岩手県の三陸海岸沿いを走る三陸鉄道。トンネルを抜けた先に広がる太平洋は、息をのむ美しさ。風光明媚な沿線の街では海の幸や山の幸を楽しめます。
1984年に開業した三陸鉄道は、これまで地元住民の足として、また観光客が景色を楽しみながら観光スポットを巡るための手段として重要な役割を担ってきました。
東日本大震災や2019年の台風19号、コロナ禍といったたび重なる災害を乗り越えてきた今、三陸鉄道は観光客の誘致に力を入れています。
「三陸沿岸地域の魅力をよりリアルな形で伝えたい」―。そんな思いから、三陸鉄道とKDDIが制作したのがスマートフォンでリアルな擬似旅行体験ができる「au XR Door」のコンテンツです。
仮想現実の技術を使ったau XR Doorは、VRゴーグルを使うことなく、国内外の観光スポットに瞬間移動するような感覚を体験できるコンテンツ。「au XR Doorで巡る、三陸鉄道の旅」では、仮想の車両ドアから列車に乗り、車窓から見える風景、観光地の雰囲気を360度のパノラマで楽しめます。
.jpg)
最新の技術で観光地の魅力をよりリアルに伝える―。KDDIは、思わず現地に足を運びたくなるコンテンツづくりで観光地の方々を支援します。
三陸鉄道の魅力を伝え、足を運びたくなるように―au XR Doorが果たす役割
スマートフォンを空間にかざすとドアが現れ、ドアに向かって歩いていくと、その先に国内外のさまざまな景色が広がる―。
KDDIが開発した「au XR Door」は、家にいながらにして観光地を旅する気分を味わえるコンテンツです。仮想現実の技術を使っており、スマホを動かすとそれに追従して視野が変わる360度の景色を楽しめます。
2023年3月27日、新たに加わったのが「au XR Doorで巡る、三陸鉄道の旅」。ストーリー仕立てで旅する気分を味わえる初のコンテンツとして制作されました。
三陸鉄道のホスピタリティに共感、技術で応援
三陸鉄道とKDDIがau XR Doorのコンテンツを制作したのは、KDDI東北総支社がCSR活動「+αプロジェクト」を通じて三陸鉄道に寄付したことがきっかけでした。
「三陸鉄道さんは、クラウドファンディングで資金集めをしたり、町おこしのためのさまざまな企画を実施したりと復興に向けた取り組みにとても積極的でした。寄付を地域のために役立ててくれると思ったのです」
KDDI 東北総支社で管理部の部長を務める吉田真也は、こう振り返ります。
.jpg)
「駅のホームで寄付の贈呈式を実施してくださったり、寄付のお礼にKDDIロゴの入ったヘッドマークをつくってくださったりと、三陸鉄道さんの心のこもった対応にとても感動しました。観光施策のひとつ一つにも温かいおもてなしの心があり、応援したくなるんです。何かの形で、観光客を増やすためのお手伝いができればと思っていました」(吉田)
.jpg)
三陸鉄道の旅を360度の風景で再現
震災やコロナで観光客の足が遠のいてしまった三陸鉄道の魅力を、技術の力で伝えることができないか。そう考える中で浮上したのが「au XR Door」でした。
au XR Doorを選んだ理由について、KDDI 東北総支社 管理部の川口亜希子は次のように話します。
「au XR Doorの“未知の世界に行けるドア”が列車の車両ドアになる、というのは、面白いですよね。風光明媚な景色を楽しんだコンテンツ利用者の方々に、『こんなにきれいなところなら、足を運んでみよう』と思ってもらえるのではないかと考えました」(川口)
三陸鉄道の沿線には見どころがたくさんあり、これまでのau XR Doorのフォーマットでは魅力を伝えきれなかったことから、三陸鉄道のコンテンツは新たなフォーマットで制作することになりました。
.jpg)
「au XR Door内にある既存のコンテンツは、ドアの向こうに360度の景色が広がるというものが主流でしたが、三陸鉄道さんとコンテンツづくりの話をはじめてみると、紹介したい観光スポットが次から次へと出てきました。それなら列車に乗って車窓から風景や観光スポットを楽しめるストーリー仕立てにしよう、ということになりました」(川口)
そうして完成したのが、三陸鉄道の車窓から浄土ヶ浜、吉浜湾、久慈、宮古などの景色をナレーターの解説付きで楽しめるコンテンツです。車内の様子も360度の映像で見ることができ、スマホの向きを変えれば、反対側の車窓の風景も楽しめます。
