KDDIは2022年9月13日、KDDIが運営する「au Style SHIBUYA MODI」にAI(人工知能)制御のロボットが、商品のピッキングから袋詰めまでをすべて行う「auミニッツストア 渋谷店」を併設オープンしました。
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本店舗は、商品デリバリーを提供するmenu株式会社と、小売店舗向けの自動化ソリューションを展開する株式会社ROMSとの共創・共同で開発した店舗です。お客さまがmenuアプリを使って商品を注文すると、商品の受け取り方法としてデリバリー(配送)、あるいはテイクアウト(店舗での受け取り)を選択することができます。
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「auミニッツストア 渋谷店」では、商品のピッキングや袋詰めを自動化しているだけではなく、商品棚や賞味期限の管理も自動化され、商品補充・回収時には必要なケースが自動で作業台まで運ばれます。これにより、商品補充・回収の作業に多くの工数と時間をかけずに済みます。
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また、すべての注文がmenuアプリを通して行われているため、オンライン上で在庫管理がされ、店舗の商品が売り切れるとリアルタイムにアプリに反映されます。
本店舗の仕組みを、小売業界が長く悩まされてきた労働力不足の問題の解決につなげていくべく、KDDIは取り組みます。
新しい買い物の形で描く未来の社会 ~ auミニッツストア 渋谷店に込めたKDDIの想いとは
新型コロナウイルス感染症の流行を境に、人々の消費行動のデジタルシフトが加速し、特に若い世代を中心に、スマートフォンを利用したデリバリーやテイクアウトのサービスが世の中に浸透しました。
そのような中で、小売店舗やコンビニエンスストアの新しい形態として注目を集めているのが、近隣へのスピーディな商品のデリバリーを前提とした店舗モデル「クイックコマース」です。KDDIの「auミニッツストア 渋谷店」は、そのクイックコマースを体現したコンビニエンスストアであると同時に、ロボットを使ったオペレーションの自動化によって省人化を徹底的に追求した店舗でもあります。

日本の小売業界は、少子高齢化・労働人口減少の荒波を真正面から受け、店舗における労働力不足やそれに伴う労働単価の上昇に悩まされています。そこでKDDIでは、2021年6月にフードデリバリーを中心にした即配サービスで豊富な実績を持つmenu社に資本参加し、クイックコマース事業を本格展開する体制を整えました。
「クイックコマースの実現によって、お客さまの利便性を追求するだけではなく、店舗オペレーションを自動化する仕組みも併せて実現し、労働力不足という小売業界の課題、ひいては社会課題の解決につなげていきたいと考えました。その考えをもとに次世代店舗の構想を練り上げてauミニッツストア 渋谷店をオープンさせたのです」と、KDDIの事業創造本部LX戦略部の武田裕子は説明します。

次世代店舗の構想づくりは2021年夏ごろから始まり、その作業にはmenu社とともに、店舗オペレーションの自動化ソリューションプロバイダーのROMS社も加わりました。
「実を言えば、クイックコマースのコンセプトを持ったauミニッツストアは、渋谷店のほかに、もう一店舗(東京・九段下店)あり、こちらはロボットを使った店舗ではなくモビリティ型(移動式)店舗です。その店舗を渋谷店に先立つかたちで2022年3月にオープンさせ、それと並行してmenu社、ROMS社と渋谷店の開発・開設を推し進め、システムを完成させていきました」
人が1日の店舗オペレーションにかかわる時間は30分以内
こうして完成した渋谷店では、menuアプリを通じて入ってくる注文がロボット側に伝えられ、ピッキングと袋詰めが自動実行されるほか、商品補充・回収の作業を効率化する仕組みも整えられています。そのため、人が1日の店舗運営にかかわる時間は30分以内に抑えられていると武田は語り、次のように今後を展望します。

「渋谷店の店舗運営を通じて、menuアプリとロボットとの連携やロボットによる自動オペレーションが問題なく機能することが実証されました。渋谷店では現在(2022年10月時点)、提携しているローソンやコストコの商品を中心に約100種の商品を取り扱っていますが、今後は、商品点数をより一層充実させていく予定です」

省人店舗の実現を支えるAI(人工知能)を活用したピッキングロボットとは
auミニッツストア 渋谷店における店舗オペレーションの自動化は、ROMS社が提供するソリューションによって支えられています。
ROMS社は2019年に設立されたスタートアップ企業です。ピッキングロボットなどのロボット技術と自動倉庫の技術をコアにした自動化ソリューションを、日本の小売事業者に特化した形で提供しています。

「日本の小売業が直面している労働力不足やそれに伴う労働単価の上昇はとても深刻な問題で、その問題から2018年頃にはコンビニエンスストアの24時間営業の停止やオーナーの廃業などが相次ぐようになっていました。そうした状況の打開にロボット技術で何とか貢献したいと考えたことが、当社を設立したきっかけです」と、システムインテグレーション部長 勝藤裕之さんは語ります。

