一人ひとりが生き生きと働ける企業へ、KDDIが目指す社員エンゲージメントの向上
KDDIグループは、企業理念の中で「全従業員の物心両面の幸福を追求」することを掲げ、社員の働きやすい環境づくりに注力しています。2020年に策定した中期経営戦略でも、経営基盤強化のための主要テーマに「人財ファースト企業への変革」を盛り込み、取り組みを進めてきました。
具体的には「新人事制度の浸透」「KDDI版ジョブ型人事制度によるプロ人財育成」「社員エンゲージメントの向上」の三位一体改革に取り組んでいます。中でも社員エンゲージメントの向上に関しては、全社的なエンゲージメントサーベイの導入などによるデータドリブンな取り組みや、現場のアクションを後押しするような施策を行っています。
今回は、全社のエンゲージメント施策を主導している社員と、現場で実際にエンゲージメント向上に取り組み、高いスコアを維持する組織に所属する社員による座談会を実施し、それぞれの立場からの意見を聞きました。
● なぜKDDIはエンゲージメント向上に取り組むのか
―まず、ご自身の所属とエンゲージメント施策との関わりについてお聞かせください。
木川田: 人財開発部でグループリーダーをしています。全社のエンゲージメントを向上することをミッションに、社員一人ひとりが生き生きと働くことができるように、各組織へのサポートを行っています。
人事本部では、エンゲージメントサーベイをはじめとした勤怠や社員の専門性、スキルなどのHR関連データを基にして、人事制度や施策へとスピーディーに反映できる体制の構築にも取り組んでいます。
井上: 私は、auやUQ mobileといったKDDIにおけるモバイル事業の契約管理を行うシステムの開発や保守運用を担当している組織で、グループリーダーをしています。グループリーダーの立場から、全社的にうたっているエンゲージメント向上のためのアクションを現場に落とし込み、単に掛け声で終わらない取り組みを意識しています。
門出: 井上さんと同じ組織に所属し、主にシステムの要件定義を担当しています。日々の活動の中で、私自身やチームのメンバーが楽しく仕事できるようにサポートすることを心がけています。
―エンゲージメント向上によって目指すゴールを教えてください。
木川田: エンゲージメント向上に取り組む背景には、人財ファースト企業への変革というテーマがあります。これは、「人」という資本(リソース)を第一に考え、社外でも通用するプロ人財を育成・強化する取り組みです。それによって、挑戦心があふれる風土を醸成し、イノベーションの創出をすることで、社会の持続的成長への貢献を目指しています。
エンゲージメント向上では、人財ファースト企業への変革を通じて、一人ひとりが生き生きと楽しく働くことを重視しています。仕事の成果、自分自身の成長、やりがいを実感しながら働くことで、社員と会社がwin-winの関係性でともに成長することができると考えています。
その第1ステップとして、まずは現状を把握することが大切です。現状を把握することで、どのようなアクションをすべきかを考えることができるようになります。そのため、KDDIでは2019年11月から四半期ごとに「エンゲージメントサーベイ」を実施しています。
井上: エンゲージメントサーベイは、全社平均と自組織の結果を比較することで、組織の状態や強みを客観的に可視化することができており、現場にとっても非常に有効な情報だと感じています。
● キーワードは「主体的」―多忙な現場のアクションを後押しする仕組み
―エンゲージメントを高めていくために、必要なことは何でしょうか。
木川田: エンゲージメントサーベイは、社員の秘めた思いや考えなど、普段は目に見えないものや、把握しきれないものを可視化します。ただし、可視化されるデータは氷山の一角にすぎません。見えない部分を各現場で対話を通じて深堀し、改善に繋げていくことが必要です。人事本部では、その気付きのきっかけづくりや持続的な取り組みのサポートを行っています。
例えば、組織体制の変更や、業務負荷の高まりによって、エンゲージメントにネガティブな変化が生じることがあります。そういった一時的な要因に左右されないためには、日頃からの継続的なアクションが必要です。
