2023.6.15

スマホの使い過ぎに悩む親子をアプリで救いたい

  • DX
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スマートフォンが普及するにつれ、ニュースなどで「スマホ依存」が取り上げられることが増え、問題視されるようになりました。2022年1月には世界保健機関(WHO)がゲーム依存(障害)を国際疾病として認定したこともあり、ゲームも含めたスマホ依存にさらに注目が高まっています。

本来は楽しいツールであるはずのスマホが親子の悩みとなっている--KDDI総合研究所 ライフサイエンス研究所 所長 本庄 勝は約10年前、本プロジェクトの立ち上げを決めました。

KDDI総合研究所 ライフサイエンス研究所 所長 本庄 勝KDDI総合研究所 ライフサイエンス研究所 所長 本庄 勝

「スマホを使い過ぎて夜更かししてしまうため起床できない、学校にも行けない、親のクレジットカードでゲームに課金してしまう、家に引きこもって暴力をふるうといった事態に陥っている青少年がいることに課題を感じました。リアルの関係性から逃がれるために、スマホに依存している人達も数多く存在しています。スマホ依存はまだ解明されていない部分が多いのですが、こうした負の面に関してもきちんと向き合い、セーフティネットを作っていくべきだと考えました」

本庄は、「人と人とをつなぎ、コミュニケーションで社会の幸せを実現したい」と考え、プロジェクトの立ち上げを決めました。
スマホ依存の社会課題を解決するためには、技術の専門家だけではなく学際的なオープンイノベーションの発想が大切だと考え、医療の専門家とも積極的に協業して取り組みを進めることにしました。

目に見えない心の病にアプリを処方

研究を進めていくなかで、倫理的な面に配慮しつつ心理的な手法を使えば、医療分野にも活用できる可能性があると考えています。そこで現在は、「心の病(精神疾患)をアプリで治す」ことをビジョンに掲げてプロジェクトを進めています。病気になったら病院へ行くと処方箋に従って薬が出されるように、心の病に対してアプリを処方して治す未来を目指しているのです。

とはいえ、スマホ依存対策にスマホを使うとなると、相反しているようにも思えます。

「よくそう言われます。でも、スマホに向かったときにアプリを使って自分でコントロールできるような仕組みを作れば、過度なスマホ利用を抑えられます。ちょっとした工夫で人の行動を変えられることもあるのです」

DTxに貢献できる研究開発を推進

本庄は、「DTx(Digital Therapeutics:デジタルセラピューティクス) *1」が大きなパラダイムシフトを起こすと考えています。米国ではすでに、糖尿病患者の生活管理や、発達障害改善、戦争等での心的外傷を負った患者を対象とした治療方法など、多くのDTxの開発が進んでいます。一方、日本ではニコチン依存症、高血圧、不眠障害、の3つのみです。米国と比べると10年遅れていると言われています。
今後は国内でもプログラム医療機器に関する規制緩和の検討が進んでおり、DTxがさらに加速していくと考えています。

*1 DTx(Digital Therapeutics:デジタルセラピューティクス):疾病の診断や治療、予防等の医療行為を支援するデジタル技術で、患者が医師の指導の下、治療目的で使用するものを指します。

KDDI総合研究所は、通信会社の研究所としてDTxに貢献できる研究開発を続けていきます。