「TAKANAWA GATEWAY CITY(高輪ゲートウェイシティ) 」は、KDDIがJR東日本と共に街の共創パートナーとして、「100年先の心豊かなくらしのための実験場」というテーマを実践しているスマートシティ。この場所を起点に続々と新しい街のあり方やサービスを実証する取り組みが行われています。そのひとつがオンデマンドモビリティ「みなのり」です。東京港区の高輪地区で2024年11月より、KDDI、JR東日本、国際ハイヤーが共同で実証運行をスタートさせています。
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KDDIとJR東日本の両社が、オンデマンドモビリティで地域の課題にいかに貢献することができるのか。取り組みの背景と、その思いについて紹介します。
オンデマンドモビリティ「みなのり」とは
「みなのり」は、利用者の希望に応じて配車が行われる乗合型の公共交通サービスです。高輪地区の運行エリア内に指定された23カ所の乗降スポット間をワンボックスカーが巡回。乗りたいスポットと目的のスポットをアプリで指定すれば、AIが最適なルートを計算し、送迎してくれるというものです。
こちらが「みなのり」の運行エリアです。
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このエリアは都心でありながら住宅地で道幅が狭く、地形的には急な坂道が多いのが特徴です。また、南北方向の移動に関しては、JR線、都営三田線、東京メトロ南北線、京急本線が利用できるのに対し、東西方向の移動手段に乏しいのです。こうした交通課題を、JR東日本が培ってきた地域とのネットワークとKDDIのデジタルの力を組み合わせることで解消しようという試み。
TAKANAWA GATEWAY CITYから「みなのり」を利用してみた
ここで、実際に「みなのり」を配車し、利用してみました。
①mobiアプリを立ち上げる
「みなのり」を利用できる専用アプリ「mobi(community mobility)」アプリをダウンロードし、エリア内で起動します。
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②乗降場所を選択。エリアマップと乗降スポットを示す「み」のアイコンが表示されます。今回はTAKANAWA GATEWAY CITYから乗るので、「1.高輪ゲートウェイ駅前」と「ここから乗る」を選択します。
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③目的地として、近隣のマンションにある乗降スポットを選び、「ここへ行く」をタップ。乗車人数・支払方法を選んで「進む」をタップすると、「乗車予定時刻/降車予定時刻」とルートが表示されるので、問題なければ「mobiを呼ぶ」をタップ。料金は中学生以上500円、小学生250円、未就学児は無料。今回は取材陣3人分で1,500円です。到着までの所要時間がきちんと表示されるので、便利で安心です。
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④「乗車位置に向かっています」の画面が出たら配車完了。乗車予定時刻と目的地への到着予定時刻、到着するクルマのナンバーが表示されます。これもまた、利用者にとっては大切なポイント。安心して予約した車両に乗車することができます。さらに、目的地に到着する予定時刻が示されるため、細かなスケジュール調整にも便利です。
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⑤TAKANAWA GATEWAY CITYにある乗降スポットで待機。4分ほどで「みなのり」が到着しました。
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乗車後、アプリで設定した降車地まで送り届けてくれます。なお、予約は電話でも可能。
乗車定員はドライバーを除いて5人。大型のミニバンで、車内空間は広く余裕のある荷物スペースを備えているため、子連れや荷物の多いときにも余裕があります。また、乗り合いサービスながらシートもゆったり取られているため、大人3人で乗っても窮屈さを感じることなく移動できました。
KDDIが地域の新しい交通サービスを実証する理由
通信会社であるKDDIが、なぜ「みなのり」を実証運行させるに至ったのか。KDDIでオンデマンドモビリティを担当する川村 優佳は、経緯を語ります。
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「私の所属する部署では、GPS機能を使ってご家族の居場所を簡単に探すことができる『安心ナビ』や、ナビタイムジャパン社との協業による『auナビウォーク』『auカーナビ』などの、ナビゲーションサービスを含むモビリティ関連事業を手掛けています。その知見を生かして『みなのり』プロジェクトに参画しました」(川村)
携帯電話は、2000年代前半からコミュニケーションツールだけでなく、移動をサポートする手段としても活用され続けています。 「みなのり」誕生の契機は、2021年の「グリーンスローモビリティ」でした 。これは、国土交通省や環境省が導入を推進している、時速20km未満で公道を走ることができる小型の電動車による移動サービスで、このときもKDDIとJR東日本が共同で実証を行いました。
「2020年からJR東日本さんと取り組んでいる『空間自在プロジェクト』が根幹にあります。高輪ゲートウェイシティを中心に、時間や空間にとらわれない分散型のまちづくりプロジェクトを展開し、その一環として港区の交通課題解消のためにスタートしたものです」(川村)
