2023.6.27
その新規事業は、子育て中のママの訴えから生まれた
事前予約可能で持ち出しできる、ベビーカーレンタルサービスを
「新規事業の企画を考えているとき、子育て中の妻がベビーカーのレンタルサービスが必要だと訴えてきたんです」
そう楽しげに語るのは、株式会社ジェイアール東日本企画jeki-X 部長 森 祐介さんです。
「子育て世帯は外出に多くの課題を抱えています。荷物が重かったり、エレベーターを探すのが大変だったり、身軽にお出かけしようと思っても途中で子供が寝てしまったり。商業施設でベビーカーを借りても、移動時には返さなければいけません。そこで、外出先で借りて、返すことが出来るベビーカーレンタルサービスが求められているのではと考えました」
森さんが企画を提出したJR東日本の新事業創造プログラム「ON1000 (オンセン) 」には1051件の応募があり、その中から3件が採択されました。そのひとつが駅を中心とした貸出箇所でベビーカーをレンタルできるサービス「ベビカル」です。
ベビカルの特徴は、当日を含む14日前から予約ができ、施設の外でも利用できるところです。長期レンタルサービスのような煩わしい手続きはなく、基本的には外出先で受け取って、元の場所に返却するだけです。貸出期間も1時間から最長7日間まで可能なため、外出から旅行までカバーできます。
ベビカルは2019年度中に実証実験をして事業化する計画でしたが、コロナ禍で一時中断を余儀なくされました。2021年4月のサービス開始に向けてスピード感を持って実現する必要があり、流用できるシステムを数多く持っていたKDDIとの協業が決まりました。
通信回線からデバイス、ソフトウェアまで一括で提供可能
KDDI ソリューション事業本部 ビジネスデザイン本部IoT営業推進部の原は、学生時代から女性に関する社会問題に関心があり、テクノロジーで課題を解決したいとの思いがありました。
「ベビカルの事業計画を聞いたとき、ぜひ協業したいと思いました。女性だからこそ、保育関連の課題を身近に感じているのかもしれません。KDDIは通信事業者なので、回線の提供から係留ポートの開発、クラウド、アプリ構築まで、すべてご提供できます。ベビカルの取り組みは特にKDDIの強みを発揮していると思います」
ベビカルのサービス実施までは何度もJR東日本グループとの話し合いやすり合わせを行いましたが、既存のシステムを組み合わせて構築したため、実質5か月という異例のスピードでのローンチを実現。現在ではJRの駅以外に、地下鉄や商業スポット、観光地など加盟店が全国に広がり、インバウンド需要にも応えるサービスになっています。
「サービスを開始してみると、お子さんの通院などにもよく利用されていることがわかりました。行楽でのご利用だけでなく、公共サービスとして無くてはならないお客さまもいらっしゃいます。今後はエリアマネジメントへの取組みや企業、自治体、観光協会との連携も行っていく予定です。誰もが移動をためらわないUniversal MaaS(ユニバーサル・マース)の実現を目指して行きます」(森さん)