「コンテンツ内には、三陸グルメや三陸鉄道直営店舗のさんてつ屋で使えるお得に楽しめる割引クーポンをご用意しております。ぜひ、三陸地方に足を運んでほしいですね」(吉田)
三陸鉄道の魅力を伝えるために
「三陸鉄道の魅力を知ってもらうためにも、多くの方々にコンテンツを試して頂く活動に取り組んでいます」川口はこう話します。
7月には岩手県宮古市で開催された子ども向けのイベントでau XR Doorの体験会が実施され、子どもたちが驚き、喜ぶ姿がみられました。
.jpg)
「コンテンツの認知度を上げる活動には、岩手県の職員の皆様、岩手県公式VTuberの方や三陸鉄道さんなど、多くの方々にご支援いただいています。もっともっと三陸鉄道さんの魅力を広く知っていただけるよう、そして、三陸地方に足を運んで頂けるようみんなで広めていきたいと思っています」(川口)
三陸鉄道ならではの魅力をXRでどう伝えるか―au XR Doorの挑戦
部屋の中に出現した仮想のドアをくぐると、そこには国内外の観光地が広がり、スマートフォンをかざすと360度の風景を楽しめる—。2020年に登場した「au XR Door」は、VRゴーグル不要で仮想現実の世界を体験できるアプリです。
「部屋の中に現れる仮想のドアに向かって実際に歩き、扉を通り抜けるという『身体を伴う実体験』ができるのがポイント。距離や時間を超えて、瞬間移動するような感覚を味わえます」こう話すのは、au XR Doorのコンテンツ制作を手掛けるKDDI 事業創造本部 Web3推進部の北崎修央です。
.jpg)
2023年3月、このau XR Doorの新たなコンテンツとして三陸地域の魅力を発信する「au XR Doorで巡る、三陸鉄道の旅」が登場しました。
「今回の取り組みでは、三陸鉄道の魅力を伝えるために、新しい形のコンテンツにチャレンジしています」(北崎)
体感を伴うXRだからこそ実現できる表現を求めて
これまでau XR Doorは、仮想のドアを通り抜けると、その先に360度の景色が広がるというものでした。
まだ見ぬ場所にワープするような感覚を味わえるのがau XR Doorの魅力ですが、この手法では駅から駅へと走る「鉄道ならではの魅力」を伝えきれないのではないかという懸念もありました。
そこで今回は、仮想のドアを列車の車両ドアに設定し、列車に乗り込んで旅をするストーリー仕立てのコンテンツを制作することになりました。
完成したコンテンツは、スマホを空間にかざすと、三陸鉄道の車両がまるで駅にいるかのように目の前にすべりこんできます。車両ドアから中に入ると宮古駅に到着。ホームでマスコットキャラクターの「さんてつくん」が出迎えてくれます。
(1).jpg)
再び列車に乗り込むと、そこは三陸鉄道の車内。車窓には実際の風景や沿線の観光スポットの紹介映像が流れ、旅行気分を盛り上げてくれます。
車両に乗り込む瞬間のリアルさを追求
仮想のドアを車両のドアに設定するのは初めてだったことから、制作にあたってはいろいろと工夫を凝らしたと北崎は話します。
「列車が走ってきて目の前に止まる時の列車と人との距離は、うまく設定しないと轢かれそうで怖いですよね。列車に乗ってからホームに降りるまでの距離も、実際に歩いた時に違和感を覚えないようにしないと、現実に引き戻されてしまいます。細かいズレが出ないように注意しながら、列車に乗った時の感覚をリアルに再現することを目指しました」
(1).jpg)
身体を使うアプリだからこその一貫性を重視した結果、これまでにない仮想観光体験ができるコンテンツが誕生しました。
au XR Doorには、座った状態でVR空間を楽しむ「プチモード」と、歩き回りながらVR空間を楽しむ「アクティブモード」がありますが、北崎は「ぜひ、アクティブモードを試してほしい」といいます。
「実際に列車に乗り込む感覚や、ホームに踏み出す感覚は、XRコンテンツならではの体験です。ぜひ、楽しんでみてください」(北崎)
仮想のドアの先にある「本物の三陸」を楽しんでほしい―三陸鉄道
鋸の歯のようにジグザグに入り組んだ海岸線、尖った白い岩と紺碧の海、松の緑のコントラストが美しい浜辺、高さ30メートル超の大きな橋梁―。三陸の海岸線を縫うように走る三陸鉄道に乗ると、このような美しい風景を楽しめます。
