2023.12.20

キャッシュレス支払いの選択肢拡大―両備ホールディングス

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スマホタッチ支払いは、キャッシュレス支払いの新たな選択肢

岡山県を本拠とする両備グループの交通・運輸部門の中核企業である両備ホールディングスでは、傘下の両備バスカンパニーで高速バス、空港リムジンバス、路線バス、特定バス、貸切・観光バス、定期観光バスなどの事業を展開しています。このうちの「玉野渋川特急線」およびグループ会社の中国バスが運行している「大門線」の2つのバス路線において、2023年10月よりスマホタッチ支払いの実証実験が始まりました。

実は両備ホールディングスではすでに交通系ICカードシステムを導入し、キャッシュレスの乗車料金支払いに対応しています。それでもなお、あえて今回の実証実験に踏み切った背景にはどんな狙いがあったのでしょうか。

両備ホールディングスの平本清志さんは、「コロナ禍がきっかけとなり人の移動が減少し、乗客数が低迷しました。この状況下でいかにして持続的な収益を確保していくのか。既存のICカードシステムもいずれは機器のリプレースやリソースの増強が必要となることは明らかで、今の枠組みのままで維持し続けることができるのかという懸念があります。一方、コロナ禍で失ったお客さまを取り戻すためには、サービス面でのさらなる向上や進化を図っていく必要があります。こうした課題解決のために、キャッシュレス支払いの選択肢を増やしたいと考え、スマホタッチ支払いの実証実験にチャレンジすることになりました」と話します。

両備ホールディングス株式会社 バスユニット統括カンパニー 乗合バス統括部長/両備バスカンパニー 副カンパニー長 平本清志さん両備ホールディングス株式会社 バスユニット統括カンパニー 乗合バス統括部長/両備バスカンパニー 副カンパニー長 平本清志さん

時間帯や曜日ごとに異なる乗客の多様な利用シーンを検証

今回の実証実験で選定された玉野渋川特急線は、岡山駅から玉野市の宇野港、渋川を経てテーマパーク「おもちゃ王国」に至るバス路線です。

「この路線は朝夕の時間帯は岡山市・玉野市双方への通勤・通学客が中心となりますが、宇野港からアートで有名な直島に向かう観光客も多く、時間帯や曜日ごとに異なるお客さまの多様な利用シーンを検証することができます。また、特急バスであることから停留所間の間隔が離れているため、お客さまの乗降傾向などを分析しやすいと考えたことも、この路線を選んだ理由の一つです」(平本さん)

実証実験は現在も進行中であるため、まだ具体的な評価を下せる段階にはありませんが、両備ホールディングスではポジティブな手応えを感じています。

「思っていた以上にスムーズにお客さまにサービスをご利用いただいており、『事前チャージが不要なタッチ支払い』という新たな体験を提供することができました。両替やチャージといった現金の取り扱いが減ることで乗務員の手間も軽減できるのではないかという期待もあります」(平本さん)

将来的には定期券の対応のほか、他業種と連携したキャッシュレス決済への構想も描くなど、両備ホールディングスはスマホタッチ支払いのさらなる活用シーンの拡大に向けた期待を膨らませています。