2023.1.19

物流専用ドローン「AirTruck」に託す、エアロネクスト社の思い、とは

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株式会社エアロネクスト 代表取締役CEO 田路圭輔さん株式会社エアロネクスト 代表取締役CEO 田路圭輔さん

KDDIスマートドローンのパートナーとして、地域でのドローン配送サービスの普及に力を注ぐエアロネクストは、次世代ドローン技術のスタートアップ企業です。設立は2017年。ドローンによる新市場の創出を目指しての起業だったと、創業者で代表取締役CEOの田路圭輔さんは振り返ります。

「多くの人と同じく、私にも空への憧れがありました。また、ドローンには人の能力・機能を拡張する技術としての魅力を感じています。そのことが、ドローンを使って新市場を創出したいという願いにつながり、その願いが、モノの『移動』にフォーカスを絞ったドローン技術を作り上げ、新しい物流の仕組みと市場を創出したいという思いにつながりました」(田路さん)

田路さんの熱意は、機体重心を最適化することで産業用ドローンの安定性、効率性、機動性を向上させる、独自の構造設計技術「4D GRAVITY」として実を結びました。それをACSL社にライセンスすることで物流専用ドローン「AirTruck」の開発・量産化に成功したのです。AirTruckは、4D GRAVITYの重心制御で荷物の揺れを抑えつつ安定した飛行を実現するほか「空力の最適化による高い飛行性能」や「ドローン上部から簡単に荷物が搭載できるなど、利用者の扱いやすさを考慮したUX(ユーザー体験)設計」などを特徴としています。

過疎地の物流にドローン配送が最適な理由

AirTruckの開発・量産化と並行して田路さんは、物流専用ドローン、ドローン配送の市場性を探るべく、700人弱の村に住み込み、毎日のように住人に向けた荷物のドローン配送を展開しました。結果として田路さんが至った結論は次のようなことです。

「人口が減少し、トラックドライバーも人手不足の中、ドローンを使った新しい物流市場は確実に存在しています。しかし、ドローン配送単独で事業化するのは難しく、地域の皆さんのニーズに応えることはできません。トラックを使った既存の物流とドローン配送を組み合わせ、いつでも、どこでもモノが届くようにする必要があると考えました」

この考えが、セイノーホールディングスとの次世代型物流プラットフォーム「SkyHub」の共同展開につながったと田路さんは話します。

「ドローン配送と陸上輸送を融合したスマート物流プラットフォームSkyHubを使うことで、SkyHubアプリをベースにした配達代行やオンデマンド配送、医薬品配送、異なる物流会社の荷物を一括して配送する共同配送など、地域の課題やニーズに合わせたサービスを展開、提供することが可能になります」(田路さん)

過疎地の常識や状況を、ドローンを使った新たな物流で変える

エアロネクストとKDDIスマートドローンとの協業は、新潟県阿賀町におけるSkyHubの実証実験をKDDIスマートドローンが支援したのが始まりです。

「この始まりは、非常に大きな出来事でした。というのも、ドローンは通信システムそのものであり、その市場を創り、拡大させるキープレイヤーはKDDIのようなキャリア以外にないと考えていたからです。KDDIグループの協業、共創の輪に加われたことで、エアロネクストだけではカバーし切れないような数の地域に対して、ドローン配送の価値を届け、それぞれの課題解決やイノベーションを実現できるようになったことは嬉しいかぎりです。KDDIグループとの協業によって、500自治体へのドローン配送の普及を実現するとの目標を立てましたが、それは十分に実現可能な数字です」と田路さんは語り、こう締めくくります。

「例えば過疎地では、日々の生活必需品を手に入れるために貴重な時間の多くを費やすのが当たり前というのが常識になっています。また、過疎地に住む高齢の方のために自治体が財源を削って赤字のバスを走らせたり、地域の誰かが自分の身を削って車を走らせて買い物をサポートしたりしています。私の願いは、こうした過疎地の常識や状況を、ドローンを使った新たな物流によって一変させ、各地のサステナビリティを高めることです。その願いを、KDDIスマートドローンとの協業を通じて叶えていきます」

AirTruckの飛行イメージAirTruckの飛行イメージ
福井県敦賀市がエアロネクスト、スマートドローンツールズを使い展開しているドローン配送サービスの様子福井県敦賀市がエアロネクスト、スマートドローンツールズを使い展開しているドローン配送サービスの様子