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通信設備の電力削減で脱炭素社会の実現を加速!KDDIグループ2040年度ネットゼロ達成へ

今を生きる私たちにとって、気候変動問題は誰もが直面する課題です。日本では2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を目指しています。
KDDIグループでは脱炭素社会の実現に向けた取り組みを加速させるべく、2024年5月に「カーボンニュートラル新方針」(新設2項目、達成前倒し2項目)を策定しました。策定に至った背景と具体的な施策、そしてKDDIグループが目指す未来について、最前線で現場に向き合う担当者に話を聞きました。

● 社会のインフラを担う企業として、脱炭素社会を牽引する責任

KDDIグループは社会のインフラを担う通信会社として、「かけがえのない地球を次世代に引き継ぐ」ことを掲げ、歩んできました。企業としての根幹を形成する「KDDI環境憲章」が策定されたのは2003年のこと。KDDI サステナビリティ企画部の兵田 聡が今日までの軌跡を語ります。

KDDI コーポレート統括本部 サステナビリティ経営推進本部 サステナビリティ企画部 カーボンニュートラル・環境グループリーダー 兵田 聡KDDI コーポレート統括本部 サステナビリティ経営推進本部 サステナビリティ企画部 カーボンニュートラル・環境グループリーダー 兵田 聡

「当時は産業廃棄物や不法投棄など、企業責任としてやるべきところからスタートしました。そこに脱炭素社会や循環型社会、生物多様性という観点が加わり、今日のような基本理念と行動指針に定められたのが2012年のことです」(兵田)

さらに世界的な環境意識の高まりを受け、KDDIがより一層取り組みを強化したのが2024年5月「カーボンニュートラル新方針」の発表でした。これにはICT産業全体のカーボンニュートラル実現のため、KDDIグループ全体で、気候変動の課題解決に向けて先陣を切らねばという意識があったといいます。

「KDDIグループにおける2023年度のCO2排出は約100万トンと大きいですが、脱炭素化に率先して取り組むことで、ICT産業そして日本におけるカーボンニュートラルに向けた取り組みの活性化にも貢献できるのではと考えています」(兵田)

● 2040年にネットゼロ達成を目指す意味

2024年現在、多くの国々はカーボンニュートラルにおける達成目標を2050年度と定めています。それに対して、KDDIグループは2040年度に「ネットゼロ達成」を掲げており、KDDI自身が排出するScope1、Scope2に加え、KDDIの事業活動に関連する自社以外の排出であるScope3を含む、サプライチェーン全体からのCO2排出量を実質ゼロにすることを新たな目標に設定しています。ここにはどのような意味が込められているのでしょうか。

サプライチェーン全体像サプライチェーン全体像

「目標を2050年度に定めれば、なりゆきで達成できてしまうかもしれません。しかし社内での議論を経つつ、環境問題について先行されている企業さまにヒアリングしたところ『2050年度ではもう遅い』という考えが共通していました。サステナビリティ経営に取り組み、社会や環境に支えられている当社も同じ姿勢を示していかなくてはと考え、2040年度での達成を目指す方針に定めました」(兵田)

KDDIグループでは最終的な目標を2040年度の「①KDDIグループネットゼロ達成」とし、その前段として、2030年度には「②KDDIグループカーボンニュートラル達成」と「③KDDI追加性再生可能エネルギー比率50%以上」の2点を達成、そして2025年度にはKDDIグループの海外現地法人である「④TELEHOUSE のデータセンターが使用する電力の100%を実質再生可能エネルギー由来の電力に切り替える」ことを目指す新目標を新たに策定しました。

新目標達成に向けたロードマップ新目標達成に向けたロードマップ

● 競争よりも協調を。企業・業界間を超えた連携を

「環境問題において、前提としてサプライチェーン全体での取り組みが重要です」と話すのは、KDDI 購買統括部の新谷 陽一郎です。主にScope3の削減目標につながるサプライチェーン連携、通信業界連携の担当者としてプロジェクトを率いています。

