2023.2.13

食品の廃棄物などを原料とするプラスチック代替素材「modo-cell®

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竹の端材を活用できないか、そんな思いが実を結ぶ

アミカテラという社名は、ラテン語で「地球に優しい」を意味しています。同社が製造している「modo-cell®」(モドセル)は、植物繊維であるセルロースを主原料としたプラスチック代替素材で、さまざまな植物をはじめ、食品メーカーの製造過程で生じる残渣(ざんさ)、学校給食の食べ残し、コーヒーの絞りかすといったものからも製造できることが特徴です。

左奥:コーヒーの搾りかすが原料のタンブラー、右奥:茶葉が原料のタンブラー、左前:給食の残飯が原料のお椀、右前:米粉が原料のお椀左奥:コーヒーの搾りかすが原料のタンブラー、右奥:茶葉が原料のタンブラー、左前:給食の残飯が原料のお椀、右前:米粉が原料のお椀

「分解性があって自然に優しいとされる代替プラスチック素材は世界中でいくつも提供されています。しかし、それらは、人間や家畜が食べられる素材であったり、バイオマス燃料の原材料として利用できる素材であったりする場合もあります。それは真の意味でサステナブルと言えるのでしょうか?」と問いかけるのは株式会社アミカテラ 代表取締役会長の増田厚司さんです。

株式会社アミカテラ 代表取締役会長 増田厚司さん株式会社アミカテラ 代表取締役会長 増田厚司さん

他の用途に利用できる素材を原材料にするのではなく、廃棄物として処理される残渣を活用できることこそが、modo-cell®の特徴の一つです。

「実は、初めから環境問題を深く意識していたわけではありません。約30年前、現在アミカテラの取締役を務めている王 正雄は、台湾で竹製の割り箸の製造機械を開発していました。その製造過程で大量に発生する竹の端材を活用できないか、そう考えたのがmodo-cell®開発のきっかけです。竹から始まり、稲・わら、トウモロコシ、そば、麻、山椒、コーヒーなどさまざまな素材に広がっていきました」

原材料として利用する素材の物性が損なわれないため、例えば竹を主原料にした製品には、竹の持つ抗菌効果が備わっています。実はこの特徴はデメリットにもなり、素材の香りが強いものは、使い始めは少し香りが残ってしまうそうです。しかし発想の転換で、カレーの器をスパイスの残渣で作ったり、チョコレートのトレーにカカオハスク(カカオ豆の外皮)を使用したりすることで、ただのプラスチック製品の代替ではなく、より食事を楽しめるような工夫にも、modo-cell®製品は活用できるのです。

食器をはじめ、多様な商品に成型できるmodo-cell®

さらにmodo-cell®の長所は、成型加工が比較的容易な素材であるため専用の成型設備を必要としないことにあります。
また、熱硬化性と熱可塑性の両面の性質を持つため、既存のプラスチック成型工法の多くに適応し、幅広い商品を製造できます。プラスチック加工工場にとっては、追加の設備投資なく、modo-cell®をプラスチックの代替素材として利用し、地球環境に優しい商品を製造できるようになるわけです。

「当初は、自社でストロー以外の商品も製造して販売していくことを計画していました。しかし世界を見渡せば、プラスチック加工に長けた企業が数多くあります。だとすれば、それらの企業へプラスチックペレットの代替素材としてmodo-cell®を提供したほうが、地球環境や社会に貢献できる機会が増える、そう考えたのです」

ストロー以外にも、皿や丼、カップ、箸、タンブラーなどなど、さまざまな食器に形を変えるmodo-cell®。食器以外でのプラスチック代替素材としての検証も進みつつあります。

「modo-cell®」製の食器「modo-cell®」製の食器

これまで台湾を生産拠点としていたmodo-cell®は、KDDI Green Partners Fundなどの出資を受け、熊本県に生産拠点を建設し、2023年1月に稼働を開始しました。生産拠点が国内になりmodo-cell®の生産量が増加することで、これまで以上にプラスチック代替素材として採用されることが期待されています。

「私はプラスチックが必ずしも悪いものだとは思っていません。加工しやすく使いやすい、すばらしい素材です。ただ、製造するときや使い終えたあとのことが考慮されていないことが、現在のCO2排出やマイクロプラスチックの問題などを引き起こしているのだと感じます。アミカテラは、modo-cell®を普及させることで、原材料の面でも使用後についても環境の負荷を減らせるような社会づくりに貢献できると自負し、それを目指しています」

「自然のもので、自然の力で、自然に還す」というコンセプトのもとで開発されたmodo-cell®。サステナブルな循環型社会の実現のために、modo-cell®の活躍の場が広がります。