バルセロナで世界に示した、KDDIが描くLife Transformationとは

展示テーマは「Life Transformation ~Enhancing the power to connect~」

世界最大のモバイル関連展示会「MWC Barcelona 2024(以下、MWC 2024)」がスペイン・バルセロナで2024年2月26日から29日まで開催されました。KDDIはその舞台に初めて出展し、総勢約55名の社員がバルセロナに赴き、KDDIの技術を直に海外に発信しました。

KDDIは「KDDI VISION 2030」を掲げ、「『つなぐチカラ』を進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる。」ことを目指しており、MWC 2024では「Life Transformation ~Enhancing the power to connect~」をテーマに6つのゾーンで展示を実施。通信があらゆるものに溶け込み、生活や産業の基盤となる中、KDDIの強みである「通信を軸にした多様な事業アセット」、「コネクティッド」と「パートナー共創」を世界に伝えました。

5つのゾーンで展示を紹介。ゾーン6の登壇スペースでは、さまざまな講演を実施。

以下で、各ゾーンの展示内容や来場者の声を紹介していきます。

GLOBAL INFRASTRUCTURE & CONNECTIVITY―Starlink/TELEHOUSEによる「つなぐ」の基盤となる通信

ブランドカラーのKDDI ブルーに合わせ、青を基調としたKDDIブース。その中心に展示されている地球を模したオブジェクトでは、KDDIがグローバルで事業展開しており、今回の世界への挑戦の象徴になっています。

「Global Infrastructure & Connectivity」ゾーンでは、スペースX社とのコラボレーションによる衛星ブロードバンドサービス「Starlink」を展示。そして、ヨーロッパ、北米、アジア太平洋地域にて45以上のデータセンターを運営する「TELEHOUSE」を紹介しました。従来の通信エリアを超えるネットワークや、信頼性・安全性を兼ね備えた高い接続環境を整えています。

目を引く地球のオブジェクト

特に「Starlink」は、離島や山間部、災害時の活用を含む日本の事例を海外にも紹介することで、日本中につながらない場所をなくし、「誰もが思いを実現できる社会」の実現を目指していることを発信。また、南極昭和基地からは、日本への8K映像リアルタイム伝送実証実験を含むプレゼンテーションを実施。南極の観測隊員へ手を振り、リアルタイムで会話し、どこにいてもつながる世界の実現を海外でも体感いただきました。日本での活用事例に興味を持った来場者からは、災害時の「Starlink」の活用方法や、衛星とスマートフォンの直接通信サービスの仕組みについての質問が多く集まり、世界から注目いただける結果となりました。

「Starlink」を使った南極とのリアルタイム中継

FUTURE MOBILITY―車やドローン、さまざまなものがつながり新しい価値を生むモビリティ社会

自動車の運転席を模したコネクティッドカー・シアターを展示した「Future Mobility」ゾーンでは、KDDIが目指す、あらゆるモノを「つなぐ」ことで新たな価値を創造する挑戦を体現。

KDDIでは、2019年から日本の主要な自動車メーカー各社に対して、コネクティッドサービスのためのモバイル通信の基盤「グローバル通信プラットフォーム」を提供しています。この取り組みは自動車にとどまらず、ドローンやロボットなど多様なモビリティへと広がり、これらを統合する制御技術やプラットフォームの開発にも及んでいます。このゾーンでは、「つなぐチカラ」を進化させることで、未来はどんなモビリティ体験ができるのかお客さまに想像いただく場となりました。

エンジンボタンを押すと動画が始まり、未来の車に乗っているかのような疑似体験ができる

コネクティッドカー・シアターの展示では、KDDIグループがeSIMからネットワーク、グローバル通信プラットフォーム、モバイルアプリケーションまで総合的に提供し、モビリティ社会の実現をサポートするコネクティッドサービスのソリューションを紹介。また、未来のモビリティ社会の全体像を示したサイネージでは、安全・安心なモビリティ社会を目指したテクノロジー展示も行いました。スマートフォンのGPSを利用した自動車と自転車の接近通知や、道路上でのスムーズな運行のために自動運転車両も含む自動車同士が相互に意思疎通する技術などを自動車メーカーと共創する様子をタッチパネル式動画で表現。

移動手段である車が、自動運転と通信の力によって、安全・安心に移動しながら仕事やゲームができるようになるなど、新たな価値を創造します。来場者からは「通信事業者だからこそ、さまざまなものを統合したサービス提供ができるんだね」とKDDIならではの「つなぐ力」を実感いただけました。

