2024.02.28
5G/MECを活用しさまざまな社会課題の解決へ
KDDIは、法人のお客さまのビジネスをよりよい形に変えるためのDXソリューションを提供するとともに、お客さまのソリューションを通した社会課題の解決を目指しています。新技術を用いた新しいユースケースの創出に取り組むKDDI DXサービス戦略部の渡辺裕介は、5GとMEC(Multi-access Edge Computing)の価値に着目していました。
「通信規格である5Gは高速・大容量、低遅延、多接続が特徴です。その5Gを介してデータ処理する中でリアルタイム性や応答性が求められる場合に有効なのが、ネットワークエッジ部分でデータを処理することが可能なMECです。デバイスと近い距離でデータ処理できるためその応答は低遅延で、さらにインターネット上ではなくKDDI網内なので外部ネットワークの影響を受けづらく品質が安定しています。さらにKDDIのMECはAWS Wavelengthとして提供しているため、AWS(Amazon Web Services)と同じ使い勝手なのも特徴です。これらの価値は幅広く、あらゆる業界の課題解決に活用できる可能性があると考えていました。そのうちの一つが、今回の白杖検知の実証実験です」(渡辺)
そこで、2022年度から5G/MECの価値検証を行い、これらの特徴が映像分析に適していることを確認した上で、まずはKDDI社内で簡単なPoCを実施しました。具体的なユースケースを探る中で、セントラル警備保障株式会社(以下、CSP)さまが警備ロボットに搭載している白杖検知の仕組みと、5G/MECの親和性に着目し、パートナーさまとの共創ビジネス開発拠点であるKDDI DIGITAL GATEにおいて、実現に向けた検討を進めました。
「KDDIが会員として参画している東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)さまの“WaaS*1共創コンソーシアム”にお取り次ぎいただき、活動テーマの1つとして『5Gによる白杖検知』の実証実験プロジェクトをスタートさせました。プロジェクトでの役割は、JR東日本さまが実証フィールドを用意し、CSPさまが白杖検知のAIプログラムをMEC上に構築しました。KDDIはMECとそこにアクセスするための5G環境を提供しています」と話すのは、KDDI ソフトウェア技術部 権瓶竹男です。
*1 WaaS(Well-being as a Service)とは、Well-beingな社会を実現する仕組みです。Well-beingな社会とは「みんなで選び みんなで創り みんなで育む ひととのつながりや協働を中心にした社会づくりができる世界のこと」です。WaaSの取り組み例としては、XR技術などを活用した観光活性ソリューション(JR原宿駅)やAI案内ロボット(JR高輪ゲートウェイ駅)などがあります。
さらに進化する5Gがユースケースを拡大していく
実証実験を通じて、駅の構造として、壁が厚くかつ入り組んでいるため、機器の設置場所によっては電波が届きにくいことがあることが分かりました。また、JR立川駅で実施した2023年度の実証実験でも新たな気付きや技術の可能性を感じたと権瓶は話します。
「机上で考えるのではなく実際に駅で観察してみると、その中には白杖以外にも杖を使う方、怪我をしている方や大きな荷物を持つ方など、さまざまなご事情を抱えていらっしゃる方が駅社員のサポートを受けておられることに気付きました。また、今後AIモデルが高度化して、お客さま一人ひとりに応じたサポートを実現できる可能性を感じました。5Gの技術は現時点で完成形ではなく、今後さらに安定性や信頼性を高めるための取り組みが進んでいます。今よりもユースケースは拡大するでしょう」(権瓶)
例えば、担い手不足が深刻な社会問題となっている建設業界では、機械やロボットの遠隔制御などで5Gの活用が期待されており、複数のパートナーさまとともに、実用化に向けた実証実験を進めています。
「MEC上でAIによる映像解析を実現することにより、モニター越しでは人間が気付けない危険を、ロボットが自動で回避するなどの機能の実現ができるかもしれません。映像を取得してリアルタイムにAIで分析し、低遅延でフィードバックするという今回の実験でのユースケースには広がりを感じています」(渡辺)
2度の実証実験を経てKDDIは、5G/MECのさらなる活用に手応えを感じており、JR東日本さま、CSPさまと協力し、駅利用者の方のさらなる安心安全をサポートする取り組みを考え、継続していきたいと考えています。また、このプロジェクトは駅の安心安全を支える駅社員の業務負担を軽減する取り組みでもあり、多様な働き方の実現にもつながっていくことでしょう。これからもKDDIは、誰もが思いを実現できる社会の実現に向け、さまざまなパートナーさまとともに、新たな価値創出を目指していきます。