2023.09.05
離島エリアの5G品質の向上で、沖縄の産業に貢献する―沖縄セルラーの思い
多くの観光客が訪れる沖縄の石垣島、宮古島、久米島で5Gの本格展開が可能に—。2023年7月、沖縄セルラーが中心となって整備した光海底ケーブル「YUI*1」の敷設が完了し、運用がスタートしました。
*1 YUI:「Yarn Uniting Okinawa Islands」の略で、沖縄の島々を結ぶ糸(ケーブル)の意と方言の「ゆい(結い)」をかけあわせた愛称
スマートフォンは、無線基地局と電波でつながり、無線基地局が有線の光回線で交換局と結ばれることで、インターネットや電話を利用できるようになっています。
5Gは、4Gと比較して高速大容量の通信を実現する必要があるため、無線基地局と交換局をつなぐ光回線についても、高速大容量の通信を行える回線が必要となります。
陸続きの場所であれば、高速大容量通信に対応した光回線の敷設はさほどむずかしくありませんが、海に囲まれた場所では海底にケーブルを敷設する必要があり、陸上と比べて多くの手間とコストがかかります。
「YUI」プロジェクトの背景について、沖縄セルラー 技術本部の設備計画グループで主任を務める崎 樹生は、こう話します。
「私たちは沖縄に根差した通信キャリアとして、よりよい通信環境を提供することで沖縄の産業に貢献するという使命があります。離島で5G通信環境を構築するためには課題がありますが、まずは離島の中でも人口が多く、多くの観光客が訪れる石垣島、宮古島、久米島で、快適な5G通信を実現するため、この光海底ケーブルプロジェクトがスタートしました」
海底ケーブルをループ状につないだ理由
YUIは、高品質な5G通信の提供に加え、安定的なネットワークの提供も視野に入れて構築しています。その1つがループ構成の海底ケーブルです。
光海底ケーブルを沖縄本島と石垣島、宮古島、久米島を周回する形でループ状につなぐことで、回線の一部が断線しても高速大容量の通信を継続して使えるようにしています。
「沖縄は台風が多く、地震など自然災害のリスクもあるので、光海底ケーブルをループ状につないで切断時のリスクに備えています。この形状ならば仮にケーブルが切断しても、ループの反対側のルートにより高速大容量通信を維持できます。今や日々の暮らしにモバイル通信は欠かせないので、一刻も早い復旧のための仕組みとバックアップ体制は欠かせません」
このループ構成は、沖縄県とNTT西日本がそれぞれ保有する沖縄本島〜久米島間、宮古島〜石垣島間の既設海底ケーブルと、沖縄セルラーが中心となって新たに敷設した沖縄本島〜石垣島間、宮古島〜久米島間の光海底ケーブル「YUI」を円環状につなぐことで実現しています。
離島に快適な通信環境を届けるために
コロナ禍が終息し、沖縄の離島に賑わいが戻る中で始まった5G通信の品質向上は、観光業を営む人や島を訪れる人、そこで暮らす人にメリットをもたらすと、崎は話します。
「これからは石垣島、宮古島、久米島でも沖縄本島と変わらない快適な5G通信をご利用いただけるようになります」
一方で沖縄には38もの有人離島があり、こうしたエリアの品質向上が今後の課題となっています。
「光海底ケーブルは多額のコストがかかるので、そう簡単には敷設することができないのが実情です。昨今ではStarlinkなど衛星通信領域が進化しているので、期待を寄せています」
場所や環境に合った最適な方法で、高速大容量通信をお届けするために—。沖縄セルラーとKDDIは、これからも安定した5G通信の実現に取り組んでいきます。