2023.4.28
被災者に寄り添うための協力体制を―横浜市消防局の思い
約370万人の人口を抱える日本最大の政令指定都市、横浜。開港の地として知られるこの街は、当時の面影を残す歴史的建造物も多く、観光都市としても人気を博しています。そんな横浜市の安全を守っているのが横浜市消防局です。
「横浜市は住む人も訪れる人も多く、災害対策については多様なニーズがある場所です。さらに昨今では、都市構造の高度化、深層化が進んでおり、これまでにはなかった未知の危険要因が出てくることも予想されます。こうした災害の多様化、複雑化に対して迅速に対応していくことが求められています」
横浜市の災害対策についてこう話すのは、横浜市消防局 警防部 警防課 訓練救助係長を務める長﨑俊介さん。横浜の防災対策の移り変わりを30年に渡って見守ってきました。
この30年の大きな変化は、携帯電話・スマートフォンの普及だと長﨑さんは話します。家族に一台だった電話が、一人一台になったことから、119番通報にも大きな変化がありました。
「これだけが原因とは言い切れないのですが、救急要請は年々、増え続けています。コロナ禍の時には、1日の通報が1000件を超えるなど、今やスマートフォンがまさにライフラインになっていると考えます」
こうした背景から、通信キャリアに対する横浜市消防局の期待は高くなっています。
「大規模災害が発生した時には、被災した方々が発信する119番通報が救助活動のための重要な情報源の一つとなります。携帯電話網の復旧は、まさに災害救助の命綱。常に通信キャリアの方々とは災害対策の情報を共有しながら、一刻も早い人命救助に向けた協力体制を築いていきたいと思っています」
通信を使った人命救助に期待
横浜市消防局は、KDDIが3月に実施した災害対策訓練において、航空機型基地局のノウハウを使った人命救助の訓練に参加。KDDIがドローンを使った捜索で発見した倒壊家屋内の要救助者を、横浜市消防局が救助するという訓練を行いました。
この技術には横浜市消防局としても期待しているといいます。
「被災地で倒壊した建物一軒一軒を回って、助けが必要な人がいるかどうかを確認するというやり方には限界があります。今回の訓練のような形で、要救助者の情報をKDDIから提供していただき、それをもとに私たち消防局が救助に向かう、という連携ができるのは、とても有効な手段の一つと考えています。他の通信事業者様も含めてとはなりますが、より広範囲で詳細な情報が取れるような技術の発展に期待しています」
被災した方々の気持ちに寄り添った活動を
東日本大震災が起こった時、航空隊員として被災地での活動に従事した長﨑さんには、忘れられない思い出があるといいます。
これまでに経験したことのない、どこから手をつけたらいいのかわからないくらい壊滅的な被害を受けた災害現場を前に途方に暮れ、全力で活動にあたりながらも「もっと何かできることはなかっただろうか」と自問自答する日々だったとのこと。
そんなある日、長﨑さんが目にしたのは、車のワイパーに挟まれた「ありがとう」という被災地の方からのメッセージでした。
「被災地で不安な思いをしている方々に寄り添い、一日も早く被害に遭われた皆さまが元の暮らしに戻れるようにするためには、自治体と通信キャリアとの協力が欠かせません。お互いの強みを生かしながら災害対応、復旧作業を進めていくためにも、今回のような訓練はとても大切だと思っています」