2023.10.27

声でお問い合わせを受けてから迅速に回答するために—音声認識IVRシステム開発の舞台裏

  • デジタルデバイド解消

お客さまが声で伝えた困りごとを、お客さまセンターのシステムがリアルタイムで聞き取り、内容を判断して担当のコミュニケーターにつなぐ—。

このお客さまからのお問い合わせを、よりスムーズに解決するための仕組み「音声認識IVRシステム」は、お客さまが話し終わってから数秒で回答することを目指して設計されました。

「実はこの数秒の間に、裏にあるさまざまなシステムの間をデータが行ったり来たりして正しい答えを返しているんです」—。こう話すのは、KDDI DXシステム2部の内部利明です。

声のお問い合わせを受けてから迅速に回答するために

声でお問い合わせをしてから返事が戻ってくるまでの数秒の間、システムが行っている作業について、内部はこう説明します。

KDDI株式会社 技術統括本部 情報システム本部 DXシステム2部 内部利明KDDI株式会社 技術統括本部 情報システム本部 DXシステム2部 内部利明


「お客さまが声でお問い合わせをすると、まずシステム側で音声をテキストデータに変換します。次にこのテキストデータをマスクサーバに送ってお客さまの個人情報を削除し、お問い合わせの内容の判別と分類を行うシステムに送ります。ここで、『お問い合わせがどのカテゴリーに分類されるのか』という意図を分析し、解釈した上で適切なコミュニケーターつなぎます」(内部)

このプロセスを数秒で実行するためには、複数のシステムをいかにスムーズにつなぐのかがポイントだったとKDDI DXシステム2部の長谷川国広は振り返ります。

KDDI株式会社 技術統括本部 情報システム本部 DXシステム2部 長谷川国広KDDI株式会社 技術統括本部 情報システム本部 DXシステム2部 長谷川国広

「この仕組みは、お客さまの音声をリアルタイムで認識する仕組みも含めて全部で5つのシステムで構成され、そこにはSaaS(インターネットを通じて利用するサービス)も含まれています。このシステムとネットワークが一気通貫でスムーズに稼働するシステムを構築する必要がありました」(長谷川)

声によるお問い合わせは話し始めるまでの時間が人それぞれであったり、想定外の発話があったりすることから、いかに「システムが理解しやすい形で話してもらうようにするか」のチューニングも重要なポイントだったと内部は話します。

「ガイダンスで『⚪︎⚪︎とお話しください』とお伝えした時に、お客さまがどのようにお話になるかはある程度、想定していたのですが、PoC(サービスの実現可能性を探る実験)で試してみると、話す前に考える時間が長い人がいたり、話がなかなか終わらない人がいたりと想定外のことも少なくなかったんです」(内部)

発話周りのパラメーターを細かく調整したり、ガイダンスに発話の例を入れたりすることで、お客さまにとって違和感のない「声のお問い合わせ」が可能になりました。

一気通貫のシステム開発を支えたチームワーク

このプロジェクトは、全体の構成企画したNRIをはじめ、音声認識、IVR、自然言語解析といった各技術を提供する複数のパートナー企業の方々と協力して進めてきました。

KDDI DXシステム2部の金本広子は、コロナ禍で対面の打ち合わせが難しい中、各社のリーダー層の方々とは毎週、オンラインミーティングを行って意識合わせをしていたと振り返ります。

KDDI株式会社 技術統括本部 情報システム本部 DXシステム2部 金本広子KDDI株式会社 技術統括本部 情報システム本部 DXシステム2部 金本広子


「週2回、プロジェクト系と管理系のミーティングで進捗や課題を共有するとともに、実際にシステムを使うCS部門や開発部門のスタッフ、パートナー企業の方々を集めたミーティングも定期的に行っていました」(金本)

今回のシステムは、音声認識のテキスト化から顧客情報のマスク化、お問い合わせ内容の識別、コミュニケーターへの接続などを一気通貫で行う必要があったので、それぞれが担当する領域で認識のズレが起こらないよう、意識して密にコミュニケーションを図るようにしていたといいます。

「開発したものをすぐ、実際に使う部門に渡して試してもらい、そのフィードバックをもとに問題を解決していく、という形でプロジェクトを回していました。みんなが打ち合わせに参加していたからこそ、早く課題を発見でき、素早く対応できたと思っています」(金本)

その結果、社内で実利用を想定した問い合わせのテストでも、特に大きな問題が起こることなく、スムーズに本サービスに移行することができました。

新たな技術とチームワークで、お客さまの困りごとを素早く解決する。KDDIの挑戦は続きます。