つなぐチカラ

「Starlink」を活用した車載型・可搬型基地局で一刻も早い復旧を目指す

2023年3月2日に実施した「2023 KDDI災害対策訓練」では、新たな技術を使った災害対策の取り組みを公開しました。今回はその中でも、衛星ブロードバンドStarlinkの活用でつながりやすさと機動力がアップした車載型・可搬型基地局について詳しくご紹介します。

車載型・可搬型基地局は何がきっかけで誕生し、どんな進化を遂げ、これから被災地の通信復旧の現場をどのように変えていくのでしょうか。

●携帯電話の普及がきっかけで誕生した車載型基地局

車載型基地局が登場したのは2006年と、実は比較的、最近のこと。パケット定額プランの普及や携帯電話の高機能化によって、携帯電話が暮らしに密着した存在になってきたことが背景にあったとネットワーク強靭化推進室 エキスパートの川瀬俊哉は話します。

「携帯電話が普及する前は、携帯電話が使えるようになるまでに1週間程度かかることもありました。当時は壊れた基地局自体を修理していたのですが、救助や現場の検証が優先なので、現場入りの許可が出るのに時間がかかっていたのです。しかし、携帯電話が身近になるにつれて 早期の通信復旧の必要性が高まり登場したのが車載基地局でした」

壊れた基地局の代わりを応急的に務める車載基地局の登場で、通信が途絶したエリアの復旧は劇的に早くなりました。

「車載基地局のおかげで、被災地に到着してからおよそ半日から1日ほどで再び通信を使えるようになりました。今では早ければ1〜2時間で復旧が可能です」

●Starlinkの活用で、さらに機動力の高い災害対策を

被災地での迅速な通信の復旧とつながりやすさを目指して、衛星ブロードバンドStarlinkの活用も進んでいます。

Starlinkのアンテナを組み立てる様子(2023 KDDI災害対策訓練にて)Starlinkのアンテナを組み立てる様子(2023 KDDI災害対策訓練にて)

Starlinkはアンテナが小型軽量で運びやすく、短時間での設置が可能です。空が開けている場所であれば通信できるため、被災地での迅速な通信復旧が見込めます。

「これまで被災地で暫定的に復旧した基地局では、安否確認や110番通報など、必要最低限の通信にとどまっていました。Starlinkを使うことで、動画を視聴できるくらいの大容量通信が可能になるので、避難生活の中でもより多くの情報が得られるようになります」

Starlinkはまた、人が背負って運ぶ「可搬型基地局」の小型化、簡素化にも大きく貢献しています。

Starlinkのアンテナを背負って運ぶ様子(2023 KDDI災害対策訓練にて)Starlinkのアンテナを背負って運ぶ様子(2023 KDDI災害対策訓練にて)

Starlinkの機材は、これまでの衛星通信の機材と比べて、大きさ約5分の2、重さ約7分の1と大幅に小型化されています。これを可搬型基地局に採用することで、機動力を高めることができると川瀬は話します。


「可搬型基地局の小型軽量化が進めば、車載型基地局では行けなかった場所にも背負っていけるようになります。また、これまで2時間くらいかかっていた設営時間も、2〜30分に短縮されるので、通信復旧の機動力は大幅に向上するはずです」

2023年7月からStarlinkの活用もスタートし、2023年度末までに船舶型基地局も含め、Starlinkをバックホール回線として利用する車載型基地局と可搬型基地局を約200台、全国に導入します。

●東日本大震災をきっかけに機材の最新化・小型軽量化が進む

誕生から17年を経て、車載基地局のサイズも 大きな進化を遂げています。2006年当時の車載基地局は8トントラックくらいの大きさでしたが、現在、最も小さい車載基地局は軽自動車サイズまで小型化が進んでいます。

これまでに導入してきた車載型基地局が並ぶ(2023 KDDI災害対策訓練にて)これまでに導入してきた車載型基地局が並ぶ(2023 KDDI災害対策訓練にて)

車載基地局の小型軽量化が進んだ背景には、東日本大震災の経験があると川瀬は振り返ります。

「『もっと小型なら通れるのに』『もっと軽ければ早く運べるのに』『もっと設置や手順が簡略化すれば、より早く通信を復旧できるのに』。被災地では幾度となくこう思うことがあり、そこから車載基地局の機材の最新化・小型軽量化が加速しました」



一刻も早く、通信が途絶した被災地に快適な通信環境を届けるために。KDDIの挑戦は続きます。