2023.9.28
社会全体のカーボンニュートラル実現を目指して―志を同じくするパートナーとの協業が生んだイノベーション
サーバー冷却の消費電力削減で劇的な効果を実証した「液浸冷却システム」。この装置の開発にあたり、パートナーとして重要な役割を果たしたのが三菱重工とNECネッツエスアイです。
今回のプロジェクトでは、三菱重工が屋外に設置する外気冷却装置の開発、NECネッツエスアイが設備の構築と運用、保守の仕組みづくりを担当しました。
検証結果やデータ、見学を含めてオープンに
KDDI プラットフォーム技術部の加藤真人は、プロジェクトのパートナーを決める際に重視した点について、こう話します。
「“儲けようという気持ちはいったん脇に置いて、カーボンニュートラルに向けた新たな技術を広く普及させたい”という想いの強い企業とご一緒したいと思いました」(加藤)
志を同じくする心強いパートナーとともに開発した液浸冷却システムは、検証結果や検証データ、見学を含めてオープンにしており、カーボンニュートラルの実現を目指すさまざまな業種、業態の企業が見学に訪れています。
「特許に関わるところ以外は、基本的にオープンにしています。より多くの企業にこの装置の効果を知っていただいて、社会全体のカーボンニュートラルの早期実現に貢献したいと思っています」(加藤)
進む「実用化」に向けた検証
今回の実証実験は、実用化に向けた検証を行うという目的で実施しました。実証実験のポイントについて、三菱重工 カーボンニュートラル推進室の磯部勇介さんは次のように話します。
「技術的な課題は、前回のコンテナ型液浸冷却システムの実証実験で検証が済んでいるので、今回はより省エネ性能を高める方法と、より実運用に適した仕組みを検証しました。省エネ性能に関してはPUE値*1を1.1以下に、できれば前回の1.07を切るという目標のもと、冷却オイルの温度を見ながらうまくファンを回すなど、より全体最適を意識した制御を確立したところが1.05を達成したポイントです」(三菱重工 磯部さん)
*1 PUE値:データセンターの省エネ指数として知られる数値。1に近づくほど省エネ効果が高く、1.1を切ると驚異的といわれる。
NECネッツエスアイ 社会・環境ソリューション事業部の村田浩明さんは、液浸冷却システムを使ったデータセンターの実用化に向けて、いかに「システムを止めない」ための保守・運用プロセスを確立できるかが課題だったと振り返ります。
「既にある水冷や空冷のシステムを運用するのと同レベルの保守・運用の仕組みを、液浸冷却システムでも構築する必要があります。システムの障害時に運用に影響が及ばないよう予備システムに切り替えるための構成や、冷却オイルに浸かっているサーバーの保守検証が今回のポイントでした」(NECネッツエスアイ 村田さん)
企業文化や業種の壁を超えて一体感のあるプロジェクトに
今回のプロジェクトで印象深かったこととして3社が口をそろえるのは、業種や企業文化が異なる中で、次第に一体感のあるプロジェクトになっていったということでした。
「初めのうちは、それぞれの会社で使っている専門用語がわからなくて大変でした」(三菱重工 磯部さん)
しかし、PUE値1.07を目指すという共通の目標のもと、お互いの領域について学び、理解を深めていく中で一体感が生まれ、目標達成に向けたワンチームになれたといいます。
「他の業種の方々の仕事の仕方や考え方を知ることで、自分たちの仕事に対する発想もどんどん広がっていきました。『 そうか、こういうやり方もあるのか』という発見は参考になりましたし、とても楽しかったです」(NECネッツエスアイ 村田さん)
「業界を超えて集まったチームが一体となって目標に向かって進んでいく『オープンイノベーション』を、まさに体現したプロジェクトでした。それぞれのスキルを持ち寄って、新たな技術を生み出す場に立ち会えた喜びを実感しました」(三菱重工 磯部さん)
カーボンニュートラル実現に向けたワンチームでイノベーションを。KDDIはパートナーとともに新技術の開発・検証を進めます。