JR東日本で「みなのり」を担当する楠本 晋平さんが、補足します。
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「グリーンスローモビリティは、白金や白金台などの道が狭く、坂道の多い交通不便地域を補完する手段として実証したんです。当時は、運行時刻とルートが決められていましたが、より柔軟に住民の移動ニーズに応えられるよう予約制のオンデマンドモビリティ『みなのり』に進化しました」(楠本)
加えて、現段階での高輪地区からのTAKANAWA GATEWAY CITYにおける交通課題も挙げます。
「高輪ゲートウェイ駅と地域を結ぶ交通手段がなかったんですね。駅前を通る路線バスはあるものの、街と地域を直接つなぐアクセスが不足しており、新しい街のにぎわいを支え、不便さを解消するために『みなのり』を運行させることになったんです」(楠本)
KDDIのデジタル技術と、JR東日本の地域連携による共創
「みなのり」実証運行におけるKDDIの具体的な役割を川村は次のように説明します。
「KDDIが担っているのはデジタル技術面です。専用アプリmobiによる予約のシステムと、AIルーティングでの、最適ルート設定があります。乗り合い式のオンデマンドモビリティですので、同時に複数のお客さまからの配車予約を受けることもありますが、乗降スポットと目的地を巡る最適ルートをAIが算出するんです」(川村)
設定された最適ルートは車載のタブレットを通してドライバーに届くというシンプルな仕組みになっています。
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一方、JR東日本の役割について楠本さんが説明します。
「JR東日本は『みなのり』の運行主体を担い、車両管理や地域公共交通会議での承認取得など実務面を主導しています。さらに利用者アンケートやアプリでの声を集め、サービス改善に反映してきました。強みは鉄道やSuicaといった既存資産に加え、エリアマネジメントを通じて築いた地域との信頼関係です。これまでの利用実績を見ますと、30~40代の方が8割近くを占め、とりわけ女性の利用が75%以上という結果が出ています」(楠本)
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川村が補足します。
「港区在住者が7、8割。年代で見ると30代、40代、大人だけで乗るケースに次いで、大人と子どもの同乗パターンが中心ですね」
楠本さんによると、「平日の朝夕が利用のピークで、お子さんの送迎など日常の足として使われているなど、ベビーカーを使用する年代のお子さんを持つ地域のお母さんの利用が多いと分析しています」
データ活用で地域に寄り添ったモビリティサービスの拡充へ
当初、2025年9月末で終了予定だった「みなのり」の実証運行は、ひとまず2026年3月末まで延長。今後、より多くの方々がこのサービスを利用し、オンデマンドモビリティが地域の交通手段として定着するための両社のビジョンを聞きました。
本当に必要としている人々にサービスを利用してほしい、と楠本さん。
「“家の前から乗れる”気軽さを追求していきたいので、現状の乗降スポット23カ所から、増やしていく計画はあります。また、ご高齢の方への周知に力を入れていきたいです。加えて、高輪ゲートウェイ駅や周辺の街づくりと組み合わせ、オンデマンド交通を“駅と地域を結ぶ新しい足”になるよう進めたいですね」(楠本)
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KDDIはつなぐチカラを進化させて、このモビリティをより強化していくと川村は語ります。
「専用アプリmobiで乗降スポットごとの利用頻度や、区間の利用回数・傾向、利用者属性や利用回数データを取得し分析することで、どのエリアで必要とされているのかを予測し、今後、新しく乗降スポットを設置すべき場所を検証しています。通信事業者ならではのデータ活用によって、地域に即した柔軟なモビリティサービスの拡充を目指しています」( 川村)
最後に、サービスの将来的な展望について聞きました。

「TAKANAWA GATEWAY CITYには、未来コンビニ「Real×Tech LAWSON」1号店として『ローソン高輪ゲートウェイシティ店』が開店しています。例えば、みなのりを利用して来店された方へのクーポン提供や、『ニュウマン高輪』とのコラボ企画など、TAKANAWA GATEWAY CITYに足を運んでいただける取り組みを進めたいと考えています」

楠本さん
「今後は高齢者を含む幅広い世代が利用しやすい仕組みづくりを目指すとともに、TAKANAWA GATEWAY CITYや周辺のまちづくりと一体でオンデマンドモビリティを育てていきたいですね」
「つなぐチカラ」で社会課題を解決地地域や人々の暮らしに寄り添う
「みなのり」ではデータに基づいてより多くの人が利用しやすいよう乗降スポットを設置し、AIルーティングによって効率的な運行を実現するなど、デジタルの強みを生かした交通設計を達成しています。現在、高輪地区の交通不便といった課題に応えるとともに、ベビーカーを利用する子育て世帯の移動もサポート。今後も改善を加えながら、TAKANAWA GATEWAY CITYと街を結ぶ新しい“足”として、お客さまを支え、日常生活の利便性向上に貢献していきます。
KDDIはこれからもパートナーと共創し、社会課題解決に取り組み、お客さまの暮らしに寄り添って、豊かな地域社会の発展に貢献していきます。
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