社会

地域と企業の共創のカタチを探る〜通信のチカラで生活をもっと楽しく〜

静岡県熱海市の熱海港から高速船で30分の初島にある「PICA初島」では、自分では撮れない構図で園内を楽しむ様子を写真に収めることができる遠隔カメラサービス「マチカメ」や朝食のデザートを運んでくれる「スマートドローン」、流れ星を検知し音と光で知らせてくれる「流星ハンモック」など、"自然を楽しむ"を技術のチカラで拡張する、様々なアトラクションが展開されています。

このPICA初島とのコラボレーションは、auが「地域とともに、おもしろいほうの未来へ。」をコンセプトに進める地域共創プロジェクトの1つです。今回、プロジェクトに込めた思いや開発秘話をお聞きしました。

● アウトドア×テクノロジー:PICA初島プロジェクト

―まずはPICA初島プロジェクトについて概要を教えてください。

<小松>
auでは、事業を通じて社会課題の解決に取り組むパートナー様の理念をリスペクトし、協同で事業を推進する「RESPECT YOU, au」という取り組みを行っております。パートナー様や地域の方々と一緒にその土地を盛り上げ、auを好きになってもらうきっかけにしたいというもので、2022年にプロジェクトを発足しています。

PICA初島もその一つで、通信のチカラで生活を楽しくする、地域の魅力アップや経済活性に貢献していく地域共創の取り組みを推進しています。

<藤村>
富士急グループの一員である株式会社ピカでは自然と寄り添い、地域に根差し、最高のホスピタリティを提供する「人と人、人と自然のインターフェースになる」のミッションのもと、静岡東部での遊園地、スキーなどのアミューズメント事業、キャンプやグランピングといったアウトドア事業をお客様第一で提供しております。KDDIさんからお声がけいただいた際、「先進的な技術は、お客様の地域体験をサポートするツール」というご説明に大きく共鳴し、一緒に取り組ませていただきました。

KDDI パーソナル事業本部 マーケティング統括本部 マーケティング企画部 マーケティング企画2グループ 小松高久(左)、株式会社ピカ 専務取締役 運営事業本部 部長 藤村 健さん(右)KDDI パーソナル事業本部 マーケティング統括本部 マーケティング企画部 マーケティング企画2グループ 小松高久(左)、株式会社ピカ 専務取締役 運営事業本部 部長 藤村 健さん(右)

<小松>
我々の特徴として、通信を始めとした技術があります。アウトドア体験を拡張するような仕組みに活用することで、PICA初島を訪れるお客様にその土地を楽しんで体験してもらえるようなサポートができるのではないかと考えております。

島だからこそ快適に通信をご利用いただけるように、まずはau 5GやStarlinkの基地局を設置し通信環境を用意しました。

<長里>
都市部における光ファイバー回線の利用に加えて、島しょ地域や山間部などの光ファイバー回線を敷設しづらい地域で衛星回線Starlinkを活用したエリア整備を行うことで、auの高速通信エリアを日本中に展開することを目指しております。その中で、初島に建てた基地局は、Starlinkをau通信網のバックホール回線として利用した、日本初の基地局です。

KDDI 事業創造本部 LX基盤推進部 通信ビジネスグループ 長里天羽KDDI 事業創造本部 LX基盤推進部 通信ビジネスグループ 長里天羽

―PICA初島ではどういう体験ができるのですか?

<小松>
1つ目に、映え写真が撮れるサービス「マチカメ」です。園内の複数個所に遠隔カメラを設置しており、自然を楽しむ様子を自動で撮影してお客様のスマートフォンにお送りします。さらに、マチカメで撮影した写真を使って30秒の縦型動画を生成し、「思い出動画」としてお持ち帰りできるサービスも提供しています。

2つ目に、ハンモックに座りながら流れ星を検知すると音と光でお知らせする「流星ハンモック」というサービスをご提供しています。

音と光で流星を知らせてくれる「流星ハンモック」(左)、「思い出動画」イメージ(右)音と光で流星を知らせてくれる「流星ハンモック」(左)、「思い出動画」イメージ(右)

3つ目は宿泊利用の方限定のサービスとして、「スマートドローン」が朝食時にデザートをお運びするサービスや、auからのプレゼントとしてオリジナルのウェルカムドリンクもご提供しております。

―お客様からの反応はいかがでしょうか?

<藤村>
宿泊のお客様のアンケートでも、SNSでも特にドローン、マチカメに関しておもしろかったという声が出ていますね。

<北﨑>
マチカメはテーマパークなどすでに全国およそ30箇所に設置されていますが、今回、PICA初島に設置するにあたって同じ仕組みではつまらないよねということで、流星ハンモックやNFCのリストバンドを使った仕組みにしました。NFCチップの入った紙のリストバンドを手首に巻いて、切り株にかざすと切り株が話し出して、という演出が走る形にしました。切り株はモニュメントですが、なかなかこういう体験は他ではできないと思います。

手首に巻いた紙のリストバンドを切り株にかざす手首に巻いた紙のリストバンドを切り株にかざす

<小松>
リストバンドは、基本的にご来場されたお客様1組に1枚をお渡しするのですが、お子様からは僕も欲しい、私も欲しいとなりますね。マチカメのサービスも皆さまに楽しんでいただいております。

