2025年3月27日、品川車両基地跡地にJR東日本が手がける新しい街、TAKANAWA GATEWAY CITY(高輪ゲートウェイシティ)が“まちびらき"しました。高輪ゲートウェイ駅正面のツインタワー「THE LINKPILLAR 1 NORTH/SOUTH」をはじめ、オフィス、ホテル、商業、住宅などからなる南北約1.2kmのスマートシティです。KDDIは2025年7月、ここに本社を移転し、JR東日本と共に街の共創パートナーとして、WAKONX SmartCity(ワコンクロススマートシティ)およびデータ連携基盤(デジタルツインプラットフォーム )を活用した新しいサービスを提供していきます。
街のテーマは「100年先の心豊かなくらしのための実験場」。ここでは街独自の「TAKANAWA GATEWAY CITYアプリ」や、多彩なロボットたちが活躍します。KDDIは、訪れる人の希望や好みの違いに応じた適切な情報やサービスを提供する「ハイパー・パーソナル体験」と、働く人が街と一体となって築きあげる「ハイパー・パフォーマンス体験」を提供し、「あなたに気付く街 みんなで築く街」をここからつくりだしていきたいと考えています。
では、「街に訪れる人」がどのような体験をし、「街で働く人」の仕事がいかに便利になるのでしょうか。実際に、「TAKANAWA GATEWAY CITY」に潜入して体験してきました。
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「TAKANAWA GATEWAY CITY」で、どんなことができるのか
「TAKANAWA GATEWAY CITY」の中心となるのは「TAKANAWA INNOVATION URBAN OS(タカナワイノベーションアーバンオーエス)」というデータ連携基盤、つまり街を運営するためのソフトウエアです。利用者が改札やフラッパーゲートを通過すると、興味関心に合ったタイムリーな情報を、アプリで配信します。
たとえば、コーヒーが好きな利用者が朝改札を通過すると、コーヒーに合う朝ごはんのクーポンが届いたり、ランチタイムになると、行きたかったハンバーガー店から「今なら並ばずに入店可能」と通知が届いたりします。さらには、電車の遅延情報などもアプリがお知らせしてくれます。街の情報、鉄道の情報、事業者がもつ情報などを集約し、街の人々に最適な情報を発信すると同時に、さまざまなロボットを一括管理し、街にいる人それぞれに最適化したサービスを提供します。
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この街の構想から関わって約16年というJR東日本の天内 義也さんは、TAKANAWA GATEWAY CITY誕生の背景について、こう語ります。
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「私たちはこれまで鉄道会社として、“駅から街を作る”という開発を行ってきました。高輪ゲートウェイ駅は山手線で約50年ぶりの新駅であり、新しい価値を生み出すチャレンジができる場所です。そこでKDDIさんと共創し、街の開発段階から通信を組み込むことで、『人の行動を起点に、最適に反応する街』『街全体がOSのように機能する世界』を実現し、開発した後も長く価値を高め続けられるスマートシティを目指すことにしました」(天内さん)
では、スマートシティの実現によって、どのようなことができるようになるのでしょうか。
街の特徴①:アプリでタイムリーに街の情報がわかる
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高輪ゲートウェイ駅から街に降り立つと、Suica情報を連携させた「TAKANAWA GATEWAY CITYアプリ」に通知が届きます。 改札出場時に、利用者の情報がデータ連携基盤と連携*1し、最適化されたイベント情報を得ることができます。また将来的には、飲食店、キャンペーン情報、施設の混雑状況なども届くようになります。
データの利活用とアプリの開発を担当した、JR東日本の小坂 和広さんは次のように説明します。
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「Suicaによる改札入出場タイミングのデータを活用して、どのように活かすかをKDDIさんと検討してきました。Suicaで改札を出た瞬間を、サービスをご利用いただくトリガーとして、その方の属性や興味関心に合った情報を発信します」(小坂さん)
アプリ開発を担当したKDDIの多々良 里佳は、そこで生まれる「価値」についてこう言います。
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「高輪におけるスマートシティならではの体験価値を考えました。JR東日本さんがお持ちの交通データや新たに取得できる街のデータを起点として、それをいかに利用者にとって価値のある体験に変換するか、両社で何度も意見交換をしながら情報設計や機能の構築に取り組みました」(多々良)
