2023.09.05
高速通信を待ち望む離島の方々の声が励みに—YUIにかけるNECの思い
沖縄の離島で快適な5G通信を実現するために敷設された光海底ケーブル「YUI」。このプロジェクトで、ケーブルの製造や海底の敷設工事を手がけたのが日本電気株式会社(NEC)です。
光海底ケーブルは、太平洋間や大西洋間、離島といった離れた場所をつなぎ、安定した高速大容量通信を提供するためのインフラとして長年、重要な役割を担っています。
そんな海底ケーブルの伝送容量は、この20年で大きな進化を遂げ、ケーブル1本あたりの伝送容量は今や100倍になっています。これは東京とロサンゼルス間をつなぐ1本の光海底ケーブルで、2時間の映画を1秒間に1万回送信できるほどの伝送容量です。
1964年に海底ケーブル事業に参入し、世界トップ3の一角を占めるシェアを誇るNECは、YUIプロジェクトの心強いパートナーとして、光海底ケーブルの敷設を担当しました。
珊瑚礁の海に海底ケーブルを引くために
光海底ケーブルは、海底の環境や地形によって敷設の方法が異なります。漁業活動が盛んな沿岸部では、船のアンカーや底引網の影響を受けても切れないよう頑丈な外装のケーブルを使い、深海部にいくほど軽量でしなりやすい無外装の細いケーブルを使います。
ケーブルは浮遊物の影響を受けないよう海底を這わせる形で設置するため、傾斜のある場所は避けるなど、工夫が必要だとNEC 海洋システム事業部門のマネージャーを務める村上 求さんは話します。
「海底ケーブルには、光ファイバーの中で減衰した光信号を増幅して送るための中継器が必要で、これがケーブルの一定間隔ごとに設置されています。中継器は平坦な場所に置くようにするなど、敷設の際には工夫しています」(村上さん)
海洋システム事業部門のマネージャーを務める江崎 圭さんは、沿岸部ではさらに海底にケーブルを埋めることで切断のリスクに備えていると説明します。ただ、YUIのルートには珊瑚礁が多く、ケーブルを埋めることができないエリアもありました。そのため、ケーブルを保護する鋳鉄防護管を被せて保護したといいます。
「岩礁でケーブルが傷つかないように、陸地に近いところから一定の距離のところまで、長さ30センチの鉄製の防護管を被せてそれをボルトで留めながらつなぎあわせてケーブルを保護しています」(江崎さん)
YUIプロジェクトが離島の方々の思いを知るきっかけに
村上さんは、このプロジェクトを通じて離島の方々のインターネットに期待する強い思いを実感できたと振り返ります。
それは、ケーブルを敷設するエリアのとある漁協の方々が、漁業に影響するのではと心配しており、説明に立ち会った時のことでした。
漁協の方々の話を聞いていてわかったのは、海底ケーブルの影響を不安に思いながらも、島の人々にとってインターネットがどれだけ大事な存在なのか、ビジネスに欠かせない存在なのかを理解してくれている、ということでした。
「コロナ禍の影響で外食産業が落ち込み、魚が売れなくなってしまった時にWeb販売を開始し、たまたま島に来ていたインフルエンサーが紹介してくれたおかげで、サーバがパンクするくらい注文が殺到したという話や、快適なリモートワーク環境があれば、子供たちが進学のために島を出ていかないかもしれないと思っている、という話をお聞きしました。この時、自分たちの仕事の重要性を改めて実感できました」(村上さん)
お互いに腹を割って話すことで、海底ケーブル敷設の交渉も成立し、現地の方々の通信に対する思いをじかに聞くことができたのは、とても印象深いできごとだったと村上さんは話します。
「ふだんは現地の方々の声を直接、お聞きする機会がないのですが、今回のプロジェクトを通じてリアルな声をお聞きしたことが、仕事をする上でとても励みになりました。これからも、使う人の気持ちに寄り添った仕事をしていきたいですね」(村上さん)