いま日本では、都市部に医療機関が集中する一方、地方では医療従事者や医療機関が不足する「医療格差」が問題になっています。また、健康増進のために大切な運動習慣が人々の間に根づいていないことも課題です。
それを踏まえてKDDIでは、年齢、居住地、健康状態などにかかわらず、あらゆる人が健康増進と医療支援を行える環境を目指して、スマートフォンを活用した「auウェルネス」を展開しています。
(1).jpg)
本来、健康増進と医療支援は不可分のはずですが、両者をつなぐサービスがなく、分断されているのが現状です。そこでauウェルネスでは、スマートフォン向けのアプリを活用することで利用者の運動習慣をサポートするとともに、オンライン診療やオンライン服薬指導などの医療サービスを受けられるようにしています。
地域の医療格差を埋めるとともに、誰もが健康を保ちながら医療を公平に受けられる社会を実現することがKDDIの目標です。今回はauウェルネスでの取り組みをご紹介します。
*1:オンライン診療はサービス利用料(330円/回)のほか、診察代金などがかかります。オンライン服薬指導をご利用いただくにはオンライン診療の受診が必要となります。別途処方薬代金や処方薬を配送でお受取りされる場合の配送料金などがかかります。診療受診時、次のものをご用意ください。○保険証、○スマートフォン、○クレジットカード、○〈初診のみ〉顔写真付きの身分証明書(運転免許証、パスポート、学生証など)、○〈初診のみ〉診療情報。
生涯現役社会を実現するために
日本の高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)は30%近くに達しており、さらに団塊の世代がもうすぐ75歳以上の後期高齢者となります。そのような中、医療費を抑えつつ、どのように生涯現役社会を実現するかが課題になっています。
ただ生命が維持されている状態ではなく、一人一人が自立した生活を送れてはじめて、生涯現役社会は達成されるのです。そのため治療や介護だけを充実させても不十分で、いかに日々の健康を支えるかが重要になります。
しかし、ここで問題になるのが医療格差です。日本の医療体制は都市部集中型であるため、地方住民は十分な医療を受けられないケースが増えつつあります。また、健康予防に関するサービスやアドバイスを受けることも、地方住民にとっては難しい状態です。
KDDIの田口健太は「生涯現役社会を実現するには、患者となった方に治療や介護を提供するだけでは不十分なのです」と話し、こう続けます。
「検診で警告が出た方や現在は問題ない方も含め、多くの人が健康的な生活を続けていけるようにしないと、生涯現役社会のような世界観は実現できません。より多くの人に対して、健康的な生活をアドバイスしながら適宜医療へとつなげていくためにも、スマートフォン起点でデジタルを上手く使う必要があります」(田口)
.jpg)
そのためのアプローチが「auウェルネス」です。KDDIが抱える多くのユーザーに対し、スマートフォンアプリを介して健康に関するアドバイスを与えたり、健康増進サービスや医療サービスへつないだりすることで、大きな社会課題を解決しようと取り組んでいます。
もともとauウェルネスはエクササイズ機能による健康増進がメインのサービスでした。しかし、新型コロナウイルスの影響による規制緩和などを受け、オンライン診療にも着手することになりました。日々のヘルスケアだけではなく、緊急時には医療機関へ患者さまをつなげるために、機能を拡充していったのです。
健康増進、オンライン診療、オンライン服薬指導をワンストップで提供
田口は「多くの医療機関とつながってオンライン医療サービスを受けられることが、auウェルネスの大きな強みです」と話します。
auウェルネスでは全国の5~6,000の医療機関の中から、自身の症状に合ったクリニックを選択してオンライン受診が可能です。さらに、診療後の処方箋を用いてオンライン服薬指導を受け、薬局から処方薬を宅配便で受け取るという一連の医療サービスもオンラインで完結できます。
「このような医療体験はほかのサービスでも提供されていますが、KDDIのauウェルネスではそこへさらに付加価値を与えています。例えばauウェルネス内のリンクからLINEアカウント『オンライン薬局 with auウェルネス』を登録していただければ、薬剤師さんとオンラインチャットが可能になります。現在はさらに開発を進めており、LINEを使わずにauウェルネスだけでチャット相談やオンライン服薬指導を受けられるようにする予定です」と話すのは、KDDIの石川洋平です。
.jpg)
日常の中で、医療に限らず健康意識を高めていくことが、auウェルネスの狙いの1つです。
「医療機関にかかるタイミングを適切に捉えてつないでいくことも、auウェルネスの役目であると考えています」(田口)
