2023.08.10

設備開発に欠かせなかったパートナー、日本テレガートナー

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海外での経験が生かされた日本初の埋設型基地局

埋設型基地局の商用利用開始にはパートナー企業の協力も欠かせませんでした。今回の埋設型基地局プロジェクトで、無線機およびアンテナを除いたほぼ全般の部材を担当したのが、ドイツに本社を構え、さまざまな通信用部品の製造・販売を手がけるTelegärtner社の日本法人である日本テレガートナー株式会社です。

従来から同社は基地局に関連するさまざまな製品を、施工会社を通じてKDDIに供給してきましたが、今回の埋設基地局で本格的に協業という形でタッグを組みました。

「今回、無線機を格納する金属製エンクロージャー筐体、ハンドホール筐体、フタ部分となるトップカバーについて独自に開発しています。埋設型基地局は既にヨーロッパの通信事業者で採用されていて、弊社の協力会社が関連製品を提供しているという事例があります。それを日本の市場に合わせ、今回のプロジェクトに合わせて作り上げました」と話すのは、日本テレガートナー ソリューション営業部 マネージャー ICTビジネス担当の手塚 剛さんです。

日本テレガートナー ソリューション営業部 マネージャー ICTビジネス担当 手塚 剛さん日本テレガートナー ソリューション営業部 マネージャー ICTビジネス担当 手塚 剛さん

STORY #2でKDDIエンジニアリングの吉岡が語った、排熱と防水については、手塚さんも頭を悩ませました。

「防水性を高めるには密閉する必要がでてきますが、そうすると熱が逃げにくくなります。例えば、ファンを配置して排熱することも考えられますが、それでは防水性が低くなってしまうのです。そこのバランスを考えながら対策を練り、KDDIさんと打ち合わせを重ねながら製品をかたちにしていきました」(手塚さん)

また、蓋の部分であるトップカバーについても考慮する必要がありました。

「アンテナから発する電波を阻害しない素材を採用すると同時に、防水性を備え、かつ、ある程度の荷重に対する強度が必要でした。既存の素材をいくつか試しながら、国内の協力会社で試作し、テストを送り返しながら採用に至りました。海外での埋設型基地局の事例を把握していた経験が強みとなって、日本国内向けにカスタマイズできたと思っています」(手塚さん)

今回開発したエンクロージャー今回開発したエンクロージャー

議論と検証を繰り返し、仕様を決定

新型コロナウイルス禍により、対面でのミーティングが難しい状況で開発は進みました。しかし、「モノ」をつくる作業において実物が見られないため、なかなか合意がとれません。

「毎週のようにWebでのミーティングを重ねていましたが、直接会ってプロトタイプを見ればすぐわかることを、画面越しに伝えるのには苦労しました。直接会えるようになり製品を手に取ってもらって議論できるようになってから、プロジェクトは加速度的に進みました」(手塚さん)

こうして仕様についてKDDIとディスカッションしながら、さまざまな検証を繰り返して最終的に今回の仕様が決定されました。今回のプロジェクトでエンクロージャーやハンドホールの筐体などの標準が固まったことで、今後埋設型基地局を増やしていくうえでの大きな一歩を踏み出したと言えます。

「何度も検証を繰り返す中で感じたのは、KDDIさんの“強い意志”でした。景観地区やテーマパークなどで埋設型基地局を設置することの重要性とともに、5Gエリアをさらに拡大したいという熱意を強く感じました。今後も5Gエリアの拡大に対して直接的、間接的にさまざまな提案をさせていただき、協力していきたいと考えています」(手塚さん)