2023.08.10
「山小屋Wi-Fi」で、山小屋のDXを進めていく
白馬村とKDDIが協力して、初のプロジェクトを推進
山間部や離島など通常の電波が入りにくい地域に向けて、Starlinkを活用した通信インフラの整備が検討される中、山小屋にWi-Fi環境を届けることを目的とした「山小屋Wi-Fi」プロジェクトが2023年春にスタートしました。
百名山をはじめ麗しい山々が連なる日本において、登山者をサポートするための山小屋は数多く建てられています。複数の候補の中から、同プロジェクト第1弾に選ばれたのが、KDDIと「地域活性化を目的とした連携に関する協定」を結ぶ長野県白馬村の山小屋、八方池山荘でした
白馬村は3000m級の山々が連なる北アルプス(飛騨山脈)の麓にあり、長野県南部に広がる中央アルプス(木曽山脈)や、長野、山梨、静岡の県境部に広がる南アルプス(赤石山脈)とともに、登山者からの人気が高いエリアであることも選出の理由です。
「山小屋Wi-Fi」プロジェクトのリーダーに抜擢されたのが、白馬とも縁があるKDDIの正木 拓。「小さい頃からスキーを続けていることもあり、白馬は好きなエリアです。今は息子も一緒にスキーをしていて、特に冬場は毎週のように来ています。スキー場でも電波はつながりにくいので、さらに標高の高い山小屋へ電波を届けるプロジェクトには社会的意義を感じました」
夏の登山シーズンである6月から10月までしか開かない山小屋も多く、雪が溶けて山に入れるようになる春から初夏の開業までに「山小屋Wi-Fi」プロジェクトを実現しなければならない、というスケジュール感が当初の課題でした。
「八方池山荘付近は中部山岳国立公園に含まれており、建造物や基地局を設置するためには関係省庁の許認可が必要です。限られたスケジュールの中で許認可を得ることが一番の壁でしたが、白馬村の皆さんのおかげで問題なく進めることができました」(正木)
そうして無事、2023年5月29日(月)に第1弾となる「山小屋Wi-Fi」がつながり、八方池山荘に訪れた多くのお客さまはauの電波を使えるようになりました。
今回の実績をベースに、日本中の山小屋へWi-Fi環境を届けていきたい
八方池山荘でWi-Fiが使えるようになったことで、登山やトレッキングを楽しむ観光客の皆さんの利便性が上がると同時に、山小屋を運営するスタッフの業務効率化にもつながりました。
1つ目の変化が、山小屋でインターネットを活用した予約管理やキャッシュレス決済を行えるようになったことです。以前は電話で行っていた予約対応をデジタル化することで、他の業務に使える時間が増えました。また、キャッシュレス決済で宿泊代や飲食代を支払えるようになったことは、利用するお客さまにとっても、山小屋側にとっても、大きなメリットです。
2つ目の変化が、高速・低遅延の通信でリアルタイムの情報発信をしやすくなったことです。天候や防災情報など登山に必要不可欠な情報はもちろんのこと、白馬観光を検討している皆さんに向けて、北アルプスの絶景や白馬ならではの高山植物の映像などを届けられるようになりました。
3つ目の変化が、動画をはじめとした大容量コンテンツを山小屋で見られるようなったことです。例えばクローラー(山小屋まで荷物を運ぶための車)の調子が悪くなった場合でも、動画を確認しながら修理できます。
働けるスタッフ数が限られる山小屋では、少人数で効率よく仕事を進めていく必要があります。電波を届けて山の安全を確保するという目標とともに、デジタル活用による山小屋のDX化を推進できたことも「山小屋Wi-Fi」プロジェクトの成果です。
「八方池山荘で働く皆さんと打ち合わせを重ねながら、プロジェクトを進めていきました。『電波がないところに電波を届ける』という通信業者の使命を果たせたことは大きな達成感につながっています。今回の経験を活かしながら、日本中の山小屋にWi-Fi環境を届けていきたいです」(正木)
もちろんWi-Fiが使えるために、せっかく山を登ってきても山小屋内で動画を見てしまうというデメリットは考えられます。また、多くの方が一度に電波を使って回線がパンクし、有事の際にWi-Fiが使用できなくなる恐れもあります。KDDIではポスターでの啓蒙活動をはじめ、通信のルールやマナーを広めていく予定です。