auウェルネスは、毎日の歩数計測、消費カロリーの記録、体重の推移などを記録し、医療サービスの手前におけるユーザーの健康管理も担います。日常のヘルスケアからオンライン医療、薬の配送までをワンストップで行えることこそが、auウェルネスの大きな特徴なのです。
「現在の若者は、生まれたときからスマートフォンがある、いわゆるデジタルネイティブです。そういったユーザーにとって、アプリでの健康管理やオンライン診療サービスは、ごく普通のことになっていくでしょう」(石川)
「今後はauウェルネスを介して、ユーザーそれぞれの日常活動や健康状態に合わせた、パーソナルな健康増進および医療体験の提案をできるようにしていきたいです」(田口)
エンジニアたちが語る「健康増進」と「医療支援」の違い
auウェルネスは、健康増進から医療支援までをワンストップでサービス提供していますが、それらはアプリの機能としてはまったく異なる方向性です。
「『健康維持に努めましょう』といってエクササイズ機能をご案内することと、『体調が優れない方はこちらへどうぞ』と医療サービスへつなぐことは、それぞれ両極に位置しています。それらの体験を1つのアプリでシームレスにお届けしようと日々努力しています」と話すのは、KDDIの中西 剛です。
.jpg)
技術力によって健康増進と医療支援をまとめたとしても、それを利用者の方々に使っていただかないことには意味がありません。KDDIの青西孝文は「例えばポイント機能のように、利用を促す工夫を盛り込みながら、アプリの完成度に日々磨きをかけている状態です」と、ユーザーの生活の中へアプリが自然に入っていくための試行錯誤を語ります。
.jpg)
日本における医療格差の解消がKDDIの大きな目標です。健康や医療にまつわるサービスをワンストップで提供してこの目標を達成するために、auウェルネスにはパートナー企業の技術を数多く盛り込みました。
「健康増進や医療サービスなど、各領域でさまざまな企業が特定のサービスを提供しており、KDDIがそれぞれをつなげて一連の体験としてお客さまに提供することが重要だと考えています。技術的な取り組みだけでカバーするのではなく、パートナー企業と信頼関係を結び、連携しながらサービスを広げている最中です」(青西)
データドリブンとパーソナライズ化が今後のポイントに
健康増進と医療をつなげるために、KDDIは新たな取り組みも行っています。その1つが、Apple WatchとKDDIの健康アプリ「ポケットヘルスケア」を組み合わせた、心房細動の早期発見を目指す実証事業です。
この実証事業ではApple Watchに搭載されたプログラムを利用して装着者の心電図や不規則な心拍を測定、そのデータから心房細動の兆候を検知し、医療機関へつなぎます。
.png)
「auウェルネスのサービスを拡充するにあたっては、こうした実証を重ねて、サービス化、システム化していくことが非常に重要です」(青西)
Apple Watchのように医療機器として認められた機器と連携することはお客さまへより価値のあるサービスを提供するきっかけになる、と中西は話します。
「自分の体調をあまり把握していない方も多いでしょう。そのような方でもApple Watchとauウェルネスを日常的に使うことでアプリが異変を察知し、本人に自覚がなくても医療へとつないでいくことが可能になります」(中西)
利用者に対して自然な形で行動変容を促すことで、健康増進ひいては医療へつないでいくことができます。また今後は、アプリ内の表示も工夫し、シニア層でも使いやすいように調整していく予定です。
「将来的には、お客さま自身のさまざまなデータに基づきパーソナライズ化されたサービスを目指したいです。『最近はこういったものを多く食べ、体調がこういう具合だから、今日はもっと運動してみませんか』といったやりとりをお客さまとできるようにしたいと考えています」(中西)
「生活習慣を改善するにしても、利用者の方々を一律で指導するわけにはいきません。一人ひとりの状態を正しく見極めた上で、その人に適した健康指導を展開していく必要があります。そのようなことも含めてアプリが個々の利用者に対応できるようになれば、健康な人が世の中に増えていく、そう期待しています」(青西)
auウェルネスだからこそ、メンタル不調な現代人を医療につなげられる
現在の日本社会において、メンタルにトラブルを抱える人は少なくありません。厚生労働省の調査によれば、いわゆる「5疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患)」の中で、精神疾患が最も患者数が多いとされています。あらゆる人々がいつまでも健康的に、生涯現役で人生を送るためには、身体だけでなく精神のケアも欠かせないのです。
