2023.08.10
美しい景観と快適な5G通信の両立を目指す、KDDIの思い
基地局は設置場所ごとに工夫が必要
「5G通信で電波をお客さまの端末へ届けるためには、障害物の遮蔽が少ない場所を選び、そのエリアに適した基地局を設置しなければなりません。そのため一般的な5Gの基地局は、ビルの屋上や鉄塔、電柱などに設置されます」と話すのは、KDDI 技術統括本部 アクセス技術本部RANシステム設計部 無線設計グループの高橋順一です。
建物が密集する都市部では、ビルの屋上などに「ビル屋上設置型」基地局が設置され、半径約1~3キロのエリアでの通信を可能にします。また郊外では、見通しのよい場所の高さ20~50メートルの鉄塔に「鉄塔設置型」の基地局を設置し、半径約3~6キロのエリアでの通信を可能にします。加えて電柱の上部に小型基地局を設置することで、半径約200~500メートルの小規模なエリアをカバーすることもあります。
基地局に設置されるアンテナの形状も、「セクターアンテナ」「オムニアンテナ」「平面アンテナ」など配置エリアの状況に応じて使い分けられます。
快適な5G通信のために、設置するエリアごとに多様な基地局やアンテナが使われている基地局ですが、アンテナや設備が露出していることで、景観にマッチしないという理由から、容易に設置できないケースもしばしばあります。特に、市町村が定める景観地区では、周囲の景観を乱さないよう、建造物の高さ制限のほか店舗の看板や壁面のデザインおよび色彩について規定があったり、配慮が求められたりします。
「景観地区においては、従来基地局やアンテナの塗装やデザインを変更して周囲に溶け込むような工夫を行ってきました。また基地局の無線機とアンテナの距離を離すことで景観に影響がでないような対策も行ってきました。しかし5G通信は周波数帯が高く、無線機とアンテナの距離が離れることで無線信号の損失が増える傾向があるため、基本的に無線機とアンテナを近くに設置しなければならないという制約があります」(高橋)
景観地区だけでなく都市部でも生かされる「埋設型基地局」
この課題を解決する手段の一つとして生まれたのが、地中に基地局設備を設置するハンドホール型の「埋設型基地局」です。ハンドホールとは、人が手を入れられる小型サイズのマンホールのことを指します。
「2021年7月に、ハンドホール型の無線基地局を対象として、総務省の電波保護指針の新制度が施行されました。これを受けてKDDIは、2018年から埋設型基地局の商用開始を検討し、そして2022年12月28日に国内通信事業者として初めて埋設型5G基地局の商用運用に成功しました」(高橋)
この埋設型基地局は、東京・大手町にあるKDDI大手町ビルの植栽の中に埋設されており、一見すると単なる小型マンホールのように見えます。
「大手町ビル周辺は、高層ビルに囲まれて5Gの電波が届きにくい環境にあります。また同時に景観に配慮すべき地域でもあり、従来型の基地局の設置が難しい状況だったのです。埋設型基地局では、無線機とアンテナをほぼ一体にして埋設できるため、両者の距離が離れてしまうという課題も解決できました。検証では、半径約50メートルの通信エリアが確保できることが確認できています」(高橋)
美しい街並みが統一された景観地区やテーマパークなどではもちろんのこと、都市部の人が集中するスポットにおいても、埋設型基地局が大きな役割を果たします。KDDIは今後、埋設型基地局の整備を進めることで、どこでも5Gエリアが快適に利用できる環境を進めてまいります。