2022/10/20

2020年7月に発生した豪雨災害 基地局復旧作業の全記録

  • ゲンバダマシイ
  • SDGs

近年増えている地震・台風・豪雨などの自然災害。そんな時にも通信をいち早く復旧できるよう、KDDIではどんな対応を行っているのか。2020年7月、熊本県を襲った豪雨災害を例に、その内容を紹介しよう。

2020年7月4日4時50分、気象庁が熊本県に大雨特別警報を発令。

令和2年7月豪雨により濁った熊本の河川

そのわずか1時間後には球磨川が氾濫。土砂崩れも発生した。その影響を受け、携帯電話基地局の電源や回線が喪失し、基地局が停波。災害での通信停止は、お客さまの命にかかわる危険性もある。

「お客さまの命のためにも、一秒でも早く、通信を復旧させるぞ!」

責任者が声を張り上げ、復旧チームがすぐさま現場に向かった。

令和2年7月豪雨によって土砂崩れが発生した道路

「道路が寸断されていて、これ以上先には進めそうにありません」

次々に上がる復旧チームからの報告は、現場責任者の頭を悩ませた。球磨川流域周辺では土砂崩れや道路の崩落によって、基地局に向かうのは困難だった。アンテナなどの通信に必要な設備をクルマに搭載した「車載型基地局」や、基地局の各設備を小型化して持ち運びができるようにした「可搬型基地局」を速やかに出動させた。復旧した地域もあったが、車で行ける範囲には限りがあり、一部の地域では、徒歩での移動も余儀なくされた。

令和2年7月豪雨による瓦礫道を歩く

この2020年7月の豪雨で停波したKDDIの基地局は、103局。その対応のために各地から集めた臨時の基地局(車載型基地局や可搬型基地局など)は、約80台。さらに停電対策として、移動電源車やポータブル発電機を46台配備した。

それら機材をもって、各々が復旧作業にあたっていく。被災地に充電設備や無料Wi-Fi設備を設置する者。瓦礫で車が通れないなか、重さ20kgのポータブル発電機を担ぎ、足元の不安定な山道を1時間半ほど歩いて基地局を目指す者。それぞれの持ち場で自分の役割を全うし、通信事業者としての責務を果たしていく。

令和2年7月豪雨で被災した方々の避難所

復旧にあたるなか、熊本県南部に位置する山江村や相良村など、土砂災害のため、徒歩で近づくことが危険な地域もあった。

令和2年7月豪雨による土砂崩れ

令和2年7月豪雨による土砂崩れ

「ヘリコプターから人員と物資だけを降下させることはできないでしょうか?」

無茶な要求ではあったが、KDDIは、災害時における協定を結んでいた陸上自衛隊西部方面隊に、ヘリコプターの出動を打診した。

KDDI九州総支社と陸上自衛隊西部方面隊のミーティング

もちろん、KDDI社員にヘリから降下したことがある経験者などいない。陸上自衛隊にも、未経験の通信技術者をヘリから降下させた経験などなかった。

だが、水が引いて、瓦礫が撤去されるのを待つことはできない。
過去に前例のない方法ではあったが、自衛隊の隊長も、近年の災害救助活動の経験から、被災地における通信の重要性を十分に理解していた。

「……わかりました。やってみましょう」

地上10〜15mの高さを飛ぶヘリコプター。KDDIの現地班4名が自衛隊員に抱き抱えられ、「孤立した地域のお客さまに電波を届ける」という1つの思いのもと、ヘリコプターから降下した。

自衛隊員から降下訓練を受けるKDDIスタッフ

当時、現場で復旧作業にあたった担当者はこう語る。

「私たちの仕事は通信環境を維持すること。今回の復旧では、陸上自衛隊西部方面隊や自治体の方々をはじめ、KDDIのさまざまな部門のスタッフと協力し合い、復旧対応にあたることができました。今後も、みなさんと連携しながら通信を守っていきます。」

毎年のように起こる自然災害。自然の大きな力に抗うことは容易ではないが、大災害が起こったときでも、通信があれば人々に「安心」を届けることができる。
だからこそ、少しでも早く通信を復旧できるよう、KDDIは災害にも強い通信ネットワークを構築し、通信を守り続ける。

※この記事は2020年8月25日の記事を再編集したものです。