ワクワクする「スマホ体験」でデジタルデバイド解消へ 楽しみながら学ぶ「旅するスマホ教室」

シニアの方々に、スマートフォンの魅力を伝え、楽しく使ってもらうためにできることは何か。KDDIでは、こうした思いから新しい形のスマホ教室を実施しています。

キーワードは、ワクワクして使い続けたくなる「スマホ体験」。通話やメールといった連絡手段だけでなく、シニアの方々の興味関心に合った使い方を「実体験を通じて」提案しようという取り組みです。

その一つとして山口県の岩国錦帯橋空港で開催されたのが「旅するスマホ教室」です。ポイントは、座学だけでなく、実際にスマートフォンを使った空港の擬似チェックインを体験できるところ。市街地と空港が隣接している「空港の街」ならではの体験にこだわりました。

参加した方からは、「スマートフォンでチェックインができると知って、ぜひ体験してみたいと思いました」「一通りの流れがわかったので、いつか実際にチェックインしてみたいです」という声をいただいています。

シニアの方々のデジタルデバイドを解消するためには、日々の暮らしの中でスマートフォンをどのように便利に使えるのか、どんなワクワクする体験ができるのかを知っていただくことが重要です。KDDIは、シニアの方々のニーズをとらえた体験型スマホ教室を通じて、デジタルデバイドの解消を目指します。

シニアの方々の「潜在的なニーズ」をどれだけ掘り起こせるか 「旅するスマホ教室」誕生の舞台裏

スマートフォンを使ったオンラインチェックインを実際の空港で擬似体験できる。KDDIとANAあきんど株式会社(以降、ANAあきんど)が山口県の岩国錦帯橋空港で、シニアの方々を対象とした「旅するスマホ教室」を開催しました。

スマホ教室というと、基本的な操作を教わる「座学」のイメージがありますが、今回の取り組みは「シニアの方々がスマートフォンでやってみたいことを実際に体験していただく」ことを重視しました。

「シニアの方々のデジタルデバイドを解消するためには、日々の暮らしの中でスマートフォンを使って楽しいと思ったり、便利だと感じることを、どれだけ提案できるかが大事だと思っています」。こう話すのは、KDDI 地域共創推進部の小泉安史です。

KDDI株式会社 経営戦略本部 地域共創推進部 サステナビリティ推進グループ グループリーダー 小泉安史

シニアの方々が「スマートフォンでやってみたいこと」を実際に体験

このように考えるようになったきっかけは、昨年度山口県と連携して実施した山口県内の老人会の代表20名の方々との「スマホを使ってやりたいこと」のディスカッションだったと小泉は振り返ります。

シニアの方々にスマートフォンでやってみたいことをお聞きすると「観光地で撮った写真を友人や家族に共有したい」という声が多かったことから、紅葉で有名な防府天満宮で体験型のスマホ教室を実施したところ、参加者の方々がとても楽しそうにスマートフォンを使ってくださったといいます。

「現地の公民館で基本操作を学んだあと、講師と一緒に紅葉をスマートフォンで撮影して、LINEで共有するところまでを実際に体験していただきました。すぐに定員に達したことや、『これ、本当に面白いね』という声があちこちから上がっていたことから、体験型スマホ教室のニーズが高いことを実感しました」(小泉)

こうした取り組みをご評価いただき、新たな体験型スマホ教室を提案してほしいという山口県からの依頼を受けて企画したのが「旅するスマホ教室」です。

空港に隣接する街、岩国で飛行機のオンラインチェックイン体験

岩国錦帯橋空港で飛行機のオンラインチェックインを擬似体験するという取り組みは、地域創生に取り組んでいるANAあきんどとデジタルデバイドの解消について話をする中で生まれました。

「ANAグループさんが、飛行機の搭乗まわりの手続きをスマートフォンのアプリに集約する取り組みを進めているとお聞きしたとき、体験型のスマホ教室に向いているのではないかと考えました。旅行はシニアの趣味の中でも上位に入りますから、試してみたい人が多いのではないかと思ったのです」(小泉)

このような思いから生まれた企画は、空港に隣接する岩国市と和木町の賛同を得て、「旅するスマホ教室」という形で実現しました。

KDDI 地域共創推進部の福士純子によれば、擬似体験ではあるものの、ほぼ実際と同じ体験ができるといいます。

「体験用のアプリは、座席の選択からQRコードの表示まで、本番さながらのリアルな体験ができました」(福士)

KDDI株式会社 経営戦略本部 地域共創推進部 サステナビリティ推進グループ 福士純子

告知から1週間で満席、今後も楽しみながら学べる提案を

旅するスマホ教室は、告知から1週間で満席となり、当日はスマートフォンを初めて使う方から、搭乗のオンラインチェックインを試してみたいという方まで、さまざまな習熟度の方にご参加いただきました。

今後の取り組みについて、小泉は次のように話します。

「私が所属する地域共創推進部は、『2024年末までに累計1,500万人のデジタルデバイドを解消する』という目標を掲げ、さまざまな施策を行ってきました。その中でわかったのは、デジタルが難しいと思っている方々に対して『心から楽しいと実感してもらえる体験』をいかに探し出して提示できるかが重要ということです」(小泉)

シニアの方々が楽しんで使い続けたくなるスマートフォンの在り方を、パートナー企業とともに探り、新しい形のスマホ教室として提案する。KDDIはシニアの方々のより豊かな暮らしにつながるスマートフォン活用を推進していきます。

