全国で特殊詐欺の被害が拡大し、深刻な社会問題となっています。警察庁の公表によると、2022年における全国の特殊詐欺の被害総額は370億8000万円で、認知件数が1万7570件となっており、その被害は無視できません。
さまざまな手口のある特殊詐欺ですが、その入り口の多くを占めるのが音声通話(電話)によるものです。家族や知人、公的機関などを装って詐欺師がかけてくる迷惑電話に応じてしまうことで、詐欺の被害に遭ってしまうきっかけになっています。
KDDIは、お客さまが安心して生活を送れるよう、悪質な迷惑電話や電話詐欺の被害を防ぐ取り組みを積極的に進めています。その1つが「迷惑電話自動ブロック」サービスです。2022年2月からケーブルプラス電話のオプションサービスとして提供している同サービスは、お客さまの元にかかってくる迷惑電話を検知し、あらかじめブロックすることでお客さまが迷惑電話に応答してしまうことを未然に防ぎます
.jpg)
またKDDIは、全国のケーブルテレビ各社と提携して「迷惑電話自動ブロック」サービスを提供するとともに、各地の警察とも連携して迷惑電話に伴う特殊詐欺被害の防止のための広報啓発活動を展開しています。
そこで、特殊詐欺に知見のある「迷惑電話自動ブロック」サービスの各担当者に特殊詐欺の傾向やサービス開発の経緯などのお話を伺いました。
特殊詐欺を未然に防ぐ「迷惑電話自動ブロック」をケーブルテレビ局と連携し展開
連日、ニュースでは特殊詐欺の被害について報道されています。2014年をピークに減少していた特殊詐欺ですが、被害額、認知件数ともに8年ぶりに増加傾向に転じています。
警察庁の公表によれば、2022年の全国における特殊詐欺の被害総額は370億8000万円で、前年比131.5%。認知件数については、1万7570件で、同121.2%となりました。
.jpg)
このような被害状況に関して、KDDI パーソナル事業本部 パーソナル企画統括本部 CATV営業企画部 長澤智英は「高齢者のお宅は固定電話が引かれていることが多く、特殊詐欺のターゲットになりやすい傾向にあります。また、スマートフォンや携帯電話と違って、固定電話には発信者番号表示機能が標準では搭載されていません。そのため、家族や親類を装った詐欺師の声色に高齢者の皆さんは意外なほど騙されてしまいます。また新型コロナウイルスの流行に伴って、公的機関を装った還付金詐欺も増えています」と説明します。
(2).jpg)
固定電話から詐欺被害を防ぐ自動ブロックサービス
特殊詐欺被害者への連絡手段として、全体の85.2%に「電話」が利用されており、そのうち97.2%が「固定電話」となっています。また、被害者の86.6%は65歳以上の高齢者と、多くの高齢者が固定電話を通して特殊詐欺に狙われている状況です。
「KDDIは、ケーブルプラス電話による固定電話サービスを620万回線*1以上提供しています。その中でも50歳を超えるお客さまが約77%と、非常に高い比率を占めています。このお客さまの詐欺被害を防ぐことは、KDDIにとって社会的使命だと考えています」
*1 2023年5月時点
以前から迷惑電話の撲滅に取り組んできたKDDIですが、最新の取り組みとして2022年2月より「迷惑電話自動ブロック」サービスの提供を開始しました。同サービスは、ケーブルプラス電話のオプション機能です。
.jpg)
ケーブルプラス電話とは、全国各地のケーブルテレビ局と連携し、NTT東日本・西日本の加入電話回線と同等の通話を固定電話で可能にするサービスです。基本料金がお得に利用できることやケーブルプラス電話同士の通話料が無料となるのが特徴で、KDDIはケーブルテレビ局157社と連携して全国にケーブルプラス電話を提供しています。
その利用者に向けて提供されている「迷惑電話自動ブロック」は、その名のとおり特殊詐欺やセールス電話のような迷惑電話を自動的にブロックしてくれるサービスです。
ケーブルテレビ局や警察とタッグで特殊詐欺防止へ
長澤は、「迷惑電話自動ブロック」の販促施策の企画立案を行いながら、全国のケーブルテレビ局とさまざまな情報を交換する立場にいます。
