消費量はドライヤーとほぼ同じくらい。3G時代は基地局自体の消費電力が大きく、それを冷やすための空調機器も必要だったため多くの電力を必要としていました。4G以降の基地局は、技術の進化で無線機が小型化され、冷却の必要もなくなったことから1局あたりの消費電力は減っているのです。

しかしその一方で、昨今では通信が暮らしのあらゆる場面で使われるようになったことから、必要な基地局の数が増えています。今でも、基地局のCO2総排出量が全体の6割を占めているのにはこうした理由があるのです。

CO2削減の切り札、「サステナブル基地局」

基地局のCO2排出量をいかに減らしていくか。その解決策として登場したのが「サステナブル基地局」です。

サステナブル基地局は、太陽光パネルを設置して電力を供給し、足りない分はカーボンフリープランの電力を使用することで、CO2排出実質ゼロを実現します。

サステナブル基地局に設置されている太陽光パネル

実際の設置にあたっては、太陽光パネルの効果を最大化できるようにさまざまな工夫があるといいます。
「現地に行って、あらゆる角度から検証しています」と話すのは、サステナブル基地局の設置と運用を担当しているKDDIエンジニアリング株式会社 藤原雅樹です。

KDDIエンジニアリング株式会社 藤原雅樹

発電量を最大にするためには、太陽光が最も当たる南向きの場所にパネルを設置する必要があります。地図で見てベストだと思った場所でも、季節による周辺環境や日当たりの変化など、現地に何度も足を運ばないとわからない環境を確認して、設置場所を検討します。

「太陽の動きに伴ってどのくらい影が伸びるのかを計算したり、影がさしても発電効率が落ちない機材を選んだり、さまざまな工夫をしています」(藤原)

「ただし、太陽光パネルの利用を想定して基地局を設置したわけではないので、いますぐ全ての基地局をサステナブル基地局に切り替えることはできません。基地局の周りに木が生い茂っていたり、陽当りの良い南側にアンテナ設置用の鉄塔があり、日陰になってしまったりというように、太陽光が届きづらい場所も少なくないのです。全国の基地局の中から、まずは条件の合う基地局を探して順次切り替えていきます」(大島)

カーボンニュートラル達成に向けたさまざまな技術開発

基地局の次にKDDIでCO2排出量が多いのがデータセンターを含む通信局舎からの排出です。

365日24時間サーバを安定した環境で運用するために適切な温度管理をしないと故障のリスクが高まります。この空調制御に多くの電力を消費します。
設備運用にかかわる電力消費を抑える取り組みにも、積極的に取り組んでいます。

コーポレート統括本部 サステナビリティ経営推進本部 サステナビリティ企画部 カーボンニュートラル戦略G 大庭隆宏

冷却の効率化を目指す取り組み

通信局舎のCO2排出実質ゼロに向けた取り組みの一つがAIを活用した空調制御です。実は、局舎内は機器の設置状況や稼働状況により、同一室内でも温度状況が異なります。現状では室内全体に均一に冷気を送るため、エリアによっては冷やし過ぎの状態となっていました。

この対策として室内に多数の温度センサーを設置し、AIを使って温度が高いエリアだけを適切に冷やすように空調を制御する事で空調機器の電力消費量を抑えられるようになりました。

最新技術を使った取り組みはほかにも進んでいます。

ひとつは三菱重工業、NECネッツエスアイと共同で開発している「液浸冷却」の実装。電気的に不活性な液体に機器ごと漬けて冷却する方法です。実証実験では、従来のサーバ冷却に使われる電力を94%削減することに成功し、今後本格運用を見据えた実証実験を進めています。

三菱重工業、NECネッツエスアイと共同で実施した「液浸冷却」の実証実験

また、トラフィック(データの移動や通信の発生)に合わせてCPUの稼働を調整する仕組みの導入も進めています。サーバ上では、常にトラフィックが発生しているわけではありませんが、いつ大量のトラフィックが発生するか予測できないことから、常にCPUを動かしており、それが余分なCO2の排出につながっています。

これを、トラフィックに応じてCPUの稼働を制御する仕組みによって稼働を最適化し、CO2を削減することができるようになります。

新技術の開発・実装に向けた取り組み

カーボンニュートラルという高い目標を実現するためには、既存技術の活用だけでなく、イノベーション(革新的技術開発と社会実装)が不可欠です。

KDDIはKDDI Green Partners Fund(Green Fund)を通じて、気候変動問題に取り組むスタートアップ企業と共に、環境分野における技術革新や新技術の普及拡大に取り組んでいます。

そのひとつが「ペロブスカイト太陽電池」。Green Fundの出資先である株式会社エネコートテクノロジーズとKDDIは、将来的に通信基地局でペロブスカイト太陽電池を活用することを目指し、「薄い」「軽い」「曲がる」性質を生かした設置方法などの実証実験を進めています。

ペロブスカイト太陽電池

KDDIは、企業や組織の枠組みを超えて共創によるイノベーションを創出し、豊かな地球を未来につなぐために、挑戦を続けていきます。

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