このアプリならではのユニークな機能として、「アクション」が上げられます。これは、街に訪れたり、アンケートに回答したり、街に関わる何らかの活動をすることで、アクション数が加算されるという仕組みです。
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この機能について多々良は、「ショップなどでポイントが貯まる仕組みはありますが、これを街に紐づけたところが私たちにとっての大きな実験要素だと思います。『アクション』という数値が見えることで、自分がどのくらいこの街と関わりを持っているのかという実感につながり、街との関係性がより深くなるきっかけになればいいなと考えました」と期待を込めました。
街の特徴②:多彩なロボットがスムーズにサービスを行う
「TAKANAWA GATEWAY CITY」では、多彩なロボットたちが活動しています。現在は主にKDDI新社屋内で試験運用中ですが、今後は新たなサービスとしてさまざまな街やビルに展開していく想定です。
たとえば夏のイベント前、広場のベンチで集まっている人に冷たいサンプルドリンクを配布するなど、あなたが意識する前に、街があなたの好みや状況を認識して、個人の属性・嗜好・気分に最適化された情報やサービスを、ロボットが提供します。まるで専属コンシェルジュがいるかのような“ハイパー・パーソナル体験”と、ワーカーが街の力を得て何かをつくりあげるような“ハイパー・パフォーマンス体験”を実現する、ロボットたちを紹介します。
1.食堂商品デリバリーロボット
「TAKANAWA GATEWAY CITYアプリ」で飲み物とお弁当のオーダーが可能。食堂から執務室までロボットが配送してくれるので、忙しくてランチに出かける時間がない日でも、自席で食事を楽しむことができます。
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2.ローソン商品デリバリーロボット
専用のアプリでオーダーすれば、ビル内のローソンから、各執務室まで商品を配送。作業中で手が離せない時でも、ローソンの飲み物や軽食をロボットに届けてもらうことができます。
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注文を受けると、入場パスが必要なゲートを通過し、エレベーターで指定のフロアまで向かいます。また、社内販売のようにフロアを回遊して商品を販売する別のロボットも運用されています。
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3.「TSUNAGU BASE」案内ロボット
社外とのコラボレーションを加速し、高輪でのイノベーション創出を目指す、高輪新社屋の共創拠点「TSUNAGU BASE(ツナグベース)」。お客さまが受付をされると、音声と映像を使って「TSUNAGU BASE」にあるショール―ムまでご案内します。
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KDDIの取り組みを紹介している、ショールーム内の各展示に近づくと、ロボットが自動的に停止し、ディスプレイの表示も展示に関する内容に変化。ロボットが説明員の代わりになることで、人員削減や業務効率化にも貢献します。
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4.社内便配送ロボット
ロボットがエレベーターに自力乗車しながら、社内の郵便物を集約しているメール室と各執務室を行き来し、郵便物を配送します。これまで郵便物の回収や受け取りは、メール室と各執務室を人が往復していましたが、ロボットが代替することで、その手間を大きく省くことができます。また、これにより郵便物を持つ負荷も減らすことができるため、例えば身体に障がいをお持ちの方でも、業務に就きやすくなります。


5.広場でのデリバリーやサンプリングロボット
ビル内から屋外へと走行し、「小さいお子さまを連れたご家族」や「これから街で行われるイベントに参加する女性」など、特定の利用者に向けた試供品などのサンプリングを行います。例えば夏場のイベント待機列に冷たいドリンクを配布するなど、利用者の潜在的なニーズを先読みしたサービスが期待できます。


ほかにも清掃や警備を行うロボットなど、数十台が試験運用中です。それらがスムーズに動けるように一括管理するのも、データ連携基盤の役割です。
KDDIでデータ連携基盤を担当している依田が、その仕組みについて説明します。

「データ連携基盤がハブとなり、集めたデータを活用するロボットプラットフォームをつくったことで、何台のロボットが今どこを走行しているかを、人流と合わせて一元管理できるようになりました。それぞれの個体の最適ルートを計算し、廊下での道の譲り合いなどもできますので、ロボットを使う企業や部署や事業者は、混雑や事故の心配をすることなく、ロボットに動いてもらうことができます」(依田)
街の特徴③:データ利活用による街のシミュレーション
次にご紹介するのが「TAKANAWA GATEWAY DASHBOARD(タカナワゲートウェイダッシュボード)」。街の中に設置されたIoTセンサー(温度・湿度・降水量などを観測するもの)やカメラのデータを元に人流を解析し、混雑予測や動員数などの計算を行い、可視化するシステムです。
