2023.10.31

Starlinkマリタイムの高速データ通信を可能にする技術とノウハウ

  • Starlink
  • 日本のどこにいても、つながらないがなくなるように
  • デジタルデバイド解消

KDDIが2023年7月から法人向けに提供を開始した海上向け衛星通信サービス「Starlink Maritime(以下、Starlinkマリタイム)」は、船舶上で高速(ダウンロード最大速度220Mbps*1)、かつ低遅延(20~50ms)のデータ通信を可能にする仕組みです。

*1 2022年11月時点で公表されている下りベストエフォートの値です。

これまでの船舶上の通信は、高度3万6,000kmの上空にある静止衛星が使われるサービスが中心でした。静止衛星は広範なエリアをカバーできるものの、衛星と船舶との通信に時間がかかり遅延も起こります。また、大量のデータ通信にも適していませんでした。さらに、衛星の方角にアンテナを常に指向させる必要があることから、移動し、かつ波の影響を受けて揺れる船上で、それを達成するための装備も導入する必要がありました。

一方、Starlinkマリタイムは、静止衛星の1/65となる高度550 kmの上空を次々に移動してくる低軌道衛星と通信します。高度が圧倒的に低い分、高速・低遅延・大容量のデータ通信が可能になります。また、船に設置するアンテナは、フェーズド・アレーと呼ばれる方式で、通信のために特定の方向に指向させる必要がないものです。

「衛星間通信」により継続性・安定性を確保

データ通信ではスピードや遅延のほかに、継続性を担保しなければなりません。それを実現するカギとなる技術の1つが、Starlinkにおける衛星間通信のテクノロジーであるとKDDIの竹村良英は説明します。

KDDI株式会社 技術統括本部 ソリューション技術運用本部 グローバルインフラマネジメント部 Starlinkインフラ導入推進室 竹村良英KDDI株式会社 技術統括本部 ソリューション技術運用本部 グローバルインフラマネジメント部 Starlinkインフラ導入推進室 竹村良英

「例えば、船舶と衛星が通信できたとしても、その衛星が近くのゲートウェイ(通信衛星と地上のインターネット網を接続する地球局)と通信できる距離にいなければ、洋上では最終的にインターネットへつなげることができません。しかし、Starlinkは4000以上の衛星が周回しています。そこで、衛星間で通信をリレーすることによって、ゲートウェイ局までスピーディに中継することができ、データ通信の継続性が担保されます」(竹村)

また、Starlinkで使われる薄い板状の「Flat High Performance User Terminal」も、継続的で安定的なデータ通信を実現する上で有効な仕組みです。

「このアンテナは、上空の幅広い範囲をスキャンして自分から近い位置にある衛星を捕捉して、その衛星との通信を行います。また、その衛星との位置関係の変化によって通信が難しくなったときに自動的に次の衛星へ通信を瞬時に切り替えます。このアンテナと衛星間通信によって、Starlinkマリタイムは途切れのない通信を維持することができるのです」(竹村)

KDDIのノウハウを生かし導入をサポート

このような技術的なアドバンテージを有するStarlinkマリタイムですが、その潜在的なパワーを最大限に引き出す上では、衛星を使った海上通信に最適化するためのノウハウとスキルが必要とされます。そうしたノウハウ、スキルを有しているのがKDDIです。

「KDDIは、長年にわたって衛星通信のサービスを手掛け、さまざまな船舶上でアンテナをどのように設置すれば、データ通信の安定性や品質、そして機器が持つ性能を高いレベルで確保できるかといった活用のポイント、ノウハウを豊富に蓄積してきました。そうしたノウハウ、スキルと、高速・低遅延・大容量を同時に実現したStarlinkのプラットフォームをかけ合わせることで、より質の高い海上通信の環境をお客さまに提供できると確信しています」(竹村)

KDDIは、Starlinkマリタイムの提供をいち早く開始したというアドバンテージを生かし、漁業・海事業界のお客さまやパートナーさまとの技術検証を推し進め、それぞれのお客さまにとって最適なStarlinkの通信環境を構築していきたいと考えています。