空港の街だからこその「スマホ体験」をシニアの方々に 座学だけでは味わえない楽しさを感じてもらうために

左から、岩国市 総合政策部 デジタル推進課 デジタル推進班 上中慶輔さん、ANAあきんど株式会社 営業統括室 地域創生部 企画チーム マネジャー 永田翔多さん

豊かな自然に恵まれた山口県岩国市。日本三名橋の一つとして知られる錦帯橋や五竜の滝を抱く寂地峡などの観光地で知られるこの街は、市街地と空港が隣接している「空港の街」としても有名です。

そんな岩国市が喫緊の課題として取り組んでいるのが、デジタルデバイドの解消です。岩国市は、市域の9割以上が地理的条件が厳しい中山間地域であり、シニアの方々も多いことから、利便性の高い行政サービスを効率よく提供することが求められています。

その手段として期待されているのがスマートフォンであり、岩国市では、誰もがスマートフォンを使いこなせるようになるための支援を行ってきました。中でもシニアの方々の使いこなしをサポートする取り組みに注力してきたと話すのが、岩国市 総合政策部デジタル推進課 デジタル推進班の上中慶輔さんです。

「シニアの方々の社会参加を支援し、安心して暮らせる街づくりをめざして『高齢者スマホ活用支援事業』を展開しています。その一環として、市街地に足を運ぶのが難しい中山間地域のシニアの方々向けに、訪問型のスマホ教室を実施しました」(上中さん)

KDDIと共に展開したこの取り組みには70人超のシニアの方々が参加。ご自宅に伺って、個々のニーズに合ったスマートフォンの使い方をお教えしたところ、8割以上の方々から『満足』という評価をいただくことができたといいます。

スマホ教室に「座学だけでは伝えきれない楽しさ」を求めていた岩国市にとって、空港のチェックインをスマートフォンで実体験できる「旅するスマホ教室」は、「まさに期待通りの取り組みだった」と上中さんは話します。

「岩国市は市の中心地から車で10分のところに岩国錦帯橋空港があり、市民にとって空港はとても身近な存在です。きっと喜んでいただけると思いました」(上中さん)

スマートフォンでシニアの方々の人生を豊かにする手助けを

KDDIとともに「旅するスマホ教室」を企画したのが、地域創生に取り組む全日本空輸株式会社(以降、ANA)のグループ会社、ANAあきんど株式会社(以降、ANAあきんど)です。ANAあきんど 営業統括室 地域創生部で企画チームのマネジャーを務める永田翔多さんは、山口県が推進するワーケーションプログラムの一つで、県内の企業が社会貢献活動の一環として主催するシニアの方々向けの、無償のスマホ教室に参加した時の経験が今回の企画につながったといいます。

「スマホ教室に参加したシニアの方々が『スマートフォンを便利に使えるようになって、人生が豊かになった』とおっしゃっているのを聞いて、もっと私たちにできることはないかと考えました。この取り組みを通じて縁ができたKDDIさんと一緒に、ぜひ、シニアの方々が楽しくスマートフォンの活用を学べる教室を企画したいと思ったのです」(永田さん)

企画にあたっては「通話やメールの先にある楽しみ」を意識したと永田さんは話します。

「企画にあたってヒアリングをさせていただいた岩国市の方々からは、『スマートフォンの実体験を通じて、基本的な操作の先にある楽しみを味わってほしい』というお話がありました。ちょうどその頃、ANAグループがスマートフォンを使った空港のオンラインチェックインを推進していくことになったので、これを体験していただくのはどうかと考えました」(永田さん)

こうして生まれた「旅するスマホ教室」は、岩国市と和木町の賛同を得て開催が決定。11月14日に岩国錦帯橋空港で開催されたスマホ教室では参加者の方々から「前から気になっていたスマートフォンでのチェックインを体験できてよかった」「実際の操作の流れがわかったので安心して使える」という声が上がりました。

12月には和木町で「旅するスマホ教室」が開催されました。和木町では2022年からデジタルデバイド解消の一環として年3回、スマホ教室を実施しており、今回の参加者の中にはリピーターとして参加した方もいらっしゃったそうです。

和木町役場 企画総務課 企画係の吉田郁也さんは、今回の成果について「参加者の方から『自分には縁がないと思っていたスマートフォンでのチェックインを体験できてうれしい』『次の旅行ではスマートフォンでチェックインしてみたい』といった感想をいただいて、大きな成果があったと実感しています」と話します。

「人を大切にしたデジタルデバイド対策」を目指して

岩国市の上中氏は、旅するスマホ教室を通じて「民間企業ならではの新しい視点や観点」がデジタルデバイドの解消につながることを実感したと話します。

「行政だけではなかなか思いつかない『楽しみながら学べるさまざまなアイデア』を民間の方々と一緒に形にしていきたいと思いました。それこそが、私たちが掲げる『人を大切にしたデジタルデバイド対策』につながっていくはずです」(上中さん)

和木町の吉田さんは、「車両型の出張auショップや、自宅訪問型スマートフォン教室などの実証実験に力を入れているKDDIさんとともに、シニアの方々が新たな技術と触れ合う機会をつくっていきたい」と話します。

シニアの方々が自ら使いたくなるような楽しいスマホ体験を行政の方々と共に考え、提供していく。KDDIはこれからも、シニアの方々のデジタルデバイド解消に向けた取り組みを推進していきます。

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