2024.02.09

「“支援”ではなく、“協力“していきたい」 KDDI財団が続けてきた国際協力事業

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KDDI財団は、公益財団法人として「国際的な視野のもと、わが国の内外において、ICT(情報通信技術)の恩恵を広く社会に還元し、ICTによる世界の調和ある健全な発展に寄与します」を基本理念に活動してきました。事業の柱の1つに「国際協力事業」があり、開発途上国においてICTを核としたハード・ソフト両面での支援を実施。また、開発途上国の持続的な発展に貢献するために、海外人材育成、デジタル・デバイド解消プロジェクトなど技術面での支援、パソコンや英語教室の企画・実施やKDDIスクール建設などの教育支援、カンボジア伝統芸能継承の文化支援を実施しています。

「財団の歴史をさかのぼると、前身の組織は1974年に設立されました。当時はKDD(国際電信電話)が国際通信専業事業者であったことから途上国支援には強い思いを持って取り組んでいました。その思いは50年が経過し、組織が変わった今も受け継ぎ、ICTの利活用を通じてSDGsなどの実現に向けて取り組んでいます」(KDDI財団 井上正純)

公益財団法人KDDI財団 井上正純公益財団法人KDDI財団 井上正純

現在の形での途上国教育文化支援は、2005年にカンボジアで始まり、2014年からミャンマー、2019年からネパールと、3カ国に広がりました。

カンボジアでは「KDDIスクール」をこれまでに13校建設し、義務教育を受けやすい環境を整備しました。さらにパソコンや英語の課外授業、不定期で美術などの情操教育も行っています。また、ミャンマーでもパソコン、音楽、美術教育などを実施。ネパールではロボットプログラミング教育や視聴覚障がいのある生徒へのデジタル教材の提供にも取り組んでいます。
これからも長期的な国際協力関係を築くために取り組みを行っていきます。

20周年を迎えたチャリティーコンサートのきっかけ

こうした途上国教育文化支援を支える1つの活動が、「チャリティーコンサートクラシック」です。2024年の開催で20周年を迎えます。

「2005年にKDDI財団の前身である組織の30周年事業として講演会とチャリティーコンサートを企画しましたが、収益金の使途は決まっていませんでした。その講演会に登壇した方がジャーナリストでNGO『World Assistance for Cambodia』の創設者でもあるバーナード・クリッシャーさんでした。カンボジアの教育の実態などを話してくださったのがきっかけで、コンサートの収益金を使って学校を作ることになり、それから途上国支援のためのチャリティーコンサートという形で毎年実施する運びになりました」(KDDI財団 大坂智子)

公益財団法人KDDI財団 大坂智子公益財団法人KDDI財団 大坂智子

収益金は全てカンボジア、ミャンマー、ネパールの子どもたちの教育のために使われますが、KDDI財団から一方的に支援内容を決めることはないと大坂は話します。

「支援の内容については、現地の方と必ず打ち合わせを行い、現地のニーズとこちらができる協力内容をすり合わせたうえで決定しています。また、定期的に活動報告を受け、支援内容の充実を図るようにしています。」(大坂)

コンサートの会場には募金箱を設置しています。そこで集まった募金は「小さな美術スクール」の活動に充てられています。小さな美術スクールとの出会いは2012年、World Assistance for Cambodiaのチラシがきっかけでした。

「子どもたちや先生方の描いた絵が使われていて、コンサートのチラシに採用したいと考え、コンタクトを取ったところ快諾を得ました。それから長く協力の関係が続いています」(井上)

パートナーとともに協力関係を長く続けたい

もっと実用的な教育に資金を充ててはどうか。現地からはそんな声もありましたが、KDDI財団ではこれからも情操教育を含めた支援を継続していく方針です。職員たちが小さな美術スクールの創設者である笠原先生の思いに共感し、情操教育の必要性を理解しているからとKDDI財団の榊原守浩は話します。

「予算も職員も限られた活動ですが、途上国の支援活動は長く続けることが大事だという前提で、今後も現地のみなさんと対話し共に考えながら、双方が本当にやりたいことを続けていきたいです。小さな美術スクールについては、笠原先生ご自身がカンボジアの方の後継者を育て、思いを受け継いでいますので、これからも長く一緒に活動していきたいと思っています」(榊原)

公益財団法人KDDI財団 榊原守浩公益財団法人KDDI財団 榊原守浩

「小さな美術スクールでは孤児院や小学校での出張授業も行っていると知り、2015年からは遠く離れたKDDIスクールへも足を運んでいただいています。チャリティーコンサートのポスターをはじめ、財団広報誌の表紙などのほか、存続の危機にあった現地の伝統芸能を伝えるための絵本作りなどで協力をお願いしています」(井上)

KDDI財団の支援に対し、笠原先生はいつも感謝の言葉を口にするそうです。しかし、3人の職員は異口同音に、こう話します。

「私たちこそ、コンサートのポスター製作をはじめ、さまざまな場面で力を貸していただき、本当に感謝しています。だから“支援”しているつもりはなくて、“協力”の関係だと思っています」

ポスターの絵を描く子供たちポスターの絵を描く子供たち
チャリティーコンサートクラシック2024のポスターチャリティーコンサートクラシック2024のポスター