日本らしい付加価値でソーシャルインパクトを~「KDDI SUMMIT 2024」現地レポート
KDDIグループ最大級のビジネスイベント「KDDI SUMMIT 2024」を、2024年9月3日から4日にかけて虎ノ門ヒルズフォーラムとオンライン配信のハイブリッド形式で開催しました。
申込総数1万人を超える、多くの注目を集めた本イベントのテーマは「つながろう。創ろう。未来のために。」
通信とAIが実現する未来の可能性と、社会課題の解決を目指すさまざまな取り組みをご紹介しました。
● 「ソーシャルにインパクトを与える」髙橋社長が語ったこれからの日本の姿
KDDI SUMMIT 2024は満席の会場のなか、講演テーマにちなんで「生成AI」によって制作されたオープニングムービーにより幕が上がりました。
オープニングムービー
映像が流れたあと、KDDI 代表取締役社長CEO 髙橋 誠がステージに登場。
KDDI 代表取締役社長CEO 髙橋 誠
登壇早々、髙橋は世界が抱く日本への評価に「ネガティブバイアスがかかりすぎているのではないか」と疑問を呈します。
現在、日本は高齢化する先進世界の先頭を走っており、経済の多くの分野で最先端から遠ざかっているという評価を受けています。
しかしこれに対し髙橋は、「2050年の世界 見えない未来の考え方」(ヘイミシュ・マクレイ著、遠藤真美訳 日本経済新聞出版)を引用した前向きな展望を語りました。
「日本は先陣をきって高齢化社会に向き合っていく必要があるが、それは、決してネガティブなことではない。逆に、日本が世界の先行事例を作ることで、より良い世界を築くチカラとなる」(髙橋)
さらに、世界と日本の通信業界の違いについても「Japanese Value」の理念を中心に、次のように参加者へ語りかけます。
「他業界から通信事業に参入したり、通信事業者が他業界へ参入したりしているのは日本だけ。これほど付加価値を多く生み出せるような環境は日本しかない。こんなに面白い国はない。だからこそ、グローバルスタンダードをいち早く取り込んで、日本らしい付加価値を導入することが重要。いかに日本ならではの付加価値でソーシャルインパクトを与えることができるか。ぜひパートナーの皆さまと考えていきたい」(髙橋)
グローバルスタンダードに日本の付加価値をのせることでソーシャルインパクトを創出していく
KDDIは、付加価値創出のために通信と親和性のある複数の事業を展開し「サテライトグロース戦略」として推進しています。基調講演では、その具体取り組みについても触れました。
サテライトグロース戦略
サテライトグロース戦略の中心である5G、生成AI、データドリブンの取り組みについては、5Gネットワークの強化やStarlinkによる衛星とスマートフォンの直接通信、AIを活用したビジネスプラットフォーム「WAKONX(ワコンクロス)」の展開、AIデータセンターの拡充などを紹介。
また、少し先の未来にむけては「もっとお客さまに身近な会社になりたい。フィーチャーフォンの時代のようなお客さまとの接点を取り戻したい」と、目指す姿を語りました。
そのための取り組みとして明かされた構想が「LAWSON TOWN(ローソンタウン)」。
リテールテック導入による次世代モビリティの活用のほか、災害時の対策など、社会課題の解決も推進していく計画です。
「全国にあるローソンのリアル店舗とKDDIのデジタルのチカラを掛け合わせることで、高齢者社会や地方の課題を解決するようなソーシャルインパクトを起こすことができる。ひとつひとつ取り組んでいきたい」と意気込みを話します。
LAWSON TOWN
髙橋は最後に、あらゆるシーンに通信×AIが溶け込み新たな価値が生まれる時代に向けてKDDIはテクノロジーを通じたソーシャルインパクトの創出を目指していくこと、社会課題解決こそが新たなビジネスチャンスであることを改めて強調しました。
● イベントで最も注目を集めたテーマのひとつ、「生成AI」
基調講演の後半では、OpenAI Japan 合同会社 代表執行役社長 長﨑 忠雄さんが登壇。AI技術導入の迅速化と進化の速度の重要性を語りました。髙橋との対談のなかでは、「AIは、トライアンドエラーで使うたびに自分の能力も上がる。ぜひ我々のフロンティアモデルを実際に使って体験していただきたい」と訴えました。