同社がauミニッツストア 渋谷店に対して提供した仕組みは、menuアプリ経由で入ってくる注文に従い、商品をピッキングして袋詰めを行うロボットと、商品の補充・回収に必要なケースを自動で作業台に運ぶシステムで構成されています。
「こうした当社のシステムによって自動化された店舗は、大型の自動販売機であると考えていただければ理解が早いかもしれません。例えば、お客さまがスマートフォン(menuアプリ)で自分の欲しい商品のボタンを押すと、背後でロボットが動き、オーダーされた商品を袋に詰めて、お渡し、あるいは、お客さまのもとに配送な可能な状態にします。また、自動販売機でも品切れの商品のボタンには“品切れ”を示すサインが点灯しますが、auミニッツストア 渋谷店でも同様に、商品が品切れになると、その情報がmenuアプリにリアルタイムに反映されるようになっています」(勝藤さん)

ディープラーニングによるAIでロボットを制御
このように、ROMS社のソリューションによって実現されることはシンプルですが、それを支える仕組みには高度な最先端技術が使われています。例えば、ピッキングロボットは、ディープラーニング(深層学習)の技術を使ったAI(人工知能)によって制御されています。

「一般的なコンビニエンスストアは、ピッキング対象となる商品の種類、形状が多岐にわたり、『ストック キーピング ユニット(Stock Keeping Unit:SKU)』の数は3,000ユニットに上り、うち100から200ユニットが毎週変更されます。そのため、倉庫や工場でのピッキングを自動化するときのように、ピッキング対象の情報をロボットに事前登録することは実質的に不可能です。ロボットへの情報登録に多大な工数がかかり、店舗オペレーションの省力化、省人化を阻害するようなことになりかねません」(勝藤さん)
「そこで当社では、ディープラーニングの技術を使い、ロボットが自らの学習によって注文された商品を正しく認識し、ピックアップできるようにしました。ロボットが商品を識別するための眼の役割は、カメラと3Dセンサーが担っています」(勝藤さん)

また、ロボットによるピッキング作業を可能な限り効率化するために、売れ筋商品の傾向などから商品の搬送、並びを最適化するROMS社独自のアルゴリズムもシステムに組み込まれています。さらに、ロボットを含む自動化の設備が万が一ストップした場合に、システムが自己修復して自動復旧を行う仕組みも備えられています。
結果として、auミニッツストア 渋谷店は、(2022年10月時点で)1分間に3~4ピック、1時間にして180ピックの注文に対応した袋詰めを可能としています。また、向こう半年以内には1時間200~240ピックできるようになる予定だと勝藤さんは語り、こう続けます。
「auミニッツストア 渋谷店のプロジェクトはステークホルダーの数も、お客さまの数も相当数に上り、その分、当社が担うべき責任は重く、相当の緊張感をもってさまざまな試みに取り組んでいます。この機会は、当社にとって大きく成長できるチャンスととらえています。また、menu社のように多くの生活者を集客する力をもった会社と、KDDIのように社会インフラを提供する企業が協業して、小売業の変革に取り組むことで、店舗オペレーションのイノベーションが勢いよく進むと期待していますし、当社としても、その取り組みにこれからも貢献したいと願っています」(勝藤さん)
menuアプリと最先端技術の連携で生まれる、デリバリーの新しい形
KDDIでは、2021年6月にフードデリバリーを中心にした即配サービスで豊富な実績を持つmenu社への資本参加を行い、クイックコマース事業を本格展開する体制を整えました。
menu社の提供する「menuアプリ」は、スマートフォンを通じて商品デリバリーやテイクアウトを注文でき、飲食店を中心にした全国の多種多様なお店で利用することが可能です。

同社の強みについて、menu株式会社 取締役の清水 裕さんは以下のように説明します。
「menuの強みは、東京都内のデリバリーに力を注いできたことです。東京には有名な飲食店が密集しており、いち早くそのような店舗様へデリバリー商品の提供にご協力をいただけたことが大きかったと考えております。加えて、KDDIとの提携を通じてお客さま向けの特典のご提供をはじめとしたさまざまな事業支援をいただけていることが他社にはない当社の強みです」
同社は、auミニッツストアのプロジェクトに企画段階からかかわり、渋谷店でのシステム開発にもかかわりました。

「当社は在庫状況のリアルタイム把握に関するシステム連携開発を担当いたしました。今回はロボットによる自動化された店舗との連携という貴重な経験が積めたと考えています」と清水さんは語り、こう続けます。

「日本でも近年フードデリバリーサービスの利用が広まってきました。今後は飲食店のみならずクイックコマースと呼ばれる日用品等のさまざまな商品をお届けするデリバリーサービスが日本に根づいていくものと期待しています」

menu社では今後、KDDI、川崎重工業株式会社、株式会社ティアフォーなどと協業し、西新宿地域における「5G」を活用したロボットデリバリーサービス(配送ロボットによる自動配送サービス)の実証実験(*1)にも参加する計画です。
*1参考:5Gを活用し配送ロボットによる自動配送サービスを提供~「西新宿における5G等先端技術サービスの都市実装に向けたプロジェクト」に採択
https://news.kddi.com/kddi/corporate/topic/2022/09/13/6243.html