このゾーンではKDDIグループが世界で初めて開発した水空合体ドローンも注目を集めました。これは、空を飛ぶドローンと水中を潜るドローンを合体させた機体で、橋の水中部分や船底などの点検を人に代わって行うものです。従来、水中での点検作業は、ダイバーが船で移動して、水中に潜って作業をしていましたが、安全面だけでなく、人手不足やコスト面が課題となっています。これらの課題を解決する水空合体ドローンに対して、来場者からも「Wonderful!」「水中・空中の2つのドローンを組み合わせるアイデアは思いつかなかった」といった驚嘆の声が上がっていました。

また、「KDDIはメーカーなの?」といった質問が寄せられることもありましたが、移動体験の未来を下支えしているのが通信である、という説明をすることで、「確かにそれは通信事業者だからこそできることだね」と、KDDIのつなぐチカラを基にした思いを理解していただけました。

来場者から好評を得ていた水空合体ドローン

DIGITAL TWIN with AI―AIで強化されるデジタルツインによるエンタメやコマースサービス

暮らしを楽しむためのテクノロジーやサービスを展示したのが「DIGITAL TWIN with AI」ゾーンです。ここでは、店舗のデジタルツインを生成して没入型コマース体験を提供できる「αU (アルファユー) place」、Web上でより魅力的な体験をスムーズに創出するWebメタバース、360度自由視点音楽ライブ「αU(アルファユー) live」、au Design projectが開発中の「生成AIマスコットUbicot」といった展示を行いました。いずれも、デジタルツインに関わる技術とAIの技術の融合により、新たなショッピング体験やライブ体験を通して生活をより豊かにするテクノロジーです。

「αU place」では、無印良品 銀座とコラボレーションした展示を行い、来場されたお客さまには再現した無印良品 銀座の店舗空間の回遊やAIを活用した接客、そしてバーチャル試着のデモンストレーションにより、未来が感じられるショッピング体験をしていただきました。これらの体験により、お客さま自身の思いを形にし、カスタマイズできる未来というLife Transformationを感じ取る場になりました。

新たなショッピング体験やライブ体験で、生活がより快適により楽しめるものへと変わる

Webメタバースでは、データをクラウド側で処理することで、読み込みやレンダリングにおいて負担をかけず、渋谷の高精細な3次元の街を快適に見て回れる技術のデモンストレーションで来場者を楽しませました。今まではアプリをダウンロードする手間やデータ更新が必要でしたが、メタバースをWebブラウザ上で展開できることによりユーザー体験が効率化され、さらなる需要を生み出すことが期待できます。

「αU live」では、従来からの自由視点に加えて、生成AIによってライブ会場の背景をリアルタイムに変化させるデモンストレーションを行いました。

ライブ会場は生成AI技術でかつてないほどの自由度が生まれる

また、漫画やアニメの主人公といつも一緒にいるパートナーのような知的で愛らしい存在を目指しau Design projectが開発中の「生成AIマスコットUbicot」を披露しました。Ubicotは今回、Google Geminiとの連携により英語/日本語で対話可能な仕様でMWC向けにアップデートを実施。無味乾燥なAIが日本の「かわいい」バリューを帯びたことで、「スマートフォンの次のデバイスになり得るね」という声や、会議に一緒に連れていく「相棒」的な存在として紹介されました。

愛らしい存在で来場者を和ませたUbicot

BORDERLESS GEN Z PLATFORM―Z世代を中心としたファンコミュニティと通信を掛け合わせたプラットフォーム

KDDIが提供するauのオンライン専用ブランド「povo2.0」。「BORDERLESS GEN Z PLATFORM」ゾーンでは、「povo2.0」における世界のZ世代(1990年代後期から2010年代初期に生まれた世代)をターゲットとしたビジネスモデルを発表しました。これはトッピングの仕組みをオープン化することで、通信が当たり前のインフラである社会において「通信とつながる」だけでなく「自分の好きなものに直接つながる世界」を実現できることを示しています。

ファンコミュニティと通信を掛け合わせたpovoをグローバルに展開

「povo2.0」は、月額基本料が0円で、お客さまのライフスタイルに合わせて自由に「トッピング」として購入する仕組みです。オープン化によって、KDDI以外の事業者が自社のアプリやサービスにその仕組みを組み込むことができます。例えば、映像配信サービスのアプリで、ドラマや映画を楽しみたいときに必要なデータ量をそのアプリ上で購入することが可能になります。

エンターテインメントやSNSなど、スマートフォンアプリに親しんだこの世代の生活をより便利に楽しくするための仕掛けです。来場者からは「コンセプトが新しい」「povoがサブブランドの枠を超えて、日本発でグローバルに展開するのは感慨深い」という意見や、「パートナーのプラットフォームをpovoサービスに組み込みたい」といった海外パートナーとの新たな共創の機会も生まれました。

