商品選びから決済までスマホで完結!社員を実験台にしたオフィス特化型コンビニへの挑戦

KDDIは2025年7月に、「TAKANAWA GATEWAY CITY(高輪ゲートウェイシティ)」の本社内にある社員専用フロアに、オフィス特化型ローソンをオープンしました。ここでは、KDDI社員のみが利用するという環境を生かし、未来のコンビニを見据えた、一歩先の購買体験・店舗オペレーションの実験が行われています。その目的は、オフィスで働く人の生産性やオフィス勤務に対する満足度向上を目的とした体験価値を提供すること。通常のコンビニとどこが違うのか、その秘密に迫ります。

オフィス特化型ローソンの外観
オフィス特化型ローソンの外観

入店前のワクワクからありがとうのクーポンまでスマホで完結

オフィス特化型ローソンに足を踏み入れて、まず気付くのは「レジがない」ことです。そして、接客にあたる店舗スタッフの姿も見当たりません。お客さまは自分のスマホで商品のバーコードを読み取り、決済まで完了して出ていきます。

この購買体験は「オフィスローソンアプリ」によって実現されています。その機能についてKDDI LXビジネス企画部の手塚 智之が説明します。

「一人ひとりが手元にレジ機能を持つことで、レジ待ちの行列をなくすことが可能です。アプリには、利用者の購買履歴に基づくレコメンド機能やクーポン配布機能も搭載されており、まるでECサイトのような、パーソナライズされた体験を実現しています」(手塚)

KDDI 事業創造本部 LXビジネス企画部 手塚 智之
KDDI 事業創造本部 LXビジネス企画部 手塚 智之

また、入店前に欲しい商品を検索して在庫を確認し、カートに追加しておけば、店舗内でスムーズに買い物ができます。通常のコンビニとの決定的な違いは、来店前に商品を探す段階から、決済を終えて店を出た後まで、一連の購買体験が全てスマートフォンで完結する点にあります。

例えば、休憩時間に入り席を立つ前にコーヒーをカートに入れ、ローソンに着いたら、そのままアプリで決済。レジに並ぶことなくスムーズに商品を購入できます。もちろん、店舗で気になるお菓子を見つけたら、その場でバーコードをスキャンして買うことも可能です。また、直近の購入履歴や「あなたへのおすすめ」もアプリに表示されるため、いつも買う飲み物や気になる新発売商品もワンタップでカートに入れておけます。

KDDIでは事前に社員約1万人を対象にしたアンケートを行っており、回答者の半数以上「レジの行列」をストレスとして挙げたことが、こうしたオフィス特化型ローソンの姿へとつながっています。また運営側でも全体の業務のうちレジ業務のウェイトが大きく、最も多くの稼働時間がそこにとられていました。

「利用者側も運営側も、レジが大きな課題でした。そこでレジを分散化・細分化することで、両者の課題を解決しつつ、さらにスマホを中心とした新たな体験による付加価値を創出できたら、購買体験がアップデートできると考えたのです」(手塚)

今後予定しているもう1つの大きな特徴として、消費期限が近づいた商品や在庫が多い商品を、アプリ上で自動的に値引きする「ダイナミックプライシング」の導入を予定しています。営業時間は通常のコンビニとは異なりオフィスの稼働時間に合わせた設定のため、土日は休業します。金曜日の夕方などに積極的に値引きを行い、できるだけ商品を売り切ることが、フードロス削減にもつながります。

オフィスローソンアプリ上のタイムセール事例
オフィスローソンアプリ上のタイムセール事例

店舗を飛び出して、便利さをお届け

アンケート結果で判明したオフィス内のニーズとして、従来の店舗の枠を飛び出した取り組みが求められていました。商品は店舗内で待つだけでなく、お客さまの近くまで出掛けていくのです。

そうしたニーズに対応するのが「ロボット回遊」による移動型のミニ店舗です。4台のロボットが約20フロアの執務エリアを巡回し、各スポットで30分から1時間、扉を開いて営業します。お客さまはロボットの位置情報や在庫情報をアプリで確認し、手に取った商品は常設店舗と同じようにセルフサービスで決済します。

ロボット回遊による移動型ミニ店舗の利用イメージ
ロボット回遊による移動型ミニ店舗の利用イメージ

KDDIで高輪の街全体のロボット制御プラットフォームを担っているWAKONXモビリティチームと連携して構築しているこのロボットは、小回りがきくからこそ利用状況に応じて売り上げの最大化を図りやすいのも特徴です。手塚は、「今後、ロボットの移動データとアプリの購買データを組み合わせて分析し、最適な巡回ルートや停留時間となるように最適化する予定です。この仕組みは特許も申請しています。」と話します。

また、各フロアの共用スペースに特設店舗を設置して「無人販売」も行う予定です。まずは昼食時の混雑を避けるのに効果的な、お弁当の販売からスタートします。

「『ECサイトの超短距離版』という発想です。店舗を物流拠点として捉え、極限まで簡素化することで、各フロアにマイクロ化した拠点を置けるようにしました。重量センサーやAIカメラ分析による無人店舗の仕組みでは投資金額の問題や判別人数制限の技術的問題からどこでも出店するのは難しいですが、今回の取り組みはアプリさえあれば棚だけで店舗として機能するので、将来的にはさまざまな商品を扱えるECサイトのようにもできると考えています」(手塚)

