2023.08.10
北アルプスの山小屋へ、Starlinkで電波を届ける
条件は空が見えること。そして、電源が確保できること
以前から、山小屋を運営する方々の多くから「山小屋の通信環境を整えたい」という声がKDDIには届いていました。そうしたニーズに応えていきたいと思いながら、技術面での困難を感じる中、2022年12月にStarlinkをバックホール回線に利用するau基地局の運用がスタートしました。
Starlinkを活用すれば、au基地局を開設しにくい山間部にも電波を届けられるのではないか。白馬村とKDDIはタッグを組み、2023年春に「山小屋Wi-Fi」プロジェクトが動き出しました。
電源を確保できて上空視界がとれる場所であれば基本的には低軌道の通信衛星を介しての高速・低遅延なデータ通信を行えるのがStarlinkの特長です。
「通常のau基地局をつくる場合、光ファイバーの回線を引いて大規模な施設の設置が必要になりますが、山間部でそのような工事を行うことは現実的ではありません。そこで、Starlinkをバックホール回線に使い、施設ごとにWi-Fiをつなぐ方法であれば実現可能だと考えたのです。空と電気さえあれば、どこでも電波をつなぐことができるのがStarlinkの強みですから」(正木)
「山小屋Wi-Fi」プロジェクト第1弾の八方池山荘は、標高1850mと山小屋としては比較的アクセスしやすい場所にあり、電線が通っていたため電源の確保も可能でした。
八方池山荘のWi-Fi開設に立ち会った吉川さんは「アンテナの設置や、Wi-Fiルーターとのケーブル接続などに関して、KDDIグループのワイヤ・アンド・ワイヤレス(Wi2)の方に現地で研修を行っていただけたので、スムーズに導入することができました」と振り返ります。
日本から電波がつながらない場所をなくすために
多くの山小屋は夏の登山シーズン以外は無人となるため、常時設置ではなく、可動式のアンテナを選定しました。「屋根上に設置してしまうと外すのが難しくなるので、必要な時にベランダなどに設置して、悪天候時などには移動できるアンテナを選びました。山小屋のオフシーズンには格納しておき、また次のシーズンには簡単に設置できるようにしています」(正木)
2023年5月29日(月)に第1弾となる八方池山荘での「山小屋Wi-Fi」が稼働。山荘のスタッフや利用されるお客さまから好評であったため、白馬村が運営する他の山小屋にも設置することになりました。
「山小屋Wi-Fi」の設置が決まった場所の中には、八方池山荘よりさらに標高が高いところの山荘も含まれていました。電線が届いていない山小屋なので自家発電で対応する必要があり、また本格的な登山をしなければ辿り着けない場所です。「あらゆる条件が八方池山荘とは異なっていましたが、KDDIさんをはじめ多くの方々の協力もあり、無事実現することができました」と吉川さんは語ります。
衛星ブロードバンドStarlinkを活用しながら、今までは不可能と思われていた山間部や離島などに電波を届けていく、「日本から電波がつながらない場所をなくす」KDDIの挑戦は、これからも続いていきます。