とはいえ現場は各部署の業務に追われ、エンゲージメント向上のためのアクションに時間を割くのが難しいのが実状です。そこで、アクションの計画と実行をサポートするための「スコアギャップシート」や「マネジメント・インサイト」など、サーベイ結果の示唆を各組織リーダーへわかりやすく伝える施策を行っています。
「スコアギャップシート」では、20項目以上あるエンゲージメントを構成する要素について、全社平均と比較し、強みや弱みがどこにあるのか、前回からの変化点をまとめています。
「マネジメント・インサイト」では、エンゲージメントサーベイ結果や勤怠データに加え、各社員のスキル保持状況など、働き方や人財育成に関連するデータを1つにまとめて提供しています。点在するデータを一元化することで現場リーダーの負荷を減らし、関連性のあるデータを複合的に見ることで、気付きを得てもらう仕組みとしています。
井上: エンゲージメントサーベイの結果を見て一喜一憂するというよりも、サーベイ結果の各種要素と「マネジメント・インサイト」で得られる事実情報との相関をつかむことが、日々現場で行っていることの効果や課題をとらえる指標として、非常に有用だと考えています。
門出: エンゲージメントサーベイに回答すると、前回からの変化も見えるのがポイントですよね。「ああ、こういうときに自分はエンゲージメントが高まるのか」と自己分析的に使うことによって、主体的に業務へと取り組むきっかけになると感じています。
木川田: 門出さんが話したように、エンゲージメントにおいて重要なのは「主体的であること」です。エンゲージメントサーベイの結果を基に一人ひとりが、自分の状況や組織の状態をジブンゴトとして捉えられるようになればと考えています。
● 挑戦しやすい環境をつくる現場での主体的な取り組みとは
―基幹システム2部は全社の中でもエンゲージメントスコアが高い組織だと伺っています。働いている中で感じる組織の特徴や、どのような取り組みをしているのかお聞かせください。
井上: 個人的な考えとして、楽しむことで仕事の質が高まるという思いを持っています。そのため「エンゲージメントを高める」ことを目的にアクションするというよりも、「いかに楽しく仕事をできるか」この点を念頭に置いています。その上で重要だと考えているのがエンゲージメントの指標のひとつでもある「挑戦する風土の醸成」と「コミュニケーションの強化」です。
基幹システム2部では、与えられた仕事を「こなす」のではなく、小さいことでも何か変化や工夫といった挑戦を加えることでジブンゴト化し、担当業務に「やりがい、楽しさ」を持ってもらいたいと考えています。新しい大きなことを始めることだけが「挑戦」ではなく、例えばルーティン化された業務でも、業務効率化を実現するなど、自身が何らかの価値やプラスの変化を生み出す体験をすることで、別の業務でも「主体性」を持った行動につながっていくはずだという考えです。
「コミュニケーションの強化」についてはグループとして特に意識しており、個人的にも日々の会話や1on1で、メンバー間の支援状況やキャリアプランと現業務のつながりを気にかけるようにしています。
門出: 基幹システム2部が所属する情報システム本部には、「挑戦する風土の醸成」というテーマに直結する施策がありますね。「情シスラボ活動」という「誰でも挑戦できる環境づくり」を行っている施策です。これは「挑戦の機会が減っているのではないか」といった気付きもあって始まったそうです。
井上: この施策は「気負いせずに新しい技術にチャレンジできる環境をつくる」「実際に手を動かして仲間たちと切磋琢磨する」といった目標を掲げて、勉強やノウハウ、やってみて気付いたことなどのチャレンジ成果を発信する機会を提供しています。これにより、まだスキルを持っていない社員や、チャレンジするという行動から遠ざかっている社員であっても、積極的に挑戦していこうという雰囲気が醸成されやすくなっていると思います。