「我々は、ケーブルテレビ局を通してお客さまへ電話による特殊詐欺について注意を勧告するチラシを配布するともに、迷惑電話自動ブロックが効果的であることを説明し、その普及拡大を図っています。また、日本各地で警察が行っている特殊詐欺対策の啓発イベントなどでも同様のチラシを配布し、同サービスによる特殊詐欺防止効果をアピールしています」
さらに「迷惑電話自動ブロック」サービスの提供を大きな契機として、同サービスを提供するケーブルテレビ局は地域の警察と犯罪防止に関する協定を続々と締結しています。それらの協定により、特殊詐欺への注意喚起に加え地域の見守りのような防犯活動が行われています。地域に根ざすケーブルテレビ局だからこそ、特殊詐欺防止を含めた地域の安全を守る大きな役割を担っているのです。
「迷惑電話自動ブロック利用者の96.2%が有効だと感じているというアンケート結果もあり、また多くのお客さまから、安心して生活できるという好評の声をいただいております。今後も、こういった特殊詐欺のような事象に対して敏感であるよう心掛け、問題が発生したらその解決に向けて迅速に対応できる施策を企画し、地域創生にもつなげていきたいと思っています」
「迷惑電話自動ブロック」は追加機器なしで利用できるサービス
「迷惑電話自動ブロック」サービスは、KDDIが全国のケーブルテレビ局と提携して提供している「ケーブルプラス電話」のオプションサービスです。その機能はシンプルでありながら非常に強力なもの。同サービスは、契約している固定電話に詐欺電話や迷惑電話がかかってきた場合に、自動的にブロックし、そもそも電話がつながらないようにします。
なかなか撲滅することが難しい特殊詐欺を含む迷惑電話について、KDDIは長きにわたってその対策に取り組んできました。
迷惑電話対策サービスの企画・開発に関わってきたKDDI パーソナル事業本部 パーソナル企画統括本部 CATVソリューション推進部 西沢雅也は「この迷惑電話自動ブロックサービスは、専用機器、アプリ、事前登録等が不要で固定電話への迷惑電話を自動的にブロックするサービスです」と話します。
(2).jpg)
迷惑電話と長く戦ってきたKDDI
ケーブルプラス電話ではサービス開始当初から「迷惑電話撃退」というオプションを提供していましたが、これは、かかってきた電話を迷惑と感じたお客さまが、ご自身で登録することにより、以降、その登録した発信者番号からの着信をブロックするサービスでした。
また、KDDIは、2015年にはケーブルテレビ局のお客さま向けに「迷惑電話光ってお知らせ」というサービスの提供を開始しましたが、「発信番号表示」オプションの契約が必要なことに加えて専用機器を設置する必要がありました。
「特に高齢のお客さまにとっては、番号の登録や機器の接続は面倒に感じられてしまうものです。お客さまに負担をお願いすることなく、簡単に導入できて、安心して固定電話をご利用いただけるようにするサービスが、この『迷惑電話自動ブロック』です。月額利用料は月額330円(税込)で、全国のケーブルテレビ局でケーブルプラス電話をご利用されているお客さまなら誰でも利用でき、専用機器の設置や電話機の交換は不要です」
「迷惑電話自動ブロック」は、トビラシステムズ株式会社が提供する迷惑電話フィルタを活用しています。外部から電話がかかってくると、その発信者番号をネットワーク上で迷惑電話番号リストと照合、登録されていれば着信をブロックしてお客さまにはおつなぎしません。迷惑電話番号リストには、トビラシステムズ社が警察やお客さまから独自に収集した約3万件もの電話番号が登録されていて日々更新しており、そのブロック率は約97%となっています。
(2).jpg)
「高齢のお客さまは声色を使った詐欺師たちの会話を信じてしまう可能性がありますので、被害防止の対策としては、そもそも詐欺師とお客さまが話す機会を絶つことが有効だと考えています」
2022年2月からサービスを開始した「迷惑電話自動ブロック」サービスは、順調に導入数が増加しています。サービス利用者が増えたことにより、迷惑電話が多い地域やどんな時間帯に迷惑電話がかかってくるかといった統計データを取得できるようになり、その効果をよりアピールできるようになっています。