OpenAI Japan 合同会社 代表執行役社長 長﨑 忠雄さん
また最後に、「AIの活用は日々の生活を豊かにするだけではなく、AIと一緒に生活することで社会課題を解決できる。そういった世界をつくりたい。KDDIのようなパートナーと一緒に実現したい」とKDDIとの共創へ期待感を示しました。
OpenAI Japan 合同会社 長﨑 忠雄さん(右)とKDDI 髙橋 誠(左)
ほかにも、数多くのAI関連のセッションや展示が展開され、なかでも注目を集めたのは生成AI技術の体験デモでした。
株式会社ELYZAの独自LLM(大規模言語モデル)*1 を組み込み複雑な言語タスクが実行可能なチャット画面や、株式会社フライウィールのデータ活用アシスタント「Conata Data Agent」など、最新の生成AI技術を多くのお客さまに体験いただきました。
*1:LLM(大規模言語モデル):膨大な量のテキストデータを学習して、人間の言葉を理解し使うことができるAI技術のこと。この技術は、質問への回答、翻訳、文章の生成など非常に複雑な言語タスクまで行うことができる。ChatGPTやGPTモデルなどが有名な例。
また、2日目の午後に行われたスペシャルセッション「AIによって飛躍的に拡がる事業の可能性」ではKDDI 取締役執行役員常務 CDO 先端技術統括本部長 兼 先端技術企画本部長 松田 浩路が、ゲストにWeights & Biases Japan カントリーマネージャー シバタ アキラさんをお迎えしたセッションを展開。通信とAIを掛け合わせることで社会課題解決を加速させていくことができると話し、KDDIがAIを取り組む意義を「通信とAIのサービス展開の考え方は非常に類似しており親和性も高い。これまで社会インフラである通信を提供してきた事業者として、AIでも同じようにその役割を担っていきたい」と説明しました。
Weights & Biases Japan カントリーマネージャー シバタ アキラさん(右)とKDDI 取締役執行役員常務 CDO 先端技術統括本部長 兼 先端技術企画本部長 松田 浩路(左)
● 日本の価値にグローバルスタンダードを取り入れ融合する。「和魂洋才」から生まれた新ブランド「WAKONX(ワコンクロス)」
この2日間で開催された多くのセッションのなかでも、大きな盛り上がりを見せたのはKDDI BUSINESSの新ブランド「WAKONX」に関する取り組みでした。
※ WAKONXについて詳しくはこちら
WAKONX のコンセプト
WAKONXは、日本のデジタル化をスピードアップさせることを目指したブランドであり、AI時代のビジネスプラットフォームです。
しかし、法人事業領域を統括するKDDI 代表取締役執行役員副社長 ビジネス事業本部長 桑原 康明は、「デジタル化を加速させることだけで終わらせてはいけない」と話します。
「世界各国の素晴らしいところと日本の価値を調和し発展させること、つまり『和魂洋才』の考えこそが日本の勝ち筋であり、WAKONXの語源。デジタル化に加えて日本の勝ち筋を作っていくことを目指していきたい」とWAKONXに込めた思いを熱く説明しました。
KDDI 代表取締役執行役員副社長 ビジネス事業本部長 桑原 康明
KDDIが業界課題、社会課題として掲げた6つの重要領域であるMobility、Retail、Logistics、Broadcast、Smart City、BPOそれぞれに焦点を当てた展示やセッションも行われ、各セッションを通じて、WAKONXが提供していく多様なソリューションとその可能性が伝えられました。
なかでも、基調講演で「グローバルにおける生成AIの活用先一丁目一番地である」と紹介されたBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)に関連するセッションでは、国内の最大規模のコールセンター事業を手掛けるアルティウスリンク株式会社 上席執行役員 CDO 佐々木 亨さんが登壇。「未来のCXを支えるデータ基盤~データドリブンで新たなCXを創出~」と題し、アルティウスリンクにおけるAI活用を紹介しました。