データを活用したきめ細かなサービスで心をつなぐ

オフィス特化型ローソンでは、社員IDとの連携による、きめ細かなサービスも提供する予定です。例えば、社員IDをオフィスローソンに登録することで、通常のクーポンに加えて「福利厚生クーポン」を配信できます。オフィスローソンアプリの開発を担当するKDDI LXビジネス企画部の中川 諒はこのクーポン配信は社員のエンゲージメント向上にも寄与すると言います。

社員のエンゲージメント向上へクーポンを配信することもできる
社員のエンゲージメント向上へクーポンを配信することもできる

「毎月一定額を会社が負担する食事補助の制度を、コンビニでも実現できる仕組みです。また、上司との1on1面談推進のためのコーヒー券や、表彰された社員への特別クーポンなど、所属部署や役職情報と連動したきめ細かなサービスを検討しています。最終的には、社員一人ひとりの働きがいやモチベーションの向上に貢献するサービスにしたいと考えています」(中川)

KDDI 事業創造本部 LXサービス企画部 中川 諒
KDDI 事業創造本部 LXサービス企画部 中川 諒

将来的には、カロリー計算や栄養バランスの提案、さらにはアレルギー情報の管理も視野に入れています。例えば、肉類ばかり購入している人には野菜をレコメンドしたり、アレルギー登録をしておけば該当商品購入時にアラートを出したりといった機能が考えられます。

コンビニの新しい基盤となるアプリ開発のこだわり

このような先進的な取り組みを実施できる店舗が生まれた背景には、街全体の「実験場」というコンセプトが深く関わっています。

「TAKANAWA GATEWAY CITYは『実験場』や『アップデートしていく街』として計画されましたから、必然的な流れでした。新たなチャレンジをして、既存の良いところや文化を活かしながらアップデートしていくことを実践していくべき場所です。社員専用というスペースなので思い切ってレジの無い店舗とし、スマホセントリックな体験作りをしていくことに、ローソンさんからも積極的にアイディアを頂いた為、前向きに検討を進めることができました」(手塚)

高輪の地で実験ラボとして位置付けるローソンの役割
高輪の地で実験ラボとして位置付けるローソンの役割

また、これまでとは異なるコンビニの基盤を作る取り組みであるため、アプリ開発にも相応の苦労がありました。

「アプリは約半年をかけて開発しましたが、無人店舗環境におけるセキュリティの確保と、誰にでも分かりやすい操作性の両立が一番の課題でした。これまでのコンビニとは異なる新しい体験となるため、どのように受け入れてもらえるかも重要なポイントでした。社内のデザインセンターと協力して操作性のテストを実施し、幅広い年代の方々に実際に使ってもらい、フィードバックをもとに改善を重ねました。特にアプリのパフォーマンスとUX(利用者の体験)には徹底的にこだわりました」(中川)

オフィスローソンアプリ内でパーソナルなレコメンド機能も実装
オフィスローソンアプリ内でパーソナルなレコメンド機能も実装

オフィスワーカーの「ローソンがあってよかった」を目指す

KDDI本社が入っており、高輪ゲートウェイ駅とも直結する「THE LINKPILLAR 1 NORTH」の6階にも実験店舗「ローソン高輪ゲートウェイシティ店」がありますが、こちらはKDDI社員以外も利用できるため、実用的なテクノロジーを導入しています。これに対して社員専用のオフィス特化型ローソンは、社員のみが利用する環境を生かし、本当に新しい発想をどんどん試す場所として位置付けています。

「社員専用のオフィス特化型ローソンは完全に実験場という立ち位置で、常にアップデートして、新しいことに次々と挑んでいく店舗ですから、慣れない体験からお客さまが使いづらいと思う部分もあると思います。ただ、KDDI社員はチャレンジへの理解があり、既に様々な観点からフィードバックを頂けるほど皆さんに協力してもらっていて、実験場所として非常に良い環境だと感じています」(手塚)

「実験店舗の強みは利用者の声が直接届くことで、ネガティブな部分も含めて聞けるので、すぐに検証・改善できます。このサイクルを高速で回すことで、本当にオフィスで必要な機能を磨き上げていきます」(中川)

未来のコンビニのあり方を探る意欲的な試みに関心を寄せるのは、KDDIとローソンだけではありません。さまざまな分野のパートナー企業からも期待されており、これまでコンビニでは活用されてこなかった新しいテクノロジーの実装に向けて検討を進めています。

「まずは社員のみが利用するクローズドな環境ではじめて、次に同じビル内の一般の方も来店する実験店舗で検証し、そして全国へ広げるようなステップを踏んでいく予定です。最終的には『オフィスの中にローソンがあってよかった』と感じていただける世界観を目指して、ローソンと一緒に全国展開していきたいです」(手塚)

全国のオフィスワーカーの日常を変えていくかもしれない未来のコンビニづくりが、実験場である高輪ゲートウェイで始まっています。KDDIとローソンは、通信とコンビニを融合し、お客さまの毎日に、便利さとワクワクする新たな体験を届けるために挑戦していきます。

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