<米山>
宿泊の朝食時にドローンでデザートを運ぶサービスも、ご家族連れにとても喜んでいただいています。私も初めて見たときびっくりしましたが、こんなに大きなドローンは見たことがないと驚かれます。

株式会社ピカ 専務取締役 運営事業本部 部長 藤村 健さん(左)、運営事業本部 広報担当 米山実里さん(右)株式会社ピカ 専務取締役 運営事業本部 部長 藤村 健さん(左)、運営事業本部 広報担当 米山実里さん(右)

<小松>
実は、全長2m級の産業用を使用しているんです。朝食にジェラートをお運びする演出という面だけではなく、ドローンで物を運搬できることを知ってもらうという意味でもやらせていただいています。小型のドローンは身近な存在になってきていますが、産業用に触れる機会はなかなかないと思います。

全長2m級のドローンがジェラートを運ぶ全長2m級のドローンがジェラートを運ぶ

―今回のプロジェクトが課題としたことはどういうところになりますか?

<小松>
観光地として人気が高い初島ですが、日帰り利用も含め1年間を通じてもっと初島を楽しんでいただけるポテンシャルがあると思っています。「初島をどうしたら好きになってもらえるか」、「実際にどのような体験ができると喜んでいただけるか」を一緒に考えています。

<藤村>
そうですね。先に「こういうものを目指したい」という明確なものがあったというより、一緒にやっていく中で何か新しいものが見えるのではないかという期待感でプロジェクトを進めてきたというのが事実に近いです。アウトドアと先進的な技術が融合すると、お客様にとってどういう価値が出てくるのかという点が期待するところです。

<小松>
一方で我々の視点としては、この取り組みをきっかけに最終的にはauブランドの好意につなげていくことが自分のミッションです。auの地域共創プロジェクトとして進めているなかで、あくまで我々は黒子的な立ち位置を意識しており、パートナー様であったりその地域に住んでいる、あるいは訪れる方の思いだったり課題を一緒に解決するところに重きを置いています。

● 離島に最先端の技術を持ってくる

KDDI 事業創造本部 Web3推進部 3グループ 北崎修央(左)、 KDDI パーソナル事業本部 マーケティング統括本部 マーケティング企画部 マーケティング企画2グループ 小松高久(右)KDDI 事業創造本部 Web3推進部 3グループ 北崎修央(左)、 KDDI パーソナル事業本部 マーケティング統括本部 マーケティング企画部 マーケティング企画2グループ 小松高久(右)

―自然がそのまま楽しめる離島に最先端の技術を持ち込む難しさがあったのではないでしょうか?

<北﨑>
やはりグランピング施設となると基本は屋外で、マチカメの設備も屋外で365日置きっぱなしとなります。そういう環境で、雨が降ろうが風が吹こうがシステムを維持するということは大変なことです。特に初島の環境は離島だということもあって、従来のシステムをより強固にするための工夫が必要でした。

<長里>
携帯電話基地局向けのバックホール回線にStarlinkを利用するというのは、国内初の試みであったことから、我々としても大きなチャレンジでした。遜色ない品質をお客様に提供するために、技術や建設部門のメンバーとの連携により品質検証や具体的な建設の検討を重ね、実現することができました。

海をバックに立つ、Starlink 第1号基地局海をバックに立つ、Starlink 第1号基地局

初島局は、第一号ということで、ロケーションやデザインも意識しています。自然の素晴らしい海が見える立地を富士急グループ様にご提供いただき、とてもよい場所に立てさせていただいたと思います。

● "地域と企業の共創"の可能性とは

―このあと何をしていこうとされているのか思うところがあれば教えてください。

<小松>
実は、もう1つオンラインで展開している試みがあります。「ソウルなジモトを楽しもう。」をテーマに、一般的な観光サイト情報にはないその地域ならではの情報をお届けする「COLO(コロ) RESPECT YOU, au」という観光Webサービスです。地域の方々にとって大事な場所を「ソウルスポット」と名付け、その地域で暮らす方々の"ジモト"視点を交えて紹介しています。

現在10名の生徒が通う初島唯一の学校の先生からお声がけがあり、先日も初島に行って、初島小中学校の生徒と一緒に初島の「ソウルスポット」を考えるという授業をしてきました。3月に卒業で島を出る中学3年生の生徒が島に何かを残していきたい、かつ初島を誇りに思う何かを持って出ていきたいと。そこで、学校で授業をさせていただいて、実際に生徒自身のソウルスポットを何箇所か出し魅力をプレゼンしてもらいました。この取り組みは、初島に限らず、いろいろなところでやっていきたいなと思っています。

ソウルスポットをプレゼンする熱海市立初島小中学校 中学3年生 木村 悠さんソウルスポットをプレゼンする熱海市立初島小中学校 中学3年生 木村 悠さん

今後もさらに初島自体が盛り上がっていくようにしていきたいと思っています。 初島に限らず、今後様々な地域のパートナー様と一緒にプロジェクトを進めていくことで、その地域の方やそこを訪れる方との新たな接点を作っていく、お互いのシナジーを使ってよりその場所を盛り上げていくというところにつなげることができればと考えています。