2024.02.28
社員の多様な働き方の実現とお客さまの安全を守るために―東日本旅客鉄道
白杖検知実証実験を進めている“WaaS共創コンソーシアム”は、東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)の呼びかけで集った会員企業が、アセット、データ、ノウハウ、連携の場の提供を行うための活動で、Well-beingな社会の実現に向けて、移動×空間価値の向上を目指しています。
人口減少、働き方の変化やネット社会の進展、自動運転技術の実用化等により、鉄道の移動ニーズが縮小している現実があるなか、鉄道業界を持続的に発展させたいという思いをJR東日本 イノベーション戦略本部の髙安英子さんは説明します。
「仕事を通じた働きがいの創出や、労働条件の向上、健康経営の推進など、JR東日本グループの社員が持続的に成長できる環境を整えることが、お客さまに安全に、安心して鉄道をご利用頂くサービスの提供につながります。日々お客さまに接している駅社員だからこそ、お客さまのご期待や、課題等を把握することが出来ます。お客さまのより近くで創意発揮が出来るよう、現業部門と企画部門間の業務体制の見直しが行われています。このような背景から、社員の多様な働き方を実現できるように、駅における改札業務のありかたを検討し、働き方改革を進めていく必要があります」
しかし、髙安さんは、駅社員の負担感が増している中でも、お客さまの安全に関わる仕事は、絶対に手を抜くことはできないと話します。
「白杖や車椅子をご利用のお客さまには、一人ひとりに合わせた対応が必要となります。改札窓口からホームまでお連れして、電車を一緒にお待ちし、安全にご乗車いただくまで見送るための人員を置くのも厳しい状況で、セントラル警備保障株式会社(以下、CSP)さまなどにも協力いただいて安全を守っています」
そこで2023年度の実証実験では、白杖を利用するお客さまが改札口に近づいたときに駅社員が通知を受け、そのときだけ駆けつけて対応できる仕組みの実現を目指しました。お客さまにとっても、駅社員を呼び出す負担が少なくなります。
通信状況が悪化しやすい環境下で白杖の高い検知率と安定性を確認
技術によって安全を守りながら、駅社員の多様な働き方を実現できないものかといった願いをかなえるための道筋は、課題を感じつつも白杖検知の実証実験で見えてきたようです。
「2022年度、23年度の実証実験は、実験実施エリアに白杖をご利用のお客さまが少なかったため模擬被験者で行いましたが、検知率はとても高く、安定していました。一方で、駅では多くのお客さまが行き交うため、サポートが必要な方が人影に隠れてしまいやすく、画像だけに頼る技術には限界があることも分かりました。コストや管理の負担を考慮しつつ、死角を作らないようにカメラの台数を増やすなどの取り組みが必要だと感じています」
5G/MEC環境を提供したKDDIに対しては、通信状況が悪くなりやすい駅において、適切に課題を解決したことを評価しています。
「列車には多いときには約3,000人のお客さまが乗車されており、非常に多くの方がスマートフォンを手にしていますので、駅到着時には実証環境の通信状況が大きく影響を受けることが分かりました。そのため、白杖検知などの安全対策以外でも、駅にさまざまなサービスを導入していく際に、安定した通信環境は必要不可欠だと考えています。お客さまの安心安全や駅社員の多様な働き方を実現するため、これからもKDDIによる、安定した通信環境の提供をはじめとしたご協力に期待をしています」
KDDIでは、これからもKDDIのケイパビリティである通信技術などの高い信頼性のある技術力を生かし、JR東日本さまの期待に応え続けていきます。そして、今回の取り組みにとどまらず、JR東日本さまやCSPさまをはじめとするパートナーさまと、より一層の協力体制を築き、KDDIが提供できる価値を拡大していくことで、さまざまな社会課題の解決に向けて取り組んでいきたいと考えています。