「KDDIとしては、地元警察と防犯協定を結ぶなど、地域に根ざした取り組みを行っているケーブルテレビ局と連携し、その取り組みに協力しながら、地域に密着したサービスを提供していきたいと思っています。そして、『迷惑電話自動ブロック』を多くのお客さまにご利用いただき、特殊詐欺被害防止に貢献したいと思っています」
安心安全な生活へ。地域・企業と連携し迷惑電話への対抗策を講じる福岡県警察
日本全国で被害額、認知件数ともに増加している特殊詐欺。福岡県警察は、その特殊詐欺による被害拡大防止に向けて、KDDIやケーブルテレビ局などと協定を締結し、特殊詐欺防止に有効な防犯機能サービスの普及啓発のための取り組みや被害を防止するための広報啓発を連携して行っています。
福岡県警察本部で特殊詐欺予防対策を担当する生活安全部 生活安全総務課 犯罪抑止対策室 巡査部長の安部喜代さんは、特殊詐欺について次のように話します。
「特殊詐欺は、被害者に電話をかけるなどして対面することなく信頼させ、指定した預貯金口座への振込みその他の方法により、不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪と定義されていますが、分かりやすく申し上げますと、犯人が公務員や銀行員、百貨店職員など色々な者になりすまし、電話やメールなどを使って、被害者の方から大切な財産(お金)をだまし取る犯罪のことをいいます。また、犯人が色々なニセ者になりすましてお金をだまし取ることから、福岡県では2014年から『特殊詐欺』のことを『ニセ電話詐欺』*1と呼んで、県民の方々に広報しています」
*1 ニセ電話詐欺:福岡県における特殊詐欺の広報用名称
(2).jpg)
全国的に増加する特殊詐欺。地域と連携し被害防止対策を進める
近年の特殊詐欺の状況について、安部さんは「全国的に特殊詐欺は増加しており、福岡県内に限りますと、特殊詐欺の発生は、2017年以降は減少傾向でしたが、2021年からは増加に転じ、2023年10月末時点の発生状況(暫定値)は、認知件数466件、被害額9億976万円で、件数・被害額ともに昨年の同じ時期と比べて増加しており、大変深刻な状況です。また、手口別にみると、本年に入って『オレオレ詐欺』と『架空料金請求詐欺』が特に増加している状況です」と説明しています。
福岡県警察は被害防止に向けて、民生委員の方を始めとした高齢者関係機関・団体と連携した各種広報啓発活動のほか、被害者の方が利用する機会の多い、金融機関やコンビニエンスストアと連携した声掛け阻止活動の対策を行っています。また県民運動として、金融機関、コンビニエンスストア、自治体、小売業、老人クラブ、さまざまな企業・団体の方などが参加する、だまされてしまった被害者への声掛け活動などにより、被害阻止活動を行う「ニセ電話気づかせ隊」を発足しています。
県民の安全・安心に向けて、特殊詐欺防止へ各企業とも連携
福岡県警察では固定電話通信事業者各社と、2022年10月以降、順次「ニセ電話詐欺を始めとした犯罪の被害防止に関する協定」を締結し、各社と連携して、特殊詐欺の被害防止に努めています。KDDIやケーブルテレビ局の各社とは、協定締結を契機に、各社が提供されている迷惑電話を自動で着信拒否する「迷惑電話自動ブロック」のサービス普及に向けた取り組みなどを協働して行っています。
「特殊詐欺の被害は全国的に増加の一途をたどる深刻な状況に置かれています。この状況を打開するためには、被害者の多くを占める高齢者一人一人の注意力を高める取り組みも大事ですが、高齢者を取り巻く環境への対策が重要だと考えています。このため、機械的・自動的な仕組みによって、高齢者の方々がそもそも詐欺の電話を受けずに済むように、犯人からの電話を遮断する電話機対策について、通信事業者を始めとした皆さま方と連携して取り組んでいかなければなりません。加えて、金融機関・コンビニエンスストアの皆さま方と連携した声掛け阻止活動にも一層取り組んでいかなければならないと考えています。特殊詐欺の撲滅に向け、こうして社会全体で取り組んでいくことで、県民の皆さまの安全・安心が確保されるものと考えています」