日本の、そして地球の未来を担っている子どもたちの成長を支えている学校教育。GIGAスクール構想によって教育現場のICT化が進みつつあるものの、解決しなければならない課題もいくつかあります。
その一つが、学校現場の働き方改革です。教職員は、膨大で煩雑な「校務」を処理しなければならず、それを時間外労働で補わなければならいことも少なくありません。KDDIでは、「教職員の業務を効率化し、“余白”を返すことで、一人でも多くの児童生徒たちと向き合う時間をつくりだすことに協力したい」という思いから、学校現場の働き方改革のご支援に力を注いでいます。
具体的には、モチベーションワークス株式会社が展開するフルクラウド統合型校務支援システム「BLEND」による効率化。さらには、職員室以外のどこからでも安心・安全に業務ができる「マネージド ゼロトラスト」をご提供し、「BLEND」と組み合わせることで教職員の効率的かつ柔軟な働き方を実現します。
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GIGAスクール構想によって、教育現場のICT化が進行中のいま、教職員の働き方改革や教育DXも合わせて進めていくことが、未来を担う子どもたちにとっても大切なことだとKDDIは考えています。
教育は、社会の未来を創る仕事
KDDIではこれまでも学校向けに、地域に根差した事業活動を展開するKDDIまとめてオフィス(KMO)を中心に、通信環境の提供やタブレット端末の納入などを行っていました。
「教職員が『校務(学校事務)』と称される事務に忙殺されていることを知って、常態化した長時間残業の解消こそが日本の未来を創るために必要な取り組みだと感じました。いままでの通信環境やデバイスの提供から一歩踏み込んだ、より本質的に学校現場の課題を解決するサービスを展開していきたいと思ったのです。学校の先生は『子どもたちの憧れの職業』です。そうあるためにも、授業や指導で生徒一人ひとりと真摯に向き合う時間的・心理的余裕が必要だと思います」と話すのは、KDDIの山田健人です。
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GIGAスクール構想のもと、教育現場にはさまざまなICT機器やソフトウェアが導入されました。しかし使いこなすには習熟や研修が必要であり、多忙な教育現場では利用がなかなか浸透していません。
「なぜだろうと学校現場を視察し、教職員のご意見を聞いてみると、導入されているシステムが教職員の業務に則した設計になっておらず、紙ベースで行われていた業務が単にデジタル化されただけであったり、さまざまなシステムが乱立しており業務の効率化につながっていないということでした。出欠管理ひとつをとっても、先生方の立場に立って考えられていないもので、十分に活用しきれていませんでした。教育現場の実情をよく知り、先生との二人三脚で考えていかなければ、教育現場の本当のDXは達成できないと感じました」と、山田は振り返ります。
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KDDIが考える教育DXの3つのステップ
KDDIでは、教育DXを3ステップで進めていこうと考えています。
① インフラとなるICT環境の整備
② 教職員の働き方改革により、児童生徒と対話する時間をしっかり確保できる余白の獲得
③ 児童生徒が夢を切り拓いていけるような、一人ひとりに応じた個別最適なまなびの実現
しかし、KDDIの経験や知見だけでは、理想とするシステムを具現化できないとも感じています。教育現場に精通したパートナーが必要だということです。そうしたなかで出会ったのが、フルクラウド統合型校務支援システム「BLEND」を展開するモチベーションワークス社です。
BLENDを教職員にご紹介すると「乱立していたシステムをひとまとめにできる」「校務にかかる時間を減らせると思う」といった期待の声が数多く寄せられました。また、KDDIのチーム内でも、BLENDは元教員経験者など、業務を詳しく理解したメンバーが開発しており、学校現場のDXを実現するための最適なサービスであると評価しています。
すでに私立学校を中心として導入校は増え、具体的な成果が上がりつつあります。KDDIでは今後、長期的な取り組みを通じて公立学校への普及を推進していく計画です。
「公立学校の場合は自治体の教育委員会も同時に利用できる連携性や、年度末の異動にも対応できる柔軟性が大切です。もちろん、先生方がどこからでも業務ができる環境づくりや、児童生徒の個人情報を守るためのセキュリティも欠かせません。この点については、KDDIが企業のお客さま向けサービスで培ってきた『マネージド ゼロトラスト』が貢献できると考えています。」
教育DXの主役は、あくまでも学校です。KDDIは学校との共創を通じて、必要なソリューションを先生方とともに生み出し、教育DXに取り組んでまいります。その先には、教育関係者にとって長年のテーマである「個別最適な学び」や、政府が構想する起業家育成やイノベーション創出型人材の育成につながる学習モデルの実現があると確信しています。
“学びを止めさせない” ための情報セキュリティ
かつて教職を目指したことがあるというKDDIの坪田幸典は、「すばらしい先生との出会いこそが、人生をより良い方へ導いてくれます。だからこそ、セキュリティ技術や教育DXで教職員や学校を応援したい。教職員の方々の負担を軽減し、生徒と向き合う機会を増やして差し上げたいのです」と目を輝かせます。
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ネットワーク化が進んだ今日、学校の安心・安全を守るのが情報セキュリティの役割です。しかし従来型の「境界型セキュリティ」では昨今のサイバー攻撃を防ぎ切ることはできません。不正アクセスから情報を守る防御システム(ファイアウォールなど)をすり抜けて侵入されてしまった場合、パソコン内のデータや校務システムに蓄積されている各種の機微情報を守り切ることができないからです。
