2024.02.29
モビリティ×通信の可能性―KDDIの思い
2019年、自動車対自動車の出会い頭における事故は3万4807件、うち72.8%を占める信号なし交差点付近の事故は2万5,340件ありました。
しかし、現在の自動車のセンサーでは、死角に潜む危険を検知することが、難しい場面も少なくないといわれています。
そこで、トヨタ自動車とKDDIは、「交通事故防止」を目的として、本機能の開発に乗り出しました。
仕組みは、とてもシンプルなものです。
まず、自動車や自転車などに、本機能を搭載したスマートフォンを備え付けて、スマートフォンから取得できる位置情報をトラッキングサーバーへ定期的にアップロードします。
そして、見通しの悪い交差点付近などで自動車や自転車が接近することをサーバーが予測し、ぶつかるリスクの高い車両を検知したときに、該当する運転手のスマートフォンへすぐに自動通知するという仕組みです。
運転手は、交差点の死角に隠れている車両の存在を、音声やバイブレーションでの通知で事前に把握し、より安全に運転することができます。
コロナ禍での「新たな社会課題」を解決したい
本機能の開発への思いを、KDDI 社会実装推進部 黒澤研吾はこう語ります。
「自動車や自転車はもちろんですが、原付や電動キックボードなど、新しいものも含めてあらゆるモビリティとモバイル通信を掛け合わせることで、社会に役立つ技術を開発したいと思っています」
2020年、世界は新型コロナウイルス感染拡大の危機に直面し、多くの人々が自宅で過ごすようになりました。
巣ごもりが長引くなかでもより便利に快適に暮らしたい、不特定多数の人との接触を避けて安全に過ごしたいというニーズが高まって、オンラインでの物品購入やデリバリーサービスの利用は一気に増えました。
しかし、これに伴ってギグワーカー*1の自転車による事故も増加し、新たな社会課題としてクローズアップされるようになったのです。
「私自身、休日に歩道を歩いているとき、勢いよく駆け抜けていく自転車にヒヤリとしたことがあります。自動車を運転している人たちからすると、さらに危なく感じるのではないかと思いました。私たちは、そういった事故をどうにかして減らしたい、新たな社会課題を解決したいという思いで、開発を進めています」
*1:雇用関係を結ばずに単発の仕事やプロジェクトを個人で請け負う労働者のこと
事故を防止するための“運転中のスマホ活用”
これから本機能は、社会実装を目指していくフェーズに入ります。
ここで鍵になるのは「普及率」だと考えています。
「サービス化するときは、初期段階から一気に広く普及させる必要があります。というのも本機能は、一定のユーザー数がいなければ、そもそも遭遇する確率が上がらないため、運転中に適切なタイミングで自動通知を受け取るユーザー体験も、得にくくなってしまうからです」
それならば、位置情報取得デバイスとしても、自動通知デバイスとしても、すでに広く普及しているスマートフォンを活用するのが最適だろう、と私たちは着目しました。
しかし、“運転中のスマホ活用”は、新たなチャレンジでもあります。
道路交通法を読み込み、さまざまなパートナー企業の皆様とも意見交換しながら、合法かつ安全で、すでに普及しているカーナビのように運転手が使いやすいユーザビリティを重要視しながら、開発を進めています。
「また、スマートフォンを活用する以外にも、日本交通や出前館のようなモビリティを利用する事業者様の業務アプリケーションとの連携も視野に入れて、機能開発を進めていくことが重要になると思います」
今後も、たくさんの方にご利用いただけるよう、改善を重ねてまいります。