2024.02.28
AIによる画像解析システムを白杖検知に生かす―セントラル警備保障
セントラル警備保障株式会社(以下、CSP)では、AIによる画像解析システムを警備に利用するための、技術革新の取り組みを進めてきました。その1つが白杖検知の技術で、自律巡回警備ロボットへの搭載を実現し、JR高輪ゲートウェイ駅での実証実験も行いました。警備ロボット開発に携わるCSP 開発推進本部の佐藤光晴さんは、この技術の用途拡大への思いを次のように語ります。
「CSPでは、この技術を幅広く活用して社会課題の解決に貢献していきたいと考えており、今回の実証実験は今後の社会実装を進める上で大きな意義があると考えています。5G/MECの実装は、それまでのオンプレミス構成にはない、4つの大きな価値に期待しました」
佐藤さんが説明する5G/MEC の大きな価値とは、「駅社員の情報端末に早く情報が伝わる」「現場に高性能なデバイスを設置する必要がない」「MECのGPUリソースなどを利用した高度な分析処理が可能」「故障対応、バージョンアップなどのメンテナンスが簡単」の4つです。
・駅社員の情報端末に早く情報が伝わる
情報が早く伝わることで、適切な対応がしやすくなります。また、データの収集が早ければ、後続の処理に時間を割くことができ、より高度な解析や正確な判断が可能になります。
・現場に高性能なデバイスを設置する必要がない
現場に設置するデバイスは最小限で済むため、設置場所が増えた場合に作業量やコストを抑えることができます。
・MECのGPUリソースなどを利用した高度な分析処理が可能
AIでの高度な解析処理には、用意するサーバーの選定も重要です。オンプレミスのシステムでは調達や環境構築に時間がかかりますが、MECでは簡単な操作で必要とするスペックを選択することができ、解析処理の実装やチューニングといった本質的な作業に注力できます。
・故障対応、バージョンアップなどのメンテナンスが簡単
デバイスの設置場所が増えた場合でも、解析するためのMECを容易に追加することができるため、柔軟な拡張性があります。
佐藤さんは、「実証実験で活用したKDDIの5G/MECはAWS Wavelengthとして提供されています。そのため、使い慣れたAWSのユーザーインターフェースでリモートからメンテナンスできます」と、その使い勝手の良さにも価値を感じられています。
知見、技術、パートナーの連携で社会課題の解決を
佐藤さんは、2022年度における実証実験の成果をこう振り返ります。
「KDDIが提供する5G/MECを利用し、ホーム上の白杖をご利用のお客さまを正確性、即時性、安定性という観点で期待どおりに検知することに成功し、駅の安全性向上の可能性を確認することができました。また、期間中はカメラ映像を確実にMECに転送でき、5Gのスループットも安定していました。こうした点を実際の現場で確認できたことは大きな成果だと考えています」
一方、今後の大規模展開を見据えての課題も見つかりました。白杖と白いホームドアの色が似ており、場所ごとにチューニングを行って検知精度を向上させる必要があること、また、カメラ映像を全てMECに転送すると、データ量が大きいためネットワーク帯域を必要とすることです。
この結果を踏まえ、2023年度のJR立川駅での実証実験では、検知精度の向上を意識しました。カメラの設置位置が大きく異なることから精度低下が懸念されたため、AIモデルの追加学習で対応するとともに、カメラからMECに送る画像データを減らす処理を加えています。
「追加学習の効果もあり、おおむね期待したとおりの白杖検知ができるようになりました。誰もが安心してさらに快適に駅をご利用いただくためには、1つの技術や対策では解決が難しいことが少なくありません。CSPは日頃、駅構内の警備業務にもあたっているため、白杖をご利用のお客さまに限らず、さまざまなお客さまをサポートしてきました。その知見と新技術の開発、そしてさまざまなパートナーとの連携によって、社会課題の解決に取り組んでいきます」