コロナ禍の影響で広く導入されたリモート授業やテレワークは、ネットワーク技術の進化の賜物です。平時には授業や校務で使えるこれらの技術は、広域災害が発生した場合の安否確認や迅速な業務再開にも貢献します。“学びを止めさせない”ための情報セキュリティこそが、これからの教育現場には不可欠なのです。
「侵入防御という考え方から、守るべき情報を常時監視して守り続けるという、運用に主眼をおいたセキュリティへの発想の転換が必要です。近年、先進企業で広まっている『ゼロトラスト』は、守る対象となる情報へのアクセスやデータの持ち出しをすべてチェックする考え方です。認証システムを通過したユーザーを無条件に信用するのではなく、『何も信用(トラスト)しない』を前提とすることで、水際での防御に威力を発揮します」と説明します。
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「とはいえ常時監視を実施すると、管理者は鳴り止まないアラート(警報)で休む暇がありません。そこで、アクセス解析技術やセキュリティ専門家による運用サポートを組み合わせる『マネージド セキュリティ』が解決策として選ばれています。KDDIでも、多忙を極める学校現場に向けて、技術と運用を一体化した『マネージド ゼロトラスト』を提供しています」

先生方の負担を少なくする「マネージド ゼロトラスト」
KDDIが提唱する学校向けの「マネージド ゼロトラスト」には、2つの目標があります。
1つ目は「制限させない」こと。セキュリティのルールによる束縛から先生方を解放し、のびのびとした授業の実現をお手伝いします。2つ目は「意識させない」こと。守られているのが当たり前の状態とすることで、IT機器やサービスを習得するお手間を掛けません。これがあるべき学校セキュリティの姿だとKDDIでは考えています。
「文部科学省は学校に適したガイドラインを定めています。改訂された最新版では、クラウドの利用に加えてゼロトラストも明記されました。KDDIには民間企業へゼロトラストを提供してきた多数の実績とノウハウがあります。この経験は『教育現場に適したゼロトラストのモデル』の具現化に役立っています」
例えば「プリントアウト不要」も、校務システムにおける1つのセキュリティです。印刷物は情報漏えいリスクが高く、システムやアプリケーション間のデータ連携が不十分なため、印刷と手入力が常態化していました。データ連携基盤と「マネージド ゼロトラスト」を組み合わせることで、利便性を高めながら学校内ICT環境を総合的に守ることが可能になります。
「校務をスマート化し、さらに、教職員に負担かけず、どこからでも安全にアクセスできる環境を整えることが、教育DXを次のステップに進める鍵だと考えています」と、坪田は意欲を示します。
フルクラウドだから、職員室以外からでも利用できる
「教育現場では、教職員の方々の長時間労働が続いています。ここ数年、日本の先生の忙しさは、むしろより激しくなってきています」と、モチベーションワークス株式会社 執行役員副社長 公教育営業統括責任者 兼 DX事業本部長の野本竜哉さんは話し、こう続けます。
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「もともとアナログな業務が膨大にあったところに、コロナ禍対応で子どもたちの健康管理、教室や校舎内の消毒作業などの負担が重くのし掛かっています。そうしたことが長時間労働になり、先生方には時間的・心理的な“余白”がないのです。先生方は次世代の教育のあり方を真剣に模索され、日々の事業や行事、保護者との関わりを深めるためにも『新たな知識・経験を得たい』とお考えです。それを阻む、慢性化した長時間労働のような『負』を是正するには、校務DXの推進による業務全体の効率化が必須です」
モチベーションワークスが開発したフルクラウド統合型校務支援システム「BLEND(ブレンド)」は、まさにこうした課題を根本から解決します。
「オンプレミス環境で運用する旧来型のシステムは、校内の特定の場所やPCからしかアクセスできませんでした。一方、BLENDはフルクラウドのため、先生は『いまいる場所』でシステムを利用できます。教室、職員室、あるいは自宅や修学旅行先など、自由な場所でリアルタイムに情報の登録・確認が行えます」
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「BLEND」が校務に要する時間を8割削減
ある学校では、生徒の出欠の入力・集計作業に要していた時間を計測したところ月間86.5時間がこの作業に掛かっていました。BLENDを導入し、再度計測してみると17.3時間。業務時間をおよそ8割も減少させることに成功しています。
また、従来型のシステムでは、先生が自分のPCで教材を作成しても、そのまま生徒へ配布することはできません。上長承認やシステム上の手続きを踏まなければ転送ができなかったのです。こうした連携性の低さもまた、先生方にとっては大きな負担になっていました。
BLENDはこの問題に対して、金融機関が実装するような高レベルのセキュリティを施すことで個人情報保護の徹底を目指しています。もちろん、画面の操作性においても快適性が追求されています。こうした「ユーザーである先生方に寄り添うシステム」を実現できているのは、モチベーションワークスに学校・教育業界の経験者が社員として多数在籍しており、BLENDの開発においても学校の実情に即することがポリシーとなっているからです。
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「出欠、成績、帳票、保健、入試など、先生方が管理すべき情報は多岐にわたります。これまでバラバラだったシステムを統合・連携したことで、本当の意味でのICT活用が始まると言えるでしょう」
より良い教育の実践には思想や理念だけではなく、日々の校務をどれだけ効率化できるかにもかかっています。野本さんは「BLENDが掲げているのは『課題解決集積志向』です。一つひとつの課題解決が未来の学校づくりにつながると信じています」と、自身の思いをお話くださいました。