1.3Dシミュレーション
災害時の避難誘導や広場イベントの人流を3D映像で確認できる「3D都市モデル」でシミュレーションし、安全な都市生活の維持に活用します。

2.リアルタイム人流可視化
各広場や改札付近の人流をリアルタイムで可視化し、未来の混雑を予測。警備やイベントなどの運営計画に反映します。
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3.イベントレポート
イベント終了後、売上計画や人流データをもとに成功度を分析。今後のイベントに活かすことができます。
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「TAKANAWA GATEWAY DASHBOARD」は、主に街の事業者が利用していますが、間接的に来訪者やワーカーのメリットにもなると、KDDIの依田は説明します。
「これらの映像を見られるのは、たとえば警備会社や清掃会社、街のエリアマネジメントを担うみなさんです。人流のピークの予測に合わせて商品を準備したり、移動の動線を考えたりするのに活用いただけます。それが、結果的にはフードロス対策になったり、みなさんが街で安全・快適に過ごせることにつながったりすると考えています」(依田)
これから進化・発展していくTAKANAWA GATEWAY CITY
TAKANAWA GATEWAY CITYでのさまざまな“実験”はまだはじまったばかり。2025年9月には「NEWoMan高輪」が開業し、さらに10月には「JWマリオット・ホテル東京」が日本初上陸します。今後、この街はどのように発展していくのでしょうか。
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天内さん
「不動産としての価値だけでなく、都市サービスを動的に進化させ、価値を高める取り組みを、今後もKDDIさんと一緒に続けていきたいです。街は地域の人に愛され、育てられて定着するものです。TAKANAWA GATEWAY CITYは都市開発としてはじまりましたが、これからは地域のみなさんと一緒に運営していくフェーズだと思います。地元のイベントに協力したり、この街の空間を使ってもらったりして、地域に愛される存在になれたら嬉しいですね」
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小坂さん
「実際に街が動き始めると、既存のシステムをうまく組み合わせるアイデアもたくさん出てくると思います。そうして実地で人の動きに合わせた情報発信や、街を動かす仕組みをさらに磨いていきたいです。たとえば、電車の混雑時などにデリバリーロボットを活用して、『まだ30分ほど電車が混んでいるので、あの店で飲んでいきませんか?』といった案内することも技術的には可能なのです」
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多々良
「まちアプリやロボットなど、今ある機能をベースにしながら、“高輪らしさ”をもっと出せるような体験を作っていけたらと思っています。そして、TAKANAWA GATEWAY CITYでの実験を成功に導いて、その経験を活かして、他の地域や都市にも横展開できるように、価値を見極めていくつもりです」
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依田
「街に来る人たちが普通にロボットと関わり、アプリを使って得られるデータをどんどん活かしていきたいと考えています。たとえば街のベンチの配置とか。些細なことに思えるかもしれませんが、環境や人流のデータを取れば、どんな配置がもっとも快適で長時間過ごせるか。そんなことも分かるようになると思います。そんな都市と人間行動のリアルタイム連動を実践していきたいです」
成長し続けるあたらしいスマートシティづくりに貢献する
「TAKANAWA GATEWAY CITY」では、こうした新しいまちづくりへのビジョンが常に試され、続々と実装されていきます。KDDIでも、そうした取り組みを率先して実験していきます。
例えば、KDDI本社ビルですでに稼働している「空間自在ワークプレイスサービス」というシステム。離れた拠点間を結び、臨場感や一体感のある会議空間を提供することができます。
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そんな未来の都市の一端に、ぜひ触れてみてください。KDDIは、データ活用によりスマートシティの実現を支援する「WAKONX SmartCity」を通じて、パートナーのみなさんと共創し、人口減少や労働力不足など、まちづくりにおける事業者共通の課題解決、街の賑わい創出、地域活性化に貢献します。KDDIのつなぐチカラは新たな次元へ。街が人に“気付き”、一人ひとりの可能性が花開く未来を目指していきます。
*1 アプリご利用開始時に、データ連携の許諾や興味関心の情報・SuicaIDをご登録いただいた利用者の方のみ対象です。