佐々木CDOは、「顧客接点、応対業務から後処理まで、オペレーターの品質評価やトレーニング、そしてお客さまの声を分析するところまで、AI活用場面は非常に多い」と、AIとコールセンター業務の親和性を語りました。
アルティウスリンク株式会社 上席執行役員 CDO 佐々木 亨さん
● パーソナル領域でもAIによってお客さまの体験を変革させていく
2日目のオープニングスペシャルセッションでは、パーソナル領域を統括するKDDI 執行役員常務 パーソナル事業本部長 竹澤 浩が登壇。「通信とAIで創る新たな体験価値」と題し、お客さまの体験価値向上の取り組みについて次のように紹介しました。
「KDDIにとってお客さまに一番身近な接点であるスマホのオンデバイスでのAI体験は今後ますます加速していくと思われる。だからこそ、お客さまの生活を豊かにするAIスマホの普及を目指していく。さらに、お客さまとの接点として新たに加わった14,600店舗ものローソンのリアル店舗にもテクノロジーを備えていくことで、リアルとデジタル両面でお客さまに寄り添った新たな体験価値を提供していきたい」(竹澤)
KDDI 取締役執行役員常務 パーソナル事業本部長 竹澤 浩
さらには、未来人財の育成にむけた取り組みについて「日本人は自己肯定感が低い」という内閣府の調査データを挙げ、「未来を担う世代に対して、自己実現のお手伝いを通じて自信を持ってもらえるようサポートを行っていきたい」という熱意を明かします。若手アーティストやスポーツ選手など、多岐にわたる未来人財支援の取り組みを紹介しました。
未来人財の育成にむけた取り組み「RESPECT YOU, au」
● KDDIが描く「未来の街」と遊び心溢れる展示エリア
「未来の街」をコンセプトに、多岐にわたる分野の最新技術を披露するエリアが用意され、革新的な技術と未来の可能性を感じさせる展示に多くの来場者でにぎわいました。
来場者でにぎわう展示エリア
展示は8つのブーステーマに分類され、異なる切り口から未来を感じることができます。
展示エリアMAP
・ 革新的な進歩を遂げた3D点群データの圧縮技術
メタバース展示で注目を集めたのは、建設現場のDXを推進する3D点群データの圧縮技術でした。
LiDARスキャナーで生成される3D点群データは奥行き情報なども含めた立体的な情報を得られるため、測量用途などでの活用が進む一方で、データ量が非常に多く転送に膨大な時間がかかることもあることが課題です。今回の展示では、衛星通信「Starlink」による通信エリア構築ソリューション「Satellite Mobile Link」と、KDDI総合研究所が開発した3D点群データのリアルタイムエンコーダーの組み合わせにより、撮影からデータ確認までに数時間かかっていた3D点群データの転送時間を、10秒以内まで大幅に短縮した実証実験の成果を紹介しました。
実際のデモ画面も紹介され、来場者からは驚きの声が上がっていました。
・ 最新ドローンの実物展示
KDDIが5月に資本業務提携を結んだ米SkydioのAIドローン「Skydio X10」の実物も展示されました。
Skydio X10は、高度なAI映像処理によりリアルタイムに空間を把握し、障害物を自動回避しながら安全な自律飛行が可能な機体です。さらに、可視光と赤外線を用いた「NightsSence」を搭載することにより、暗所・夜間でも自律飛行が可能となり、点検・監視・災害対応など幅広い分野での活用に期待が高まっています。
・ 「日本中どこにいてもつながらないがなくなるように。 」通信関連の展示も。
KDDIのコア技術である通信に関するさまざまな取り組みも数多く展示されました。
具体的には山間部の電波環境改善に役立つ「Satellite Mobile Link」や、通信品質No.1を実現するための5G新周波数 Sub6・ミリ波によるエリア構築の取り組み。さらには、ミリ波が届きづらいエリアでも、状況にあわせて反射方向を切り替えて電波を届ける「液晶メタサーフェス反射板」など、「日本中どこにいてもつながらないがなくなるように」を実現するための取り組みを多数紹介しました。
「液晶メタサーフェス反射板」の紹介パネル