API DRIVEN PARTNERSHIP―新たな価値を創出する世界共通API

KDDIは、あらゆるシーンで通信を溶け込ませ、多様なパートナーと共に新しい価値を創出することを目指しています。その実現に向けて、通信事業者が有する通信や決済などの機能を外部へ共有することができ、外部のアプリケーション開発者がその機能を自社のアプリケーションに簡単に組み込むことができる「API」に注目しています。そのためKDDIは、主にモバイル通信事業者で構成するGSMAが立ち上げた「GSMA Open Gateway」構想に賛同し、初期メンバーとして参画しています。
「GSMA Open Gateway」構想では、世界のモバイル通信事業者の相互連携を目指し、5Gをはじめとするさまざまな機能を提供する共通APIを定義しています。

多様なパートナーと連携し、新たな価値をお客さまへ提供

「API DRIVEN PARTNERSHIP」ゾーンでは、今回、スポーツ業界と放送業界をユースケースとして選定し、共通APIとKDDIが独自で提供(または検討)しているAPIを活用したパートナーとの将来への取り組みを展示しました。
スポーツ業界では、各サッカークラブのアプリにKDDIのARギフティング機能をAPI経由で組み込むことで、ファンがARを活用したスマホゲームを楽しみながらクラブにギフトを贈って応援することが出来るファンエンゲージメント向上の取り組みを紹介し、体験型展示を多くのお客さまに楽しんでいただきました。
また、放送業界では放送中継用の通信デバイスに5G SAネットワークの機能をAPI経由で組み込むことで、通信品質を一定に保ちながら無線で放送中継する取り組みを展示しました。放送業界の来場者から、「有線を敷設することができない場所でアプリなどから簡単に設定し、安定した放送中継が出来るのはありがたい」との現場の生の声も。

このようにAPIを介して、多様なパートナーの製品やサービスを高度化することで、新たな価値をお客さまに提供できると考えています。

サッカースタジアムの体験は人気を集めた

KDDIの存在とビジョンを世界に発信

今回の初出展を契機に、KDDIの存在感を世界に示しました。KDDIの技術やパートナーとの共創による海外向けサービスの推進は、当社だけではなく日本企業の海外進出を促し、日本全体を活性化させるものだと考えています。

KDDIは、通信が社会に溶け込んでいく現代において、世界中のパートナーと共に生活者視点での社会変革を実現し、誰もが思いを実現できる社会への貢献を目指して、世界中で事業の推進に取り組んでいきます。

「Life Transformation」を世界に発信―MWC 2024で「未来を担う世代」が感じた手応え

「MWC Barcelona 2024(以下、MWC 2024)」のKDDIブース出展の企画には、KDDIグループの多くの「未来を担う世代」が携わっています。KDDIブースのゾーン6『こんにちはスペース』で登壇した3名のキーパーソンに、自身の担当サービスとKDDI出展のメインテーマである生活体験の革新「Life Transformation(LX)」のつながりを、世界中からの反応や今後の抱負とともに聞きました。

Z世代に向けて、通信とコンテンツのあり方を変えていきたい

―KDDI Digital Life 菊池晴隆(povoワーキンググループ)

KDDI株式会社 パーソナル事業本部 パーソナル企画統括本部 KDDI Digital Life 菊池晴隆

私は「BORDERLESS GEN Z PLATFORM」ゾーンを担当し、3rd Partyアプリなどのコミュニティ上でギガを販売するといったZ世代*1と通信の新たな関わり方を紹介しました。通信データの販売をオープン化する「Community Enabled Connectivity(CEC)」を発表することで、povoで行った挑戦や培ったノウハウや仕組みはグローバル市場へ展開できることを発信できたと思います。
*1:Z世代...1990年代後期から2010年代初期に生まれた世代を指す

このコンセプトは多くの国の移動体通信事業者から共感を得ることができ、Z世代を取り込むための苦労や課題は他国でも同じなのだと実感しました。期間中で最も印象に残ったのは、VIPとしてブースに来場くださったNTTドコモの井伊社長がおっしゃっていた「新料金サービスの『ahamo』を立ち上げる時にZ世代の社員が会議室に乗り込んできて経営会議での決定を覆した」という話です。これを聞き、私たちも負けてはいられないと強く感じました。これからもより一層、熱量を持って取り組んでまいります。

MWC 2024での経験を生かして、CECを武器にグローバルな市場で通信とコンテンツのあり方を変えていき、日本にとどまらないLXの実現に挑戦していきます。

KDDIのエンターテインメント事業を発展させ、世界中にワクワクを届けたい

―KDDI LXサービス企画部 石田舞花(αU/デジタルツインワーキンググループ)