門出: 「コミュニケーションの強化」という観点では、基幹システム2部は本部の中でもコミュニケーション量が多いと感じています。特に井上さんは積極的にコミュニケーションをとることで、各メンバーのやりがいを上手に引き出されていると感じます。
木川田: エンゲージメントが高い組織の特徴の1つに「コミュニケーションの絶対量の多さ」があると考えています。何かに挑戦する際にお互いが声を掛け合ってサポートしたり、失敗したとしても「失敗はしたけど、そこに新たな気付きがあったから、目指すゴールには一歩近付いたよね」と認めあったりすることで、エンゲージメントや心理的安全性が高まっています。
井上: コミュニケーションは本当に重要だと考えています。いかに能力が高いメンバーが集まっていたとしても、コミュニケーションがなければ組織としては、強い組織とは言えないと思いますね。
コミュニケーションを活発にするために、私たちのグループではチームの構造改革も行いました。従来は1チーム当たりのメンバーが多く、リーダーが全員を見切れていないことがありました。そこで、チームを増やして1チームあたりのメンバー数を少なくしました。これによりメンバー間の距離が近くなり、会話や支援がより生まれるようになりました。
そのほかには「有識者マップ」というものも作っています。「この案件はこの人が詳しい」といったことを記していて、何かあったときに相談すべき「プロ」をまとめたものです。情報をまとめたことで、新入社員や配転者の「部の人数も多く誰に聞けば良いか分からない」という悩みを解消しただけでなく、組織内のコミュニケーションも生まれやすくなりました。
木川田: 相互理解や自己効力感が高まる良い仕組みですね。
● データドリブンな施策を強化して結果を生かしたアクションへ
―今後チャレンジしたいことや、お互いに対する要望などはありますか。
井上: ジョブ型人事制度が導入され、より社員の「個の力」が必要になっている中、それを足し合わせるだけでなく、掛け合わせることができるのが組織の良いところだと思います。万人受けする因子はないですが、気持ちが上がる因子は人それぞれに必ずあると考えており、それをみんなで共有しあえるような関係性を作っていきたいです。
組織としてもまったく同じ状態の組織というものはなく、画一的な向上策はないため、どの組織もトライ&エラーになると思います。そのため、人財開発部を中心にさまざまな施策が進んでいますが、統計情報だけでなく、パターンに応じたケーススタディなど、アクションを共有しやすい仕組みがあるとうれしいですね。それぞれの組織での成功事例を共有できれば、もっともっとつながりが生まれて強みも生かされていくはずです。
また、どうしても要素ごとの対策になりがちになるので、スコアパターンから組織の特徴や課題分析を示唆してくれるような仕組みがあるともっと良い環境になっていくのではないかと思います。
門出: やりがいやエンゲージメントを高める上では、周囲からの「感謝」が非常に重要だと思います。組織としても普段から「感謝」を言い合える環境にしていきたいですし、これが部署や本部の垣根を超えて、他の組織とも感謝し合えるような仕組みができるとうれしいです。
木川田: 貴重なご意見をありがとうございます。より一層サーベイの結果を生かしたアクションが生まれるような環境を作りたいです。具体的には、各組織でのトライ&エラーの事例共有に加えて、データドリブンな仕組みの強化に力を入れていきたいと考えています。
生成AIの台頭やDXの推進によって、データを活用しやすい環境が整ってきました。人事本部内にはHR専門のデータサイエンティストもおり、よりスピーディーかつ効果的なフィードバックを実現していきたいです。
KDDIはこれからも、社員一人ひとりが生き生きと働ける環境づくりの推進によって、「人財ファースト企業への変革」を進め、社員個人および会社を成長させていきます。それにより、さまざまなニーズに対して、期待を超える感動をお届けするサービスや、ソリューションを提供できる企業へと進化し、KDDI VISION 2030で掲げる「『つなぐチカラ』を進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる。」ことを目指します。