さらに、災害対策の取り組みについても紹介。KDDIでは「365日、守るのが使命」というスローガンを掲げ、お客さまのライフラインである通信をいかに途絶えさせないか、万が一途絶えてしまった際にはいかに迅速に復旧させるかを追求し、さまざまな取り組みを行っています。
そのひとつであるKDDIで独自開発した、通信設備の早期復旧を支える災害対応システムが展示されました。
このシステムは、令和6年能登半島地震でのau復旧に実際に活用されたシステムで、気象・停電・道路の情報などを地図に一元可視化できることに加え、基地局停波状況のリアルタイム観測、ビッグデータを活用した基地局復旧優先順位の自動判定が可能です。
通信の復旧以外にも活用できるシステムであるため、今後社外にも展開していくことで、社会全体の災害対応の強化を目指しています。
・ 未来の買い物体験
休憩スペースのコーヒースタンドでは未来の買い物体験ができました。
生成AI(バーチャルヒューマン)と次世代暗号技術(顔認証システム)*2、ロボットプラットフォーム(配送ロボットとお掃除ロボット)の次世代技術を活用することで実現する購入体験が具現化されています。
*2:次世代暗号技術の実用化は2030年を予定しており、実際には今回の顔認証システムに入っていません
未来の買い物体験で出迎えるバーチャルヒューマン
生成AIを活用したバーチャルヒューマンによる商品提案などの簡単な対話の後、スマートフォンで商品を注文。顔認証による決済を済ませると、配送ロボットがユーザーのもとまで商品を届けてくれるという体験。ロボットの配送経路に稼働しているお掃除ロボットは、配送ロボットが動いている間はステーションで待機しているように調整され、スムーズな配送が実現しています。
配送ロボットが商品をお届け
● スタートアップ企業も集結。「MUGENLABO月次全体会」
MUGENLABO月次全体会では、AI関連の事業を展開しているスタートアップ6企業によるピッチが開催。
新たなビジネスモデルやテクノロジーを創出する事業アイディアが次々と披露され、質疑応答時間ではMUGENLABOのパートナー連合である大企業からの質問も活発に行われるなど、大いに盛り上がる会となりました。
ピッチに登壇した株式会社ログラス 代表取締役 CEO 布川 友也さん
質疑応答も盛り上がりをみせた
MUGENLABO月次全体会のあとには、デジタル庁 統括官 国民向けサービスグループ長 村上 敬亮さん、株式会社スペースデータ 代表取締役社長 佐藤 航陽さん、KDDI オープンイノベーション推進本部長 中馬 和彦、モデレーターにForbes JAPAN 執行役員 Web編集長 谷本 有香さんを迎えた豪華トークセッションが行われました。
株式会社スペースデータ 代表取締役社長 佐藤 航陽さん(左)、KDDI オープンイノベーション推進本部長 中馬 和彦(右)
トークセッションは「スタートアップと切り拓く日本の未来」と題し、国際競争力復権にむけたヒントが話され、参加者からは「まるでよく推敲された雑誌の記事のライブ版を見ているようでした」というコメントが寄せられるほど、濃い議論が交わされました。
Forbes JAPAN 執行役員 Web編集長 谷本 有香さん(左)、デジタル庁 統括官 国民向けサービスグループ長 村上 敬亮さん(右)
● 「KDDIなら想像できる世界は実現できるのではないかと感じた」参加者からいただいた期待の声
KDDI SUMMIT 2024は基調講演で語られた「日本が世界をリードしていく」という髙橋の強い意思とともに、通信とAIが実現していく「誰もが思いを実現できる社会」の可能性を示し、未来への期待感を高めて幕を閉じました。
「最先端技術についての関心が大きかったが、それよりも『つなげる』ことへの強い思いを感じ、感動した。事業によっては大きな利益を得ることができないものもあるだろうが、利益よりも成し遂げたいことを判断の軸に置いているように感じ、本当にKDDIなら想像できる世界は実現できるのではないかと感じた」(参加者アンケートコメントより抜粋)
KDDIは、KDDI SUMMIT 2024でみなさまに感じていただいたご期待を超える社会の実現を目指して、これからも取り組みを加速していきます。