2023.08.10

通信が不安定な山小屋に、安定した通信環境を

  • 宇宙
  • Starlink
  • サービスエリア拡大・品質向上

山の安全を確保する上で通信面が課題に

標高3000m級の山々が連なる、北アルプスの麓、長野県白馬村。1998年には長野冬季オリンピックの会場としても利用されました。日本屈指のスノーリゾートとして知られる一方、夏シーズンは登山やトレッキング目的の観光客が訪れる、一年を通して人気の観光地です。

白馬村の観光・登山をサポートする一般財団法人 白馬村振興公社 事務局長の吉川健一郎さんは「白馬村は主に観光が基幹産業です。近年は海外からも注目されており、国際リゾートとしてのブランド構築をしている段階です。白馬三山(白馬岳、杓子岳、白馬鑓ヶ岳)をはじめ、山の恩恵を受けて生活している村ですので、環境面や安全面には特に力を入れていています」と話します。

一般財団法人白馬村振興公社 事務局長 吉川健一郎さん一般財団法人白馬村振興公社 事務局長 吉川健一郎さん

登山などのアウトドアスポーツで人気を集める白馬エリアにおいて、宿泊・休憩・避難を目的として登山道に設置されている山小屋は、安全な登山・トレッキングのためには欠かせない施設です。その一方で、市街地から離れた場所にある山小屋まで光ファイバーのケーブルをつなぐことは容易ではなく、山の安全を確保する上で通信面が課題となっていました。

「私が入社した1990年代は、無線と手紙での交信が主な手段で、朝・夕の無線交信が日常業務でした。その後、携帯電話が随時導入されましたが、現在も最終手段として無線機で対応できるよう準備しています。悪天候時などには、電波が不安定でつながらないリスクがあるためです」(吉川さん)

大自然がフィールドとなる登山・トレッキングは、都市では味わえない体験ができる一方、危険を伴うこともあるため、安全確保が最大のテーマとなっていました。そうした意味でも、山小屋に安定した通信環境を整備することを長年待ち望んでいました、と吉川さんは語ります。

KDDIとともにStarlinkを活用した「山小屋Wi-Fi」を実現

2018年から「地域活性化を目的とした連携に関する協定」を結ぶ白馬村とKDDI。山小屋が抱える通信面の課題に対して、2022年に提供を開始したスペースX社の衛星ブロードバンドStarlinkを活用できるのではないかと、議論が進められていきました。

そうして2023年春、KDDIと白馬村が協力し、標高1850mに位置する村営の八方池山荘で試験的な運用をスタートすることになったのです。関係省庁の許認可獲得やアンテナ・Wi-Fiルーターなどの設置を経て、Starlinkを活用した「山小屋Wi-Fi」の第1弾が同年5月29日(月)に実現されました。
「専用機器などの通信インフラ面はKDDIさんに準備していただく中で、白馬村側は関係省庁の許認可獲得など行政上で必要な手続きを進めていきました。数カ月の短い準備期間の中でスムーズにプロジェクトを進められたのは、KDDIさんの全面的な協力があったからです」(吉川さん)

今までインターネットがつながらなかった山小屋、そこでWi-Fiが使えるようになり一番大きく変わったのは、情報収集がしやすくなった点だと吉川さんは続けます。「天気が変わりやすい山において、天気や登山路の状況をはじめ、タイムリーな情報を得られるようになったのは非常に大きなことです。山岳ガイドさんや利用者の皆さんからも喜びの声をいただいています」