KDDI コーポレート統括本部 購買本部 購買統括部 サステナブル調達企画グループリーダー 新谷 陽一郎KDDI コーポレート統括本部 購買本部 購買統括部 サステナブル調達企画グループリーダー 新谷 陽一郎

サプライチェーンにおける連携では、第三者調査機関や通信業界で作成した指標を用いてアンケートをとり、その結果からScope1とScope2の可視化を促しています。

サプライチェーンにおける連携と並行して推し進めているのが業界連携です。「業界連携としては、他の大手通信企業の皆さまと協力してハンドブックや算定ツールを作成しています。それらを活用いただくことで、取引先企業さまにおいてもCO2排出量を可視化した上で削減目標を立てていただいています。最終的には、取引先企業さまのSBT認証 *1 の取得を目標に、ネットゼロ達成につなげていきたい考えです」(新谷)

*1:SBT認証とは、Science Based Targetsの頭文字を取った取り組み。パリ協定(世界の気温上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準に抑え、また1.5℃に抑えることを目指すもの)が求める水準と整合した、温室効果ガス排出削減目標のこと。5年~15年先を目標年として企業が設定する。

「連携することで将来的にはネットゼロを達成していくイメージを抱きながら、まずは目の前の課題をどのように解決すべきか模索している最中です。企業さまとの連携を深める中で、まだまだ意識改革が必要だと感じる場面もあります。そのため我々も説明会を実施したりメディアで積極的に発信したり、まずは『KDDIが本気で取り組もうとしている』ことを認知してもらうのがスタートだと考えています」(新谷)

● 責任ある行動としての交渉。エネルギー分野での達成を目指して

一方、既に目標達成が間近に迫るプロジェクトもあります。2025年度に目標達成を目指した「④TELEHOUSEのデータセンターが使用する電力の100%を再生可能エネルギー由来の電力に切り替え」は現時点にて順調に推進しており、2022年にはロンドン、2023年にはタイでCO2排出量実質ゼロのTELEHOUSEのデータセンターが開業しました。「③KDDI追加性再生可能エネルギー50%以上」の達成に向けて駒を進めています。

KDDIグループでは2023年に、太陽光発電によって自律的に電源を確保する「サステナブル基地局」の運用を開始。グループ企業のauリニューアブルエナジーでも再生可能エネルギーの発電・供給に力を入れており、既に全国各地でデータセンターへの電力供給が始まっています。

サステナブル基地局サステナブル基地局

KDDI カーボンニュートラル推進室長の市村 豪は、こうした取り組みを評価しながらも、制度面における課題があると説明しました。

KDDI コア技術統括本部 技術企画本部 カーボンニュートラル推進室長 市村 豪KDDI コア技術統括本部 技術企画本部 カーボンニュートラル推進室長 市村 豪

「電力が自由化されるまで、北海道から九州までの電力会社さんが一括管理していたため、一般的な企業は『電力を作って運ぶ』仕組みを詳しく知らないことが多いのです。そのため我々も、まずは自分たちの作った電力をどのように送電線で運んでもらい、データセンターに届けるかという仕組みと制度を十分に理解する必要があります。そして、その制度を理解した上で、交渉を進めていかなければならないのが難しい点ですね」(市村)

近年、自然エネルギーを活用した発電設備を事業者自らが設置するなど、小規模な電力施設は増加傾向にあります。旧来の制度は大きなターニングポイントを迎えていると市村は言います。

「再生可能エネルギーの普及は、電力会社さんと協力して進めていくものと捉えています。そのためには、我々がトップランナーとして電力会社さんに要望を伝える必要があると考えています。リクエストがなければ何も変わりません。責任ある行動として交渉していきたい考えです」(市村)

● みんなでゴールテープを切る未来へ

カーボンニュートラル達成について「ジブンゴト化」という言葉がキーワードだと、3人の担当者は口を揃えて言いました。

一人ひとりが意識をしなければ、20年後の未来は今と何も変わっていない可能性さえあります。そのために今、KDDIグループをはじめ業界全体で行動を起こし、環境問題をジブンゴト化させていく必要があるのです。KDDIグループはこれからも、カーボンニュートラルの推進を通じて、社会課題の解決を目指していきます。

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