2023.5.30

スリリングなV字峡谷の旅を「スマホがつながる安心感」とともに楽しんでほしい——黒部峡谷鉄道

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多くの鉄橋やトンネルを走り、美しい木々や川に癒され、急峻な峡谷に息を呑む——。始発駅の宇奈月(うなづき)から終点の欅平(けやきだいら)にいたる1時間20分の間、爽やかな風を受けながら存分に大自然を楽しめるのが黒部峡谷鉄道です。

黒部峡谷トロッコ電車のオープン型車両黒部峡谷トロッコ電車のオープン型車両

黒部峡谷トロッコ電車という愛称で親しまれるこの電車は、一般的な車両よりかなり小さく、ゆったりと景色を楽しめる窓のないオープン型。大自然を身近に感じることができ、観光客から人気を博しています。

春の新緑や残雪、梅雨時の霧に煙る幻想的な景色、爽快な風を感じる夏の深緑、秋の紅葉と、営業期間中見どころに事欠かないこの地では、鉄道沿線の通信エリア化が長年、待ち望まれてきました。

黒部峡谷鉄道で広報を担当する谷本 悟さんは、当時をこう振り返ります。

黒部峡谷鉄道株式会社 営業部 営業企画・広報グループ チーフマネージャー 谷本 悟さん黒部峡谷鉄道株式会社 営業部 営業企画・広報グループ チーフマネージャー 谷本 悟さん

「観光に来たお客さまが乗り降りする、 4つの停車駅周辺ではスマートフォンを使えるのですが、それ以外の鉄道沿線ではリアルタイムの通信ができない状況でした。沿線の全ての区間でスマートフォンが使えるようになれば、お客さまの利便性が向上し、安心してより楽しい時間を過ごしていただけると思っていました」(谷本さん)

この鉄道はさらに、付近の電力施設に人や資材を運ぶ役割も担っており、工事関係者の足として欠かせない存在になっています。黒部峡谷鉄道で電気設備の保守管理を担当している米原俊哉さんも、エリア化を心待ちにしていた一人です。

黒部峡谷鉄道株式会社 設備管理部 設備管理統括グループ サブマネージャー 米原俊哉さん黒部峡谷鉄道株式会社 設備管理部 設備管理統括グループ サブマネージャー 米原俊哉さん

「トロッコ電車は観光のお客さまや電力施設で働く方々、そして私たちのような鉄道の保守管理を担うスタッフを運ぶという役割があります。鉄道の安心、安全な運行のためにも、全ての沿線のエリア化を待ち望んでいました」(米原さん)

しかし、長年、エリア化が進まなかった地域だけあって、沿線の工事は困難を極め、沿線の地理地形に詳しい黒部峡谷鉄道の協力が欠かせませんでした。

1つはトンネル内のバズーカアンテナ設置の支援です。長く曲がりくねったトンネル内に電波を飛ばす「バズーカアンテナ」は直径20cm、長さ1メートルと大きく、うまく設置しないとトロッコ列車と接触してしまいます。設置する余裕があって電波が届くところを探すのには、黒部峡谷鉄道の知見と支援が不可欠でした。

2つ目は冬期間の対策です。冬に大雪が降るこの沿線では、雪崩が起こらない場所に基地局やアンテナを設置することが重要で、黒部峡谷鉄道が設置場所の選定に協力しています。

3つ目は電源の確保です。街中のようにどこにでも電源があるわけではない山奥では、基地局とアンテナに電気を供給するために長いところは2km先から電源ケーブルを引かなければならないケースもありました。この時にも、黒部峡谷鉄道のノウハウが役に立ったのです。

2022年の夏、ついに沿線全てのエリアでauの通信回線が使えるようになりました。

「保線工事や電気工事の際、どこからでも連絡ができるようになったのはとても便利。困難だった場所でのエリア化をどんどん進めてほしいですね」(米原さん)

「鉄道沿線全てでauが使えるようになったことを観光客の方々にお伝えしていきたい。思い立ったらすぐ、沿線のどこからでもトロッコ列車の思い出を共有できるようになりました。ぜひ、この機会に黒部峡谷の大自然を体験しにきてほしいですね」(谷本さん)

現地の方々と手を取り合って進める、KDDIのエリア化への挑戦は「つながらない場所」がある限り続きます。