沿線には、新鮮な海の幸を楽しめるお店や温泉、海水浴場など魅力的な観光スポットも多く、観光客から人気を博しています。有名な「ウニを詰めた牛乳瓶」発祥の地は三陸鉄道沿いの山田町といわれており、そこから派生した「瓶ドン」(瓶に入った海鮮をかけて食べる丼)は宮古の人気グルメとして知られています。
1984年に開業した三陸鉄道は、これまで度重なる試練を乗り越えてきました。2011年3月11日の東日本大震災で甚大な被害を受け、列車の運転ができない状態に陥りました。2014年に全線復旧を果たしたものの、2019年の台風19号で大きな被害を受け、全体の7割が運転できない状態になったのです。
2020年3月に全線復旧を果たした直後、今度はコロナ禍に伴う緊急事態宣言が発出され、観光客が減少。コロナが落ち着いた今も、その影響から抜け出せていないのが現状です。
三陸鉄道と沿線地域の課題について、三陸鉄道株式会社で広報を務める三河和貴子さんは、こう話します。
(1).jpg)
「新型コロナウイルス感染症が5類に移行し、少しずつ観光客の方々が戻っていますが、まだコロナ前の水準には及びません。三陸の魅力をアピールして、今まで以上に多くの方々にこの地を訪れていただけたらと思っています」(三河さん)
ローカル線ならではの素朴な魅力も再現
KDDIが三陸鉄道に「au XR Door」のコンテンツ制作を提案したのは、東日本大震災の被災地支援の一環としてでした。
「KDDIさんが岩手での被災地支援を検討する中、弊社の復興の取り組みをご評価いただいてコンテンツ制作の話が始まりました」こう話すのは、三陸鉄道総務課で副主任を務める前田邦明さんです。
.jpg)
スマートフォンを動かすことで、360度の景色を楽しめるau XR Doorの説明を聞いた時、前田さんと三河さんは紹介したいさまざまな風景が頭に浮かんだと話します。
「リアス線の2つの大きな橋梁は、ドラマのロケ地に使われたり、ポスターになったりする景色の美しい場所です。恋人たちの聖地といわれる恋し浜、季節ごとに異なる景色を楽しめる浄土ヶ浜など、鉄道沿線には見どころがたくさんあるので、アプリで紹介できると聞いてとても楽しみでした」(三河さん)
「サーフィンで有名な浪板海岸も白い浜と青い海のコントラストがとても美しい場所で、リアス線のみどころのひとつです。ローカル鉄道ならではの素朴な雰囲気の車内をコンテンツでどう再現するのかも楽しみでした」(前田さん)
.jpg)
苦難を乗り越えて復興を遂げた三陸鉄道と、その沿線の魅力をよりリアルに伝えたい―。そんな両社の思いから、三陸鉄道のコンテンツはau XR Door初のストーリー仕立てで制作することが決まりました。
「列車の座席に座っているような感覚で、車窓からの風景や観光スポットの雰囲気を楽しめるコンテンツをつくることになりました」(前田さん)
制作にあたっては、三陸鉄道が貸切列車を用意し、1日2~3往復して車窓からの風景や観光スポットを撮影。トンネルを通過する際の窓の映り込みも再現するなど、リアルな表現にこだわりました。
「完成したコンテンツは、想像していたよりも自然に仕上がっていて驚きました。車窓を流れる風景もはめ込み動画とは思えない出来映えで、車内の雰囲気も私たちがいつも見ている光景がうまく再現されていました」(前田さん)
企画列車で三陸を知り、楽しんでほしい
前田さんは、au XR Doorで三陸鉄道や沿線の街に興味を持った方々に、ぜひ、この地に足を運んでほしいと話します。
「コンテンツのドアの先にある三陸を、ぜひ、リアルで楽しんでほしいですね」(前田さん)
前田さんと三河さんのおすすめは、三陸鉄道の職員たちがアイデアを出し合って展開している「企画列車」です。三陸の新鮮な海の幸を楽しみながら三陸の絶景を楽しめるプレミアムランチ列車、沿線の菓子店とコラボしたスイーツ列車など、楽しい企画列車が走っています。
「森の中に出没するシカを間近で観察できる、ナイトジャングルトレインも人気です。シカが多い夜の時間帯に運行する臨時列車で、盛岡市動物公園と協力して企画しています」(三河さん)
「震災から復興までの道のりをたどる震災学習列車も、知ってほしい取り組みのひとつです。防災について考えるきっかけになればと思っています」(前田さん)
.jpg)
観光地の魅力を、最新技術でリアルに表現する―。KDDIは観光地の方々とともに、観光地の情報を発信します。