2025年3月にTAKANAWA GATEWAY CITY(高輪ゲートウェイシティ)が “まちびらき”し、7月にKDDIはここに本社を移転しました。9月には大規模商業施設であるニュウマン高輪(NEWoMan TAKANAWA)が開業し、東京の新たなお出かけスポットとしても注目されています。
一方、この街はKDDIがJR東日本と共に「100年先の心豊かなくらしのための実験場」というテーマを掲げ、「個人の興味関心に合わせた情報提供」「ロボットによる配送サービス」「人流データ活用」など、未来に向けたさまざまな取り組みを行う、スマートシティでもあります。
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今回は、街での快適な滞在をサポートする「TAKANAWA GATEWAY CITYアプリ」の企画・開発を担った、KDDIおよびKDDIアジャイル開発センター(以下、KAG)の担当者が、アプリで何が便利になるのか、高輪の街でどのように使えるのか、開発のエピソードとともにご紹介します。
アプリを手に、開発者と一緒に街を歩いてみました
こちらが「TAKANAWA GATEWAY CITYアプリ」。街のWi-Fi*1と自動的に接続し、建物内も含めた街のガイドとしての機能など、街と私たちをつないでくれるさまざまな機能を持っています。
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KAGは、アジャイル手法でお客さまの体験価値を最大化させるサービス開発を得意とする、KDDIグループの専門組織です。TAKANAWA GATEWAY CITYアプリの開発を担当したKAGの佐々木 恒星、古川 翔太が、実際にTAKANAWA GATEWAY CITYでアプリを使いながら、その便利な機能の一部を解説します。
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便利機能①「駅改札出場と同時に、おすすめのイベント情報をレコメンド」
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「TAKANAWA GATEWAY CITYアプリの中でも特徴的な機能は、改札出場と連動したプッシュ通知です。高輪ゲートウェイ駅でSuicaを使って改札を通過したタイミングをきっかけに、お客さまにぴったりのイベントや街の情報がアプリへ通知されます。たとえば、 お酒やグルメに興味関心がある人が駅の改札を通った際に、それらに関するイベントが表示されるような仕組みです」(古川)
「お客さまがアプリに登録された情報に、KDDIが持つ属性情報のデータなどを掛け合わせて、ご自身も気づいていなかった興味にも触れられるレコメンドを目指しました。このアプリは、ただ案内するためのものではなく、“街を回遊したくなるきっかけ”になってほしいと思っています」(佐々木)
便利機能②「電車運行情報をお知らせ」
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街の玄関口である高輪ゲートウェイ駅を通る山手線・京浜東北線の運行状況について、遅延などが発生した際に、アプリで情報を確認することができます。
「『運休』『人身事故による運休』『再開見込み』と、段階的に更新される運行情報に対して、アプリで通知する情報を整理・統合する仕組みを開発しました。これにより、お客さまにとって必要な最新情報に絞って、分かりやすく通知ができるようになりました。JR東日本さんとの共創ならではの機能ですね」(古川)
便利機能③「開催中のイベントを、一覧で分かりやすく確認できる」
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TAKANAWA GATEWAY CITYアプリでは、街で開催されるイベントを一覧で確認することができます。
「高輪では毎週さまざまなイベントが開催されるため、“行きたいイベントをすぐに見つけられること”にこだわりました。予約が必要かどうか、一目で分かるラベル表示や、興味に合わせて絞り込めるフィルター機能を用意して、迷わず選べるUIを意識しています」(佐々木)
便利機能④「ビル内の店まで連れて行ってくれる『まちマップ』」
「まちマップ」は文字どおり、TAKANAWA GATEWAY CITYに特化したマップ機能です。
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「『まちマップ』は、TAKANAWA GATEWAY CITYを迷わず回遊できるよう設計された屋内外一体型のマップです。建物の構造や部屋、通路まで詳細に表示するのはもちろん、屋内の目的地までルート案内することも可能です。JR東日本コンサルタンツさんの屋内地図データやミックウェアさんの経路案内システムを活用することで、迅速な開発が可能になりました」(古川)
試しにビル6階にあるローソンまでの経路検索をしてみると、まず最寄りのエスカレーターまでの経路が表示され、フロアを移動するとさらに上階へと指示が出て、ビル内の立体的な経路を知ることができます。
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尚、まちマップには街の各スポットに情報をフキダシのように付与して、マップ上で見ることのできる「まちこえ」という機能も搭載されています。