KDDI株式会社 事業創造本部 LXサービス企画部 石田舞花

私は「KDDIのWeb3への取り組み」というテーマで登壇し、Web3サービスプラットフォーム「αU(アルファユー)」で提供している5つのサービスを紹介しました。

MWCではエンターテインメントビジネスに焦点を当てた企業が少なかったため、αUの展示に対する海外からの興味は非常に高かったです。一般生活者に近いサービスだからこそ、LXがより伝わりやすかったです。そして、KDDIが通信事業だけでなく、新しいエンターテインメント領域にも積極的に取り組んでいることを強くアピールできたと感じています。

αUの展示テーマは「DIGITAL TWIN WITH AI」であり、さらにMWC 2024の6つのメインテーマの一つが「Humanising AI」だったことから、「通信会社とAIはどのように関連しているのか?」という質問をたくさん受けました。KDDIでは、AIをクラウドで処理する際に5Gなどの通信を使用することで、AIと通信事業は高い親和性を持つと考えています。この観点を強調し、アピールしました。

「Ubicot」という生成AIマスコットは、その可愛らしいフォルムがとても日本らしいと、海外の方から大きな興味を集めました。また、「バーチャル渋谷」の取り組みに対しては、日本だけでなく海外の都市にも拡大してほしいと要望をいただきました。これらの反応を通じて、日本らしさというアイデンティティを大切に事業展開することが、海外の方に興味を持ってもらう強力なきっかけになると感じました。

MWC全体で、エンターテインメント系の事業を展示している企業は多くはなかったからこそ、KDDIがその領域をリードしていく責任を感じました。
最先端のテクノロジーやトレンドを融合させることで、新しいエンターテインメント事業を展開し、お客さまの期待を超える感動とワクワクを届けていきたいです。
またMWCに参加したことで、世界の最新トレンドやテクノロジーをキャッチアップすることの重要性をひしひしと感じました。これからも新しいトレンドや技術にアンテナを張り続け、私自身も進化していきたいと思います。

「Starlink」活用のグローバルスタンダードのイニシアティブをKDDIが取っていきたい

―KDDI LX基盤推進部 西林武範(Starlinkワーキンググループ)

KDDI株式会社 事業創造本部 LX基盤推進部 西林武範

私は、Starlinkの企画を担当していました。ブースの出展に加えて、「SpaceX社・T-Mobile社との衛星とスマートフォンの直接通信に向けた3社登壇」「南極からの8K中継含むStarlink革新的ユースケース紹介の登壇」を企画し、Starlinkによって実現するLXをお届けしました。
SpaceX社・T-Mobile社との3社登壇のなかでは、T-Mobile社の Giard氏から「4Gが始まる前は、誰もアプリやUberのようなサービスを想像していなかった」とコメントがありました。こういった従来の想像を超える体験価値を提供できる可能性が、StarlinkやStarlink衛星とスマホの直接通信にはある、という大きな期待感を世界に示すことができたと自負しています。Starlinkチーム一丸となって「Enhancing the Power to Connect(つなぐチカラを進化させる)」を世界に訴えかける、素晴らしい機会になりました。

私の登壇後には、多くの方々がブースに立ち寄り、内容に対する好意的な言葉をかけていただきました。その中でも「能登半島地震復旧に向けたStarlink活用事例」への反響が大きかったことが特に印象的です。この事例は、被災地にいち早く安定した通信をお届けしたいという一心で、KDDI社員やパートナー、関係者の方々が一丸となって取り組んだものです。この事例が世界でも注目を集めることで、グローバル規模での災害支援の進化に一役買えることを願っています。
また、こういった災害時活用だけではなく「アフリカでStarlinkを提供できないか」といったワールドワイドでの期待も多くありました。MWC2024では他国のStarlinkリセラーの皆さまとつながることができたので、今回のような事例の共有含めたグローバルでの連携も強く図っていきたいです。

2024年2月の領海外でのStarlink利用許可に伴う海上DXの推進や、2024年春以降のauショップでのStarlink販売開始、さらには2024年内には衛星とスマートフォンの直接通信サービス商用化と、Starlinkにまつわるイベントはまだまだ目白押しです。特に衛星とスマートフォンの直接通信サービスについては、どのような規格で進めていくのかなど、全世界のパートナー間で足並みを揃えて対応を進めていく必要があります。今回のMWCの経験を存分に生かし、新たなグローバルスタンダードのイニシアティブをKDDIが取っていけるよう、また個人的にも世界にプレゼンスを発揮できるよう、よりいっそう精進しようと情熱をたぎらせています。

これからも挑戦し続ける

KDDIにとって、MWC Barcelona 2024への出展は新たなチャレンジでしたが、その準備に関わった若手社員一人ひとりにとっても、大きな挑戦でした。
これからもKDDI、そして社員一人ひとりが、さまざまなことに挑戦し続けることで、「誰もが思いを実現できる社会」の実現を目指していきます。

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