2023.4.28
先端技術に対する住民の理解を深める
都市と住民をつなぐ都市型連動空間メディア
今回の実証実験は、物流領域とデジタル領域の大きく2つに分かれています。このうちデジタル領域では、「ドローンの飛行経路(空の道)の可視化」「XRを用いた都市連動型空間メディアの構築」「Web3.0教育プログラム」をテーマに調査事業を行いました。
「XRを用いた都市連動型空間メディアの構築」では、つくばセンター広場に50年後のつくば市をイメージしたARコンテンツを設置。スマートフォンをかざすと、その様子が見られるようにしました。
「都市のパブリックスペースにXR技術を使ってコンテンツを配置できるようにすることで、その場所の価値が高まるとともに、都市と住民の生活がつながっていくのに役立つと考えています。物理的な制限がない仮想的なレイヤーを実空間に重ね合わせるので、自治体や企業だけでなく、一般の市民が利用してもいいわけです。例えば、筑波大学には芸術系の学群もありますので、街中の空間を使ってXRのパブリックアートを作品づくりしてもいい。こうしたことが街の活性化にもつながればいいと思います。今回の実証では、スーパーシティでのパブリックスペースの新たな活用によりどういった課題が発生しうるのか、今後どのようなルールが必要となるのかなどの論点も整理しています」と話すのは、KDDI株式会社 事業創造本部Web3推進部の川本大功です。
「Web3.0教育プログラム」は、筑波大学と共同で行われたものです。Web3.0とは、ブロックチェーン技術を生かした分散型のインターネットサービスのことで、インターネットの新たなかたちとしていま注目を集めています。
「先に触れた空間メディアとXRを利用した作品も、ブロックチェーンの技術を使うことで、展示した作品にNFTを付与し販売を行う、二次流通させるといったことができるようになります。私は、市民が新しいテクノロジーを使い、自らの手で都市をハックすることが都市の活性化につながると考えています。そのテクノロジーを理解し、使いこなしてもらうためのサポートをしたいという思いから行っているのが『Web3.0教育プログラム』です」
ドローンの飛行経路(空の道)の可視化
XR技術は、物流領域で実証している「ドローンによるPCR検体の輸送」でも活用されています。
「モノを運搬するドローンはサイズも音も大きく、住民の皆さまからするとドローンが自分の上を飛んでいたら、とても怖い存在だと感じてしまうこともあると思います。街中でドローンが飛んでいても、どんな目的で飛んでいて、どこからどこへ飛んでいくのかも分かりません。そこでXR技術を使って、スマートフォンをかざすことでドローンの飛行ルートを実空間に重ね合わせ、視覚的にわかるように空路を可視化しました。 “空の道”を可視化することで、ドローンの自動運転に対する住民の皆さまの安心感を高め、理解を深めてもらうことが大切だと考えています」
今回はドローンの実際の運行計画と連携してコンテンツが設計されている点が大きなポイントになっています。また、航路だけではなく、ドローン飛行時をお知らせする仕組みも搭載しました。
「具体的には、ドローンの通過時には標識が赤色に変わり注意を促します。ただ、ドローンの運航計画は当日の天候や条件によってコースなどが変更されることもありえるため、今後はそうした場合でもすぐにコンテンツに反映できるようにしたいと考えています。今回の実証実験から改めて街中で活用いただくために必要な着眼点を得ることで、社会実装に近づけていきたいと思っています」
技術はもちろんのこと、市民の皆さんが先端技術を自然に受け入れ、その恩恵を享受できる仕組みを考えていくことも、KDDIの大きな役割です。