2023.10.31

海上のデータ通信速度を高めて船舶のDXを一挙に加速―KDDIの思い

  • Starlink
  • 日本のどこにいても、つながらないがなくなるように
  • デジタルデバイド解消

「Starlink Maritime(以下、Starlinkマリタイム)」の最大の特長は、海上でのデータ通信のスピードを従来に比べ飛躍的に高められる点です。

静止衛星を使ったこれまでの衛星通信による海上での通信のスピードは1~数Mbpsに留まっており、高精細な画像や動画など、大容量のデータを送受信することが非常に難しい状況でした。

「それに対してStarlinkマリタイムの通信スピードは、最大ダウンロード速度が220Mbps*1と高速で、遅延も20~50msと低遅延です。それはが何を意味するかというと、陸上でのモバイルや固定通信によるインターネット利用と遜色のない体感をお客様に提供することができるわけです。」(KDDI 今村元紀)

*1 2022年11月時点で公表されている下りベストエフォートの値です。

KDDI株式会社 事業創造本部 LX基盤推進部 通信ビジネスグループ グループリーダー 今村元紀KDDI株式会社 事業創造本部 LX基盤推進部 通信ビジネスグループ グループリーダー 今村元紀

工場と同じデジタル活用を船上で実現

陸上でのデジタル通信と同等の性能を発揮するStarlinkマリタイムを使用することで、これまでの海上通信では解決ができなかった数々の課題を乗り越えることが可能になります。

「例えば、船上では、ビデオ会議をはじめとするクラウドサービスが実質的に使えず、船外との密接なコミュニケーション、コラボレーションを通じて業務の効率性を高めることが困難でした。Starlinkマリタイムは、そうした課題を抜本的に解決し、業務効率のアップや生産性向上に役立つさまざまなクラウドサービスの利用を可能にします。さらに、陸地から物理的に隔絶された環境で長時間、長期間にわたって働く船員の方々の生活環境や職場満足度の向上にもつながります」(今村)

Starlinkマリタイムを使ったクラウドサービスの活用イメージStarlinkマリタイムを使ったクラウドサービスの活用イメージ

Starlinkマリタイムは船舶の航海システム・機関システムなどのメンテナンス業務の効率化にも有効です。

「海事業界のお客さまからはよく、船員が故障した航海システムや機関システムをリアルタイムでメーカー側に伝え、迅速な復旧に繋がるようにしたいといったご要望をいただきます。Starlinkマリタイムはそうした業務改革の基盤や安全航海の実現をするためにも有効です」(KDDI 山下 和)

KDDI株式会社 ソリューション事業本部 ビジネスデザイン本部 エネルギー・運輸営業部 営業5グループ グループリーダー 山下 和KDDI株式会社 ソリューション事業本部 ビジネスデザイン本部 エネルギー・運輸営業部 営業5グループ グループリーダー 山下 和

また、Starlinkマリタイムを使うことで船内のOT(Operational Technology)システムの監視やデータ収集を遠隔から行うことができ、それによって船内点検作業の省力化が実現できるようになります。さらに、Starlinkマリタイムを介して従業員(船員)のバイタルデータを遠隔から可視化することで、現場従業者の皆さんの健康維持につなげられます。

Starlinkマリタイムを船舶DXの推進力に

近年では、あらゆる業界でクラウドサービスやAI(人工知能)、IoTといったデジタル技術とデータの活用によって、業務や事業モデルを変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みが活発化しています。

一方で、海上の船舶はデータ通信のパフォーマンスの低さから、DXの潮流に乗れずにきたといえます。その状況がStarlinkマリタイムの登場によって一変しようとしています。

「KDDIには、衛星通信に関する豊富なノウハウと技術力があります。それを土台にしながら、海運業界や漁業におけるStarlinkマリタイムの普及を推し進め、船舶のDXを加速させることを目指しています」(山下)

Starlinkマリタイムを海洋資源の確保にも生かす

Starlinkマリタイムは、船上業務の効率化、クルーズ船での乗客の利便性の向上など、すでにさまざまな取り組みが開始されています。そのほか、漁船操業の効率化や海洋資源の保護・確保にも活用が期待されています。

例えば、国立研究開発法人 水産研究・教育機構(FRA)は、海洋資源の調査や漁業運営の効率化をターゲットとしてStarlinkマリタイムの実証実験をKDDIと共同で進めています。 その実証には、自動イカ釣り機などを開発・提供している東和電機製作所も参加しており、同社が保有する漁船「濱出丸」にStarlinkマリタイムを導入し、海上利用における有効性を検証しています。

船舶の運航・操業の効率化や働き方改革、あるいは乗客の利便性を巡る課題の多くが、海上でのデータ通信の低速さに起因しています。 その課題を抜本的に解決し、船舶のDXを推進していくことで、漁業・海事業界の次の成長、発展、ひいては社会課題の解決に寄与できると考えています。その実現に向けてKDDIは、今後もStarlinkマリタイムの普及促進とパートナーさまとの協業・共創に力を注いでいきます。