「オンラインを活用し、メンタルケアが必要な人と医療機関とをつなぐ手段として、日本中をつなぐネットワークインフラを有するKDDI、そしてそのKDDIが展開するauウェルネスは非常に適していました」と話すのは、ファストドクター株式会社 CFO/メンタルヘルス担当役員の中川修平さんです。
.jpg)
「ファストドクター for KDDI」を利用することで、メンタルに不調を感じているユーザーは、受診の必要性や適切な受診先がわからない場合の相談先として、自宅にいながらいつでもテレビ電話でファストドクターの提携医療機関に相談できます。
KDDIの田口健太は「現役で働きながらもメンタルに不調を抱えている方ですと、日中は忙しく、医療へのアクセスが難しいです。そのようなユーザーこそauウェルネスを活用してオンライン診療の機会を得ていただきたい」と話します。
.jpg)
また中川さんは、精神疾患とオンライン診療の相性の良さにも注目しています。
「オンラインでの診療は時間の融通が利きやすく、また初めての受診が不安な方の心理的負担が軽くなりやすいなど、患者さま側のメリットが多くあります。医療側としても、カメラ越しに画像や会話のトーンを確認できるので、対面の場合と比べても差を感じることなく診療できます」(中川さん)
オンラインを通して薬剤師の真の強みを発揮
KDDIはPharmaX株式会社とも提携し、「オンライン薬局 with auウェルネス」を提供中です。このサービスによってユーザーは、薬剤師からのオンライン服薬指導、そして最短当日での自宅や職場での処方薬受け取りが可能になります。
PharmaX株式会社 代表取締役の辻 裕介さんは、患者にとって薬局は重要な存在であると話します。
.jpg)
「薬局とそこに所属する薬剤師は、処方薬だけでなく、市販薬や健康食品などに関するアドバイスなど、患者さまに対してさまざまな価値を提供できます。そういった薬剤師や薬局が本来持っている強みを最大化して患者へ伝える手段として、オンラインが有効であると考えました」(辻さん)
PharmaXはテクノロジーと薬剤師の力による患者中心の薬局体験の提供を目指しています。そしてKDDIは、auウェルネスによるデジタルな医療体験の提供を目指しています。
「auウェルネスによる一貫した医療サービスの提供には、ファストドクターさんと取り組んでいるような診療部分だけでなく、薬局や薬剤師さんの関与も不可欠です。すでにオンライン薬局を提供し、多くの知見を持つPharmaXさんにパートナー企業として協力いただくことで、auウェルネスによるデジタルな医療体験の実現に近づけたと確信しています」(田口)
医療が断絶しているからこそ、KDDIが“ハブ”となる
auウェルネスでは、ユーザーの日常的な健康予防から医療体験までを一貫して提供することを目指しています。
「アプリ内で医療機関側と薬局側が断絶してしまっていると、オンラインならではの体験が損なわれかねません。われわれKDDIが1つの“ハブ”として医療から薬局までの滑らかなオンライン医療体験を構築する、それがauウェルネスの役割だと考えています」(田口)
日本の医療にはいくつかの課題があると言う中川さん。
「都市部に医師や医療機関が集中している一方で、地方部は医師不足や診療科の偏在などが加速しています。また、現状では病院間で医療情報が連携されていないため、患者さまは病院を変えるたびに既往歴や現病歴を説明しなくてはなりません。こういった課題には、分断された医療情報をつないで対処していく必要があり、その媒体、基盤としてauウェルネスがあるのだと思っています」(中川さん)
辻さんもKDDIの役割を高く評価しています。
「私はKDDIさんを“指揮者”だと思っています。Web問診、オンライン診療、オンライン服薬指導さらには薬の受け取りやアフターフォロー、それらをすべて提供できる企業は存在しません。だからこそ、さまざまなプレイヤーを集め指揮を執り、それぞれの体験をつなげていくKDDIさんは貴重な存在です」(辻さん)
ハブであり指揮者であると目されているKDDI自身も、パートナー企業の重要性を話しています。
KDDIの有馬 優は「パートナー企業様とどのように提携してサービスを拡大するか、どうすれば社会実装に向けたサービス提供を実現できるかを日々考えています。KDDIの強みは、お客さまとの接点となるさまざまなアセットを持っていることです。それを活用して、パートナー企業様が持つ有意性をお客さまに提供していきます」と語ります。
.jpg)
「将来的には、体調に変化が生じたときにauウェルネスがユーザーを適宜医療へつなげるようにしたいと思っています。そして、それには信頼できるパートナーの方々とわれわれが“つながる”こと、パートナー企業のサービスを“つないでいく”ことが必要です」(田口)
.jpg)
撮影場所:WeWork 東京ポートシティ竹芝