「イベント情報などがTAKANAWA GATEWAY CITYのデータ連携基盤に蓄積されるのですが、そうした街のデータを元に生成AIがコメントをつくりだし、リアルタイムな情報をポップアップで配信する仕組みです」(古川)
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アプリ開発のスタート時、街はまだありませんでした
TAKANAWA GATEWAY CITYアプリは、JR東日本とKDDIが議論して定めた方針に対して、KAGが開発を繰り返し、誕生に至りました。このアプリ開発におけるプロジェクトリーダーを務めたKDDIの岡部 純は、アプリの構想が動き出した頃は、まだ街そのものが存在していなかったと言います。
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「アプリづくりと街づくりを同時に進めていく必要があったのですが、まだ存在しない街を想像しながら、そこで使うアプリを形にしていくことには、とても苦労しました。リアルタイムな情報と、人の心が通う体験をどうつなげるかという問いが、TAKANAWA GATEWAY CITYアプリの原点です。困難な状況下でも、『この街に来た人が、もっと街に愛着を持つことができる仕掛けをつくりたい』という思いで、開発を進めてきました」(岡部)
岡部は、PPO(プロキシ・プロダクト・オーナー)という、アプリ開発関係者をまとめる全体の舵取り役。 JR東日本との要件調整、サービスの方向性決定、社内外の多様な連携サービスとの調整、開発チームへの優先順位付けなど「何をつくり、どうお客さまに届けるか」を決める中心的なポジションでした。
「私は2023年7月にプロジェクトに入ったのですが、開発はまさにKAGとの二人三脚でした。要件が定まらず、高輪の街の姿が見えない局面では、KAGと相談しながらアプリのベースを組み立て、変更にも柔軟に対応してもらいました。また、開発が佳境を迎えたタイミングでは、KAGのメンバーと一緒にJR東日本さんのコンセプト展示スペースに足を運びました。担当者の方々も巻き込んで直接お話を伺い、KAGのメンバーもJR東日本さんの生の声を聞くことで未来の街のイメージを共有し合い、士気を高めていきました。こうして、アプリの初回リリースにたどり着けました」(岡部)
実際に開発を担当したKAGの佐々木はTAKANAWA GATEWAY CITYアプリについて振り返ります。
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「今回は、非常にスピード感が求められる開発でした。そこでKDDIと“こんな機能が必要だよね”ということを想像しながら、KAG主導でPOC(実際に機能するかを検証すること)を実装して検討を重ねました。実際に動くものを確認いただくことで、実装する機能の認識がJR東日本さんともずれることなく、初回リリースを迎えることができたと思います。なかでも岡部さんにKAGの開発定例会議に毎回参加していただいたのは大きかったですね。JRさんとの決定事項を即座に共有できたし、POC段階の動作確認とフィードバックも迅速に行えました。KDDIとKAGの連携がうまく機能したことが、成功につながったと思っています」(佐々木)
KAGの古川が担当したのは、お客さまと接するアプリのデザインや操作性といった、UI・UXの部分。分かりやすく使いやすい体験の提供を目指したと言います。
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「『まちマップ』については、IMDF(Indoor Mapping Data Format)という屋内地図用のデータフォーマットを使用しています。TAKANAWA GATEWAY CITYは、ビルのフロア数や店舗数が多く、データが膨大だったため、地図としての見やすさを工夫しつつも、アプリが重くならないよう、デザイナーと何度も調整を重ねました。また、経路検索は、何度も高輪に足を運んで、実際に検証を繰り返しました。このアプリは、高輪に来た人だけでなく、“まだ来たことがない人”にも使ってほしいと思っています。アプリを通じて街の魅力や面白さを知り、『行ってみたい』と感じてもらえるきっかけになれば嬉しいです」(古川)
街とTAKANAWA GATEWAY CITYアプリの今後の展望について、岡部が語ります。
「このアプリは、街と一緒に進化していく存在だと捉えています。今後は街に住む人、働く人、訪れる人、それぞれの日常にアプリが溶け込み、街そのものがユーザーの生活を支える地域になることを目指しています。リアルとデジタルがシームレスにつながる未来を形にしていきたいです。また、既にある機能についても、データの分析を重ねて、より使いやすものにしていきます。街が広がり続ける限り、アプリも“生きたサービス”としてアップデートを重ねていきます」(岡部)
KDDIはこれからもつなぐチカラを進化させ、未来に向けて新しい体験価値を生み出していくため、挑戦し続けていきます。
*1:KDDIグループのWi-Fi専門事業者wi2が提供するWi-Fiサービスが対象。https://wi2.co.jp/
