2023.5.30

カンボジアの教育インフラを再建する、現地パートナーの取り組み

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ゼロから教育インフラを再整備する

STORY1で紹介したように、カンボジアでの教育支援には現地のパートナーとしてWorld Assistance for Cambodia (以下WAfC)とタッグを組んでいましたが、活動停止中のため、現在はWAfCの元スタッフであったPeng TYさんと共に取り組んでいます。
KDDI財団の前身であるKECが当時のWAfCと協同し始めた頃、彼らが捉えていた最重要課題は、農村部に設備の整った新校舎と学習環境の整備を進めること、まずはカンボジアの教育インフラの再整備でした。それには、クメール・ルージュ政権と冷戦の長期化でカンボジアでは多くの人々が殺害され、社会インフラが徹底的に破壊されていたという背景がありました。

Peng TYさん(左から2番目)Peng TYさん(左から2番目)

初めての支援として、2005年11月にプレアビヒア州のポムオー村に1校目の小学校を建設しました。当初は継続した活動として計画していたわけではありませんでしたが、開校式に行ったKECの担当者は現地の様子に、まだまだ支援すべきことがあると考えたのです。子どもたちの学びの場として生活水準を向上させるべく、井戸や手洗い場、浄水器の整備といった衛生面の問題も解決する必要がありました。ノートやペン、定規、本などの読み物、教材などの学用品を提供するほか、教員も不足していたため、教師を派遣し、英語とコンピュータの授業支援を開始しました。

KDDIスクールに建設された手洗い場KDDIスクールに建設された手洗い場

KDDI財団の支援が入った地域では、教育環境が整備され、子どもたちは学習に集中できる快適な教室で勉強ができるようになりました。
英語やパソコン教室のほか、音楽、美術、運動会などを行い、子どもたちが楽しく学べるような課外授業を取り入れたことで、生徒たちは喜んで学校に通っていると、Peng TYさんは言います。そうした子どもの変化に、親や周りの大人も積極的に子どもたちを学校に送り出すようになっています。
また、カンボジアの技術進歩に伴い、学校でインターネットに接続できるようになり、生徒たちはより多くの情報やリソースを入手できるようになりました。Peng TYさんはその現状にしっかりとした手応えを感じています。

「学校は家の近所にあり、子どもたちは簡単に通うことができます。子どもたちや村の人たちは、パソコンやインターネットを通じて広い世界が小さく身近になり、自分たちが取り残されることなく、知識が日々向上していることを実感していると感じています」(Peng TYさん)

校長や地域のリーダーからの報告によると、すべての子どもたちが学校に通えるようになり中途退学者の数も大幅に減少し高校や大学に進学する生徒の割合が増加するなど、教育を受ける環境は格段に改善されています。
今では、英語やパソコンのスキルを身につけた子どもたちに対して就職の機会も広がっています。その結果、地域住民にも子どもたちの将来のために教育が重要であることが認識され、好循環を生み出しています。

カンボジアの教育をもっと飛躍させたい

2019年、KDDI財団創立10周年記念事業として、カンボジアの首都プノンペンから約65km離れたコンポンスプー州に、古いトタン屋根の教室に代わる11校目の校舎が建設されました。新校舎には、机や椅子、パソコンなどを完備し、子どもたちが快適に学習できる環境が整備されています。

より子どもたちが快適に学習できるように環境が整えられた11校目の新校舎より子どもたちが快適に学習できるように環境が整えられた11校目の新校舎

この新校舎は、地域の子どもたちにより良い教育を提供するための重要なマイルストーンであり、地域の若者の生活向上に向けた重要な一歩となっています。
Peng TYさんはさらなる改善事項として

①学校にパソコンを増設して、インターネットにアクセスできるようにする
②知識や教育技術を向上させるための定期的な研修会を実施し、スタッフ間で教育経験の共有・交換を行う

ことを目標に活動を進める予定です。

①として具体的には、英語教育、コンピュータ、インターネットアクセス、図書館、スポーツフィールドなどの資源も含めた学校インフラの構築に注力しています。物資の提供もそうですし、農村部の子どもたちが簡単にアクセスできるリソースの確保も必要になってきます。
②の点で目指すのは優秀な教育スタッフの育成です。子どもたちに質の高い教育を提供するにあたって、教師は重要な役割を果たします。そのために必要なスキルや知識を教育スタッフが習得できるよう、カンボジアの教職員の質を向上させることを計画しています。

そこにあるのは、国の将来の発展のために教育が重要であり、教育が経済成長と社会の進歩を促進する役割を担うというビジョンです。Peng TYさんは、外部団体の協力を得ながら、今後、カンボジアの教育セクターを発展させ、すべての子どもたちに提供される教育の質を向上させることを目指します。

「KDDI財団には引き続き支援いただき、これらの取り組みを通じて、すべての子どもたちが質の高い教育を受けられるようになり、カンボジアが発展し続ける明るい未来を実